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鏡の池

鏡の池      

水に映る空も
真実の空で
覗き込むと
足を掬われそうになる
山の入り口にある
鏡のような池は
輪郭のない絵のように
朦朧としていた
きっと居場所がないのだ
コウホネの黒い根が
水中の脈のように
光を呼吸するさなか
一粒の黄色い花が
ためらうように
ひっそりと咲いた

人肌のような風が
ぬるい感触をもって
耳の側で膨らんだ
昨日の夢の中身を
不意に見透かされた気になる
目を反らすと
泥の淵に足もとを取られた
輪郭が崩れていく
姿を見失って
このまま
先へ行くことはできない


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