ミロのヴィーナス、サモトラケのニケ、ラオコーンの共通点とは?
「ミロのヴィーナス」「サモトラケのニケ」「ラオコーン」これら3つの彫刻には共通点がある。
『ヘレニズム時代の代表的ギリシア彫刻』であることだ。
それぞれの彫刻のモデルは誰なのか?また、ヘレニズム時代とはどんな時代だったのか?ゆるっとお付き合いください。
ミロのヴィーナス
ミロのヴィーナスは、古代ギリシアで制作され、1820年にミロス島で発見された。
「ミロ」とは制作者の名前ではなく発見された島の名前である。
螺旋状にしなった体の曲線美、衣服が滑り落ちている表現、発見されていない両腕の不可解なミステリアスさが人々惹きつけている。
ミロのヴィーナスのモデルは、ギリシア神話の女神アフロディーテ。
アフロディーテは愛と美と性を司り、また戦の女神ともされる。
絵画でアフロディーテが描かれる際には、聖獣のイルカや、聖鳥の白鳥、鳩、雀、燕。聖樹の薔薇、芥子、花梨、銀梅花。真珠、帆立貝、林檎が象徴として一緒に描かれ、また、牡山羊や鵞鳥に乗った姿で描かれることも多い。
アフロディーテを描いた有名な絵画には、サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』などがある。
サモトラケのニケ
サモトラケのニケは、翼のはえた勝利を告げるギリシャ神話の女神ニケが、空から船のへさきへと降り立った様子を表現した彫像。
映画「タイタニック(1997年)」で、ヒロインが船の甲板先端で両手を広げたポーズは、このニケを真似ていると言われている。
ミロのヴィーナスと同様、ギリシャのサモトラキ島で発見されたことからサモトラケのニケと呼ばれた。
https://goo.gl/maps/zh9npHx5c7rPfc5N9
今にも動き出しそうな動的な姿態と、身にまとった薄いドレスの巧みなひだの表現はギリシャ彫刻の傑作と言われる。
ラオコーン
大蛇に巻かれたインパクトある情景のラオコーン像。
ラオコーンとはギリシャ神話に出てくる人物である。
ギリシャとトロイアによる戦争(トロイア戦争)の際、ギリシャが残していった巨大な木馬(トロイの木馬)を、敵の罠だと見破り槍を突き刺したところ、ギリシャ軍につく女神アテナの怒りを買い、二人の息子と共に巨大な海蛇に襲われ、絞め殺されてしまったのでした。
ラオコーン像の悲劇性や筋肉美は、後にイタリア・ルネサンス期の彫刻家ミケランジェロへ影響を及ぼしたと言われる。
ヘレニズム時代とはどんな時代だったのか?
ではこれらの彫刻が生まれた「ヘレニズム時代」とはどんな時代だったのか?
ヘレニズム時代とは、アレクサンドロス大王の東方遠征の活躍で、ギリシア文化と東方文化(オリエント)が融合し新しい文化が生まれた時代である。
この時代に作られた芸術作品は、厳格な比例や調和、理想美を追求していたクラシック期とは異なり、より写実的で肉体的、人間美や精神性を持った表現が特徴だ。
この潮流は、後のルネサンス美術に大きな影響を与えることとなる。
簡単な時代の流れを年表にしてみた。
コントラポストとは…体重を片足にかけることで、体全体でS字を描く動的な人体表現。
まとめ
これら3つの彫刻の共通点を以下にまとめよう。
・ギリシャ文化と東方文化が融合したヘレニズム時代に作られた。
・写実的で肉体的、人間美や精神性を持った表現が特徴。
・ルネサンス美術に大きな影響を与えた。
特徴に注目するだけで、いつの時代に作られた彫刻かを推測できるので、これから彫刻を見るのが面白くなりそうだ。
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