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con man~束の間の休息~

シナリオ


人 物

不死原蒼〜ふじわらそう〜(28)詐欺師
姫翠麗央〜ひすいれお〜(26)不死原の相棒
血矢夜光〜ちややこう〜(29)情報屋


○不死原の自宅・事務所スペース(夜)

不死原蒼(28)と血矢夜光(29)がローテーブルを挟み、向かいあってソファに座っている。

不死原はふんぞりがえる様に深く腰掛け、足を組んでいる。

テーブルの上には100万円の束が5つ無造作に投げ出されている。

血矢、やや不満げに、      

血矢「もう少し、引っ張れたんじゃないですか」

不死原「欲かいてんじゃねーよ。こんなちょろい山で。あんた、昔はインテリヤクザって言われてたんだろ」

血矢「蒼さんは見かけによらず慎重過ぎるんですよ。俺ならあと500は引っ張りますね。それ以上は足がつく」

不死原「慎重過ぎるくらいが丁度いいんだよ」

血矢、100万円の束を1つクラッチバッグにしまいながら立ち上がる。

血矢「次の準備が整ったらまた連絡します。1ヶ月くらいみといてください」

不死原「飯、食ってくだろ。食うんならあんたの分も用意させるけど」

血矢「いいんですか。いただいていきます」

不死原「なーにがいいんですかだ。最初からそのつもりだろ」

血矢「だって、麗央君の料理美味しいじゃないですか」

不死原、乱暴にドアを開けると階下に向かって大声で叫ぶ。

不死原「おい麗央、血矢ちゃんの分も飯」

姫翠の声「はーい。分かってまーす」

○カフェ・入口付近

姫翠麗央(26)と不死原が長蛇の列に並んでいる。

不死原「なぁ。これ、いつまで待てばいいんだ。他の店じゃダメなのか。ほら、あそことかすぐ入れんだろ」

不死原、向かいのカフェを指差す。

姫翠「ダーメ。僕はここのパンケーキが食べたいの。仕事片付いたら好きなとこ連れてってやるって言ったの蒼ちゃんでしょ」

不死原「ま、今回はお前も頑張ってくれたしな。しゃーないか」

突如、頭上からバキっと大きな音。

その場にいる人々が、何事かと一斉に頭上をみあげる。

ゴウゴウと唸る強風でカフェの看板が外れかけ、落下しそうになっている。

不死原「来い!」

不死原、姫翠の手を取り走る。

その場にいた人々も蜘蛛の子を散らすように逃げまどう。

キャーと大きな悲鳴。

小さな子供の上に看板が落ちてくる。

とっさに駆け出し、子供を抱きかかえた不死原、看板を見上げる。

○総合病院・病室

ベッドで眠っている不死原が眩しそうに目を開ける。

ベッド脇に立っている血矢が、

血矢「(震えるような声で)蒼さん」

不死原、ぼうっとしている。

不死原「麗央、麗央は?」

血矢「呼んできます。今、先生と話してるんで」

不死原「ここ、どこ?」

不死原、不安げに室内を見回す。

血矢「蒼さん、大丈夫ですか。怪我して救急車で運ばれたの覚えてます? 悪党のくせして、子供助けて、こんな……」

血矢、薄っすらと涙ぐんでいる。

不死原「救急車……ここ、病院?」

血矢「蒼さん、一週間も眠ってたんですよ。麗央君、心配しちゃって大変だったんだから。とにかく、麗央君と先生呼んで来できます」

不死原、きょとんとした顔で血矢を見上げる。

不死原「おじさん、誰?」

血矢、きょとんとした顔で不死原を見つめ返す。

○不死原の自宅居住スペース・リビング

不死原、そわそわと落ちつかない様子でダイニングテーブルに座っている。

向かいに座る血矢に、

不死原「ねぇー。ほんとにここ俺ん家?」

血矢「何か思い出しませんか?」

カレーライスとサラダが載せられたトレイを持って、姫翠がキッチンからリビングに入ってくる。

姫翠「血矢さん、まだ、そっとしといたげてください。今日、退院したばっかりなんだから。無理に思いださせなくても、そのうちに思い出していくって先生も言ってたし」

姫翠、カレー皿をテーブルに置く。

不死原「やった! 俺、カレー大好きなんだ」

姫翠「知ってるー」

姫翠、不死原に優しく微笑みかける。

不死原「ありがと。麗央」

   ✖️✖️✖️

テーブルを囲み食事をする3人、姫翠は不死原の隣に座っている。

テーブルの上には缶ビールが3缶。

不死原の皿の横に置かれたビールだけプルトップが開けられていない。

血矢「蒼さん飲まないんですか?」

血矢、プルトップを開け、不死原にビールを差し出す。

不死原「飲むわけないじゃん。おじさん何いってんの?」

姫翠、ぷっと吹き出す。

姫翠「そっか、蒼ちゃんまだ小学生だもんね。ビールなんて飲まないよね。それにしたっておじさんって」

姫翠、笑いが止まらずお腹を抱える。  

血矢、ムスッとした表情。

血矢「笑い事じゃないよ。なんで麗央君は麗央で、俺だけおじさんなの?20年分の記憶が消えてるってことは、蒼さんの中じゃ麗央君だって小学生のはずでしょ」

姫翠「蒼ちゃん、なんで僕が麗央だって信じてくれたの?」

不死原「だってお前、顔一緒だもん。それに、麗央の匂いしたし」

血矢「匂いって。蒼さんホント本能で生きてますよね」

血矢、クツクツと笑う。

血矢「しかも、顔一緒って。小学生の時から変わってないってことでしょ。麗央君、童顔だもんね」

姫翠、ぷくっと頬を膨らませる。

姫翠「僕は若々しいの。おじさん」

姫翠、勝ち誇ったようなドヤ顔。

血矢「ちょ、ひっど。それはないでしょー」

今度は、不死原が腹を抱えて笑いだす。

姫翠と血矢、つられて笑う。

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