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「歌詞集にしがみついて、CDで溶かして」

ファンになって、まだ一年ちょっと。初めて知ってから、クリープハイプに没頭する日々。何曲も聴いていくと、子供の頃から自己肯定感の低かった私に「きみは存在していいんだよ。」と言ってくれている気がしました。魂が揺さぶられる感覚。この一年は、毎日聴いて、ライブに行って、早く全てを知りたくて。そんな私のアルバム紹介、絶好調でお届けします。

1.料理
私にとって、料理は日常であり、趣味であり、家族に思いをめぐらす時間であり。尾崎さんは料理をされないと言っていましたが、それをちゃんと言葉に置き換えてしまう感性に驚かされます。二人の関係性が料理を通してネガティブに描かれている曲だと思います。でも料理をする側から、あえてすごくポジティブに捉えると、「食」の営みが日常に何気なく溶けこんでいるけど、とても大切なものだと表現してくれている気がします。

2.ポリコ
ポリコを可愛いキャラクターだと思って聴いていたら、でも違って…。私には子供が一人います。息子の母になってみて、最近世間で言われている平等に対して、少し疑問に感じることもあります。歌詞集を見ていて、尾崎さんが「ポリコ」から「ぽり子」になぜ変えて表現したのか、家族で話し合ってみました。例えば、正しいとされるものだって完璧じゃない。そんな「ポリコ」のいいところ、悪いところを知って付き合うため、身近な存在と感じられるように「ぽり子」にしているのかなとか。または「ポリコ」という決まった考え方ではなく、一人の人間のように自由に判断できる存在として「ぽり子」にしたのかなとか。可愛らしい曲と思って聴いていたけど、ちゃんと意味を知るとまた違って見えるように。

3.二人の間
内容がガラッと変わって、あたたかい愛にあふれた曲。信頼し合う二人だからこその「間」が伝わってきます。私にとってこの曲のような「間」を持っている人は…、いい意味で仲良しの息子。お互いぶつかることもあるし、悩みを聞いたり聞いてもらったり、冗談言い合ったり、頼ったり。15年間で築いてきた二人の間。口ずさんでいたら、津田さんと同じ「そのままで…」が歌えなくて、「はずしてるよ!」って何度も練習させられました。

4.四季
私の人生に四季はすごく重要で、季節がめぐるごとに、感じたこと、考えたことが、温度や匂い、景色と一緒に記憶されます。この曲に描かれた季節ごとの思い出は、どれも素敵な音と歌詞で、自分の記憶と重ね合わせて聴いています。春生まれの私は、春を「少しエロい」って表現してもらえてすごく嬉しいです。草、木、花が芽を出し、動物が発情する季節。年中無休で生きること、季節を感じることに「生命」の営みを感じます。

5.愛す
せつなさに胸がしめつけられます。何度聴いても。「好きだよ」→「さよなら」だったり、「好きだよ」→「ごめんね」だったり、他にも所々に告白のような言葉から、すぐにそれを優しく打ち消すような言葉が重ねられているから、すごくせつなくなってしまいます。この曲を聴いたら誰でも、好きな人、好きだった人を思い出してしまうんじゃないかな。素直になれなかった曲なのに、なぜか素直になりたい、って思わせてくれます。

6.しょうもな
ドラマ「八月は夜のバッティングセンターで。」見ていました。オープニング曲に使われていたせいか、自分の仕事とドラマの内容を重ねて聴いてしまいます。いろんなことあるけど、いろんなこと言う人もいるけど、仕事も家事も育児も、私なりの戦い方があって、自分に仕事に、誠実でありたいと思います。何もかも振り切るスピードで、言葉に追いつかれないスピードで、がんばろって思わせてくれる曲。9月下旬に息子と久しぶりに神宮のバッティングセンターに行きました。気持ちよかったな。

7.一生に一度愛してるよ
曲名が素敵で、目に飛び込んできました。長年のファンの方に向けた曲。私が目指しているところです。所々に知っているフレーズを見つけると、少しずつだけど私も追いつけているのかな、と思わせてくれます。この曲をつくって、7曲目に入れてしまうところが、長年のファンの奥まで刺さっているんだなって思います。
私もちゃんと奥まで刺さっています。

