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本が好きなあなたが好き


本が好き、

本が入ってるバッグを持ってる私が好き、

本を読んでる男の人の横顔が好き。

“本を読むこと”に含まれる私の感情を見つめたならば、読書の真髄からどんどん離れていくことに気づいて、じんわりと自分が嫌いになる。

モテるために日焼けしてる男と変わらない。

その自覚はあるのに、「本を読む私が好き」のバカバカしい呪いから逃れられずに、私はいつも本を持ち歩くのだし、

「本を読んでる男の人が好き」だなんて、騙されやすいタイプ丸出しの呪いからも逃れられずに、SNSで自称本好きのおじさんに引っかかりそうになったこともある(かっこいいから会ってみたら想像以上に自分がかっこいいことを自覚してる立ち方で待ってたので、所詮私はこういう男の人しか引き寄せないレベルの女なのだと自分に白けて帰った)。

そんな浅はかなわたしでも、出会った本に、底から心動かされること、あります。

リチャードバックの『イリュージョン』、三島由紀夫の『金閣寺』、宮沢賢治の『春と修羅』、藤沢周平の『蝉しぐれ』、シャーリーマクレーンの『アウト・オン・ア・リム』、西加奈子の『サラバ』、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』、吉本ばななの『王国』、千賀一生の『タオコード』、敬称略で失礼いたします。

ああ、そして、そうよ。小さな頃の私は自意識過剰でない純粋な読書家だったじゃない。あの頃の輝くような書物たちときたら、学校の図書室は宝の山だった。友だちと外で遊ぶよりワクワクした。

数々の伝記は図書室であらかた読んだ。大きな児童小説全集が家に揃っていたものだから、『ハックルベリーフィンの冒険』、『若草物語』、『ガリバー旅行記』、合皮のハードカバーで包まれた作品たちに心震えた。オーヘンリーの短編集、ローラインガルスワイルダーの『大草原の小さな家』、赤毛のアンシリーズ、ああ、もっと辿れば大量の絵本に囲まれて、いつも紙をめくっていた。

あの人に好かれるような女の子になりたい、と思い始める頃からどうしてこうも自意識に呪われる読書をするようになってしまったんだろう。

本もいい迷惑だと思うんです。自己顕示の道具になんてされたくないはずだもの。

いやだわ、わたしが。

もっと狂気と隣り合わせなほどに
本と関わりたい。

読んだ本の感想をSNSで言おうとして本読むとか、読みたいのに頭悪そうに思われる危険があるからタイトルとか見えないようにカバーしておくとか、あそこの喫茶店で本読む自分を想像するだけでウットリするとか、

そういうのいけない。

人目に触れられずに最高の場所で隠れるようにひっそりと本に没頭しようじゃないの。


小さなくぼみみたいなところで
本を読んでたい。

完全に守られてる知的空間で。

自意識を完全に凌駕してしまった
純粋の只中で。

そしたら、本が好きなあなたが好き、って言って良いと思ってます。


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#本が好き
#本が好きなあなたが好き

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