ダメでもスキ14~嘘をつく男、その後

世の中にはどうしようもなく嘘を吐いてしまう、という人間が存在する。後先を考えず、損得すら考えず、とにかくその場で自分が気持ちよくなることを口に出してしまうのだ。

私が以前交際していた男性もそうだった。

彼の言葉にはとにかく全てに嘘と虚栄が混じっている。俺はあの店の店長だったんだ、昔はハスラーだったんだ、パチンコの旅打ちをしてたんだ、今度自分の店を出すんだ。などなど、偽の経歴を数え上げたらキリがない。

交際してしばらく経ち、この人の言うことって、なんかおかしいのでは……?とうっすら気付き始めていたある日、私の誕生日がやってきた。

迎えに来た彼の車に乗り込んだ私に、彼は突然「あっ、しまった、もう終わっちゃったかもしれない!」と叫び、ラジオを着けた。

「俺、君の誕生日を祝うメッセージをラジオに送ったんだけど、もう放送終わっちゃったみたいだ!あー、残念だなあ!」
「そ、そうなんだ……残念だね……」

なぜそんなしょうもない嘘を吐くのだ、お前は。

別れたのち、私が作家デビューしたのを知った彼は電話をくれた。

「俺、出版社に君へのファンレターを送ったよ!」

もちろん、その手紙が私に届くことはついぞなかった。


続く

※こちらはスポーツニッポンアダルト面にて水曜日に連載中の拙コラム「ダメでもスキ♡」の再録です。

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