ダメでもスキ2

さて気安く私に向かって「帰るなよ」などと言った現夫であったが、今思うとそれが本気であったかどうかは疑わしい。


しかし交際二週間目、盛り上がりに盛り上がった恋する乙女(2x歳人妻)であった私はその一言を真に受けて、本当にその日から家に帰るのを辞めた。
当時、私は観光地の駅前にビルや駐車場を持つそこそこ裕福な家に嫁いでいた。不労所得者である夫は心の優しい男性で、結婚四年目、まあまあ仲良くやっていたとは思う。


しかし独身時代に少女小説で作家デビューした私は、金持ちと結婚した途端に全ての創作意欲を失っていた。いや、気持だけは焦っていたのだが、何を書いたらいいのか解らなくなった。書けどもボツになる原稿に嫌気が差し、私は手慰みに匿名で無料官能小説サイトを開設した。「男子トイレのエッチな落書き」を目標にした、グチャグチャでドロドロの痴漢や強姦輪姦、犯罪スレスレアウトの作品を書き殴っては増える閲覧者数を見て悦に入っていた。


ストレスが溜まっていたのである。
そう、私は昔からダメ男が好きだった。誰もが羨む夫なんて、望んでいなかったのだ。

続く

※こちらは毎週水曜日スポーツニッポンアダルト面にて連載中のコラム「ダメでもスキ♡」の再録です。

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