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メールの温度

メールの温度

春の日にふと隙ができると
午後には雲が流れて
空が鏡のようになる
  
コンピューターで会話をして
足が冷たいから
指先は熱くして
微熱のような毎日を
無意味に
おそらく
目的も憶えず
強迫観念に駆られて…
何?
ふっかけてきたのは君だと
メールが言うから
おぼろ月を送り返してやった
     
曖昧な言葉なんていらない
(そして今夜は新月)
    
空が鏡のように
私をすべて裏

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カワイイヒト

この夜空の何倍も
星が瞬く
そんな場所で会いたい

言葉の端に
はにかみをはさんで
夜空の匂いと一緒に
封じ込めたい
「カワイイヒト」と書き記した
想い出の小箱に

あなたの背中は
誰かの背中に似ていて
思い出す頃にはきっと
カワイイヒトでなくなってしまうのだろうから
あまり考えないでおこう

ひとつの星座が
あなたの言葉を届けてくれる
それだけを頼りに
さあ今夜も
夜空を散歩しよう

後ろ姿のオ

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ラヴェル クープランの墓

時が止まったよう
一つ一つのものが
とても意味のあるものに見えた
空気の動きまでもが
見えるような気がした
深い水の中にいるみたい
濁りのない透明な…

ずっとずっと向こうの方に光が見える
それはたぶん私の未来
一つ一つ
一音一音
確かに進み
それは透き通っていた

(18歳 秋)

夜想曲

空に星がまたたき始め
僕は
いつものように夜想曲を弾き始める

今夜も君は
僕を探してさまよい歩く
今夜も君は
僕をたよって戸をたたく
人が怖いと
戸をたたく

僕は黙って戸を開けて
もう一度
夜想曲を弾き始める
僕は君に何も問わない
君は泣きながら瞳を閉じた

今日はとにかく眠りなさい
人が怖いのは
君の心が疲れているから
この曲は
君のために作った曲
きっと君の心を癒してあげるから

空の色が

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月にすい込まれそうだった
素直になれる
明るい月の下で
音楽が聞こえる
それはきっと
とても懐かしい
とても優しい音楽
月にすい込まれたかった

(16歳)