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緊急事態に思うこと。ちょっと真面目に。

2020.5.24. MASATO / UCHUSENTAI:NOIZ

ライヴができない期間が続いて、自分をアーティストたらしめる要素は、ライヴとファンの人だけだったと気づきましたよね。MASATOさんって呼ばれてないと、MASATOさんじゃないことに、ちょっと驚いたというか。20年ずっと死ぬほどライヴをしてきたし、一時期は三日に一回とかやってたから。

それに、これまではいわゆる普通の人間として、ウツミ君として生きてなかったなとも思いましたね。今は、朝起きるんですけど、そのことがもう珍しいんですよ。これまでは好きな時間に寝ればいいと思ってたから。ちゃんと朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、お布団を片付けて、部屋の掃除から入るみたいな。そういう朝のルーチンワークというものがなかったんです。今はカーテンを空けて、朝ってこんなに気持ちいいんだと思ったりしてます。

これまでは、快適な生活を送ろうとか考えたことはなくて。腹が減ったから飯を食う、太ったからダイエットする、みたいな生活をしてたんですね。でも今は、意図的に規則正しい生活をしてるんです。

実は引っ越しもしたんですよ。STAY HOMEだから家ごと移動しようと思って。それで、だいぶ居心地がよくなりました。今までは防音第一で、それだけを考えた部屋に住んでたんです。500キロぐらいあった服を捨てて、本も全部捨てて。今は一軒家に住んでます。一階はリビングで、作業部屋が二階で。ちょっと信じられないほどの音量を出しても誰にも怒られないです。日当たりもいいし、人間らしい生活をしてます。

良質なものに囲まれる生活は、単純に人を豊かにするんだなと思ったので、それは収穫ですね。別にそういうことを求めてたわけじゃなくて、退屈な日々をどうにかしたくて引っ越ししたんですけど。そうじゃないかな。結果的に変わりたかったんかな、知らんけど。何があったのかと聞かれたら、説明できないですね。ライヴをやるのが日常じゃなくなったことが、自分の思考に徐々に変化をもたらしたんでしょうね。

ライヴもできない状況が続いていて、バンドとファンって、急に遠距離恋愛になっちゃったようなもんですよね。それをつなぎとめるものは、電話だったり、LINEだったりするんですけど、僕たちは結局恋人同士のようで実はそうじゃないんですよね。それがバレちゃったんじゃないかなと思ってます。残念だけど、僕たちは片側交互通行なので、双方向に寂しいからといっていつでも連絡がとれるわけじゃないから。僕らはライヴが多かったから、会える場所をできるだけたくさん増やしてはきたんですけどね。

きっとファンの子たちは大変だろうなって思います。あんなに好きだったのに、もうあんまりドキドキしないかもって思ってたりするのかな。ドキドキさせてあげられなかったり、そういう場を作ってあげられないのがもどかしいですよね。

今は、インスタでギターを弾いてアップしたりしてるんですね。TwitterよりInstagramが好きで、特にストーリーがいいですよね、24時間で消える儚さが。毎日そういうことをやったりしてるのは、ライヴができなくてやきもきしてるところを見せるんじゃなくて、毎日楽しそうにしてるところを見せるのが、ファンへの発信の仕方としては、僕はベストじゃないかと思ってるからなんですよね。

まだいつになったらライヴができるかはわからないですけど、久しぶりにライヴをやったら、うわ~気持ちいいって思うと思いますよ。その瞬間はすごく楽しい、気持ちいいと思うんですけど、僕の性格からはそれはあんまり許されることではなくて。特別な状況が終わって、久しぶりのライヴとなったら、今までのライヴのクオリティに対して減点制にするか加点制にするかで全然評価は変わっちゃうんですよね。減点制にするとめちゃくちゃ低評価になると思うけど、加点制にすると100点なんてゆうに超えると思う。人間がやってる行いだから、そうなりますよね。でも、僕は全部を許容しないほうがいいと思ってます。絶対楽しんじゃう自分もいますけど。

NOIZは、いい意味でバカなところがあるメンバーが集まってるし、部活みたいな感じなんです。目標に向かって高め合っていきたいけど、部活のメンバーと飯を食っても楽しいみたいな。それはウツミ君としては、美しい日々のひとつでしかないですよね。20年間、“MASATO”として生きて来たけど、もしかしたらそういうことに今気づき始めたのかもしれない。

俺、ついに40歳になったんですよ。バンドの寿命を普通に考えたら、これからやれてあと20年、30年ぐらいかなと思うんです。今、こうやっていただけている幸せなものは大事にしないといけないなっていう感じかな。それが自分の思う、美しい生活かなと思います。このライヴのできない期間があって、NOIZに対してちょっと距離が置けたからこそ、こういう風に思えるのかもしれないですね。

編集長の日記
すっかり緊急事態宣言が解除になったような浮かれ具合のようです。お店も次々と営業をはじめ、たくさんの人がお買い物を楽しんでいました。
緊急事態宣言の間、しみじみ難しいと思ったのは、恐がることと恐がりすぎないことのバランスでした。恐い恐いとヒステリックになるのも違うし、大丈夫とすべき対策を無視するのも違います。そして行動以上に難しいのが、心の持ちようでした。
新型コロナウイルスは終息していないので、また緊急事態宣言が出るような事態も考えられます。この感染症に対して、どのように向き合うか、大きな宿題を与えられた気分です。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。