本の姿を想像して、つくってみよう 親子ワークショップレポート|2022 #08
こんにちは、ミヨタデザイン部です。
日本ではまだ馴染みのない“ブックアート”をテーマにした親子ワークショップを、年明けの1月21日に実施しました。「ブックアートとは、本が持つさまざまな要素を用いて表現するアートのこと」。この日は本場ドイツで学んだ講師の太田さんと一緒に、木や絵の具、布などを使って“心の中にある本”を形にしました。
「ワークショップはナマモノであって、その場に居合わせた全員のセッション」と語る講師の太田さん。その言葉を体現するように、まずは参加者と講師が一緒に図書館を歩き、本を手にとって観察するところからワークショップはスタートしました。
どんな要素がその本らしい佇まいを作っているのか、実際の本を見せながら、説明します。「図書館を巡って、自分のつくった本が並べられる様子を想像してみる」。このときのインスピレーションが、後の作業をより有機的なものへと導いてくれるのです。
“本は絶対にこう”という姿や性質はない
インスピレーションを得た後は、本の原型となる木の板と、絵の具や彫刻刀、布が用意された“エコールみよた”の工作室へ。参加者は、自由に本のテーマや性質を考えて制作します。そもそも、本来は紙で作る本を、木で作ることにどんな面白さを感じているのか、講師の太田さんに聞いてみました。
「通常、本のカタチを作っていく作業は、寸法でいえば1mmや0.1mm単位で測って、正確に直角を出しながら進んでいきます。とても緻密な作業ですが、ある意味では正解がわかっているわけです。難しい作業ではあるけれど、突き詰めていけば、いつか100点が出せる。でも100点を超えたところを想像するには、むしろ“測れないもの”の中から何かを生み出さないといけないのではないか? とも考えることがあります。今回のワークショップのように、決して寸法でも、角度でも測ることができない、有機的なもののきっかけがあれば、測ることのできない本の可能性を取り入れることができる。そんな風に考えて、ここ数年は木を取り入れながら本を考えて、制作しているんです」
この日のワークショップでは、親子で一つの作品を作るのではなく、親も子も夢中になって、それぞれの本を完成させました。発表会で披露されたアイデアやストーリーは、予想を遥かに超えるユニークなものばかりでした。
ワークショップを終えて、講師・太田泰友さんに話を聞きました
ーワークショップの率直な感想は?
子どもがメインの参加対象となっているワークショップで講師を務めるのは初めてだったので、みなさんに「良い土曜日の午前中だったな」と思ってもらえるかが心配でした。でも、参加されたみなさんの様子を見て、充実した時間を過ごしていただけたのではないかと思えて、ほっとしています。そして何より、僕自身が楽しかったです!
ー印象に残っていることは?
ワークショップの冒頭で、司会者からいきなり僕の普段の作品を披露するようにリクエストがありました。ブックアートの作品を子どもたちに説明するという機会は普段は全くありません。念のために持っていた作品を取り出して、どのようにプレゼンをしようかと探り探り話していると、想像以上に熱い視線がこちらに向かっていることに気づきました。みなさんのブックアートや本への興味のスイッチが入ったあの瞬間は忘れられませんね(笑)。よし、これは楽しくなるぞ!と思いました。
ーワークショップを通じて、親子に持ち帰ってもらいたかったものは?
本に絶対こうでなければならないという姿や性質は存在しなくて、本を作ろうとする目的によって、各々の本の姿があっても良いという感覚と視点です。
ー今後、御代田町でやってみたい活動やワークショップなどあれば教えてください
今回の内容は、本を外から見たときの姿に焦点を当てています。一方で、本の忘れてはならない部分として、内側があります。本の内側にじっくりと向き合ってみるワークショップにも取り組めると、いよいよ本の全体像が立ち上がってきます。いろいろな角度からみなさんと一緒に本を考えてみたいです。
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