触角過敏性

 触れているときは愛していたのに、離れた瞬間から、今日もあなたを大嫌いになる。残った感触も体温も皮脂のにおいも、私に向けられたものじゃなかったんだって悲しくなる。あなたに触れられてキラキラとした腕とか、鼻とか、体のすべてが、もう大嫌いと泣きながら叫ぶ。例え抵抗しようとしたって全身が嫌いを叫ぶの。

 私を愛さないあなたに価値なんてないのだから。だから仕事をしているあなたにも、誰かと食事をしているあなたにも、大好きな本を読んでいるあなたにも、私にとっては価値なんてない。そんな瞬間でもずっと私を愛し続けてくれたならば、あなたの人生には永遠に価値があるから安心して。

 ねぇ、眠れない夜には、あなたの声を思い出してもいい?私が何もあげられなかった、あなたにもらった言葉たちを。まだ愛おしく思っていていい?

 今でもずっとあなたのことが、心の底から大嫌い。この体中この際一生、あなたの体温が癒えてくれない。

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