8.ニガツノナミダ
2.14に泣きながら歩いて、すぐに家に帰りたくないから、雑踏の中に紛れていたい。私の中にもそういう経験何度かあります。チョコ渡す→結果→後悔。チョコ渡せない→後悔。でもずっと大切な思い出です。その日までの準備、甘いチョコを添えて、自分の気持ちを伝えるなんて、すごく可愛らしいことだから。携帯電話に関する言葉を使うという縛りがあるのに、みんなの気持ちを表現してくれている。最近は義理チョコなしとかあるけど、チョコ選ぶ楽しさだったり、渡した時の顔が見たくて、この曲を聴きながら自分にもチョコ買います。

9.ナイトオンザプラネット
初めてライブで聴いて、初めてクリープハイプを知った時のように、魂を揺さぶられる感覚になった曲。特別です。その後すぐに、ジム・ジャームッシュの映画「ナイト・オンザ・プラネット」が特集上映されていることを知って、夜遅い時間に見に行きました。9月のわりに肌寒く、雨がしとしと降る夜に、一人ミニシアターにいて、私もこの映画を好きになれたことが嬉しくて、素敵な夜になりました。ずっと前に見た映画のウィノナ・ライダーのショートカットに憧れていたこと、私も字幕→吹き替え→また字幕に戻ってきたことを、思い出していました。この曲って、ずっと前のいいこともそうじゃないことも、素敵な思い出に変えてくれるような、そんな優しさを感じます。だから静かな夜に聴きながら、そのまま眠りについてしまいたい。

10.しらす
「生」「食」「生命」をこのアルバムから感じるのですが、この曲にそれらが全て凝縮されているように思います。「生」を受けたら生きていかなければいけないこと、宇宙の壮大さまで長谷川さんが伝えているような気がします。「しらす」のような小さい生き物から壮大さを伝えているところが愛おしいです。尾崎さんの甥御さんの声が聴けるのも「マルコ」みたいに特別な曲です。

11.なんか出てきちゃってる
どこのネジがゆるんでいるのかわからないから、聴きながら自分なりの答えを模索してしまいます。たぶんこんなネジかな、あんなネジかなって。会話の内容も自分なりの解釈を探したり。尾崎さんの会話が、歌っていないのにリズム感があるような気がして、会話を曲として成立させているところに驚きます。こういう変わった曲をオシャレに聴かせてしまうところが、クリープハイプのすごいところだなって思います。

12.キケンナアソビ
自分の中にある、隠しておかなければいけないエッチなところが刺激されてしまいます。クリープハイプの他の曲からも感じるそういう部分って、自分自身が少し解放されて、楽になるというか…。「性」というよりなぜか「生」に対して、素直に生きていこうと思わせてくれます。

13.モノマネ
初めて聴いたクリープハイプの曲。この曲を聴いてクリープハイプにどんどん惹き込まれていったことを憶えています。曲名「モノマネ」だけど、どこにもない唯一無二の曲。尾崎さんの声をすごく追って聴いてしまいます。私にクリープハイプを教えてくれた人は「ちょっと声に特徴あるけどね…」と言っていたけど、初めて聴いたこの曲の「声」に惹き込まれていったように思います。このアルバムに「モノマネ」が入っていて嬉しいです。

14.幽霊失格
恋人を幽霊に喩えてしまうところ、しかも失格にしてしまうなんて。だから尾崎さんの歌詞は魅力的なのかなと思います。幽霊とかオバケって怖いけど、夜を連想させたり、よくわからないものだから、とても洒落れたものを感じさせることができると思います。「成仏して消えるくらいなら、いつまでも恨んでて」って歌詞は、恋愛において本当に素敵なフレーズ。私もそんな恋愛観に共感しています。その歌詞が聴きたくてこの曲を聴くぐらい。

15.こんなに悲しいのに腹が減る
通勤の暗い帰り道、アルバムの最後は泣いてしまうんです。子供の頃、人生をフェードアウトしてしまおうか迷ったことや、疎外感、就職、育児、別離、また仕事を始めて、悩んだことが走馬灯のように思い出されて。気を張って強く生きてきたけど、この曲が「今までがんばったね。」と言ってくれている気がして、泣いてしまうんです。たぶん私はその言葉を一番言ってほしいから。それで全部救われる。クリープハイプの曲は、本当にそう思わせてくれます。今があるのは、あの時、もう少しだけ先にある光を見てみよう、もしかしたら大切な何かがあるかもしれない、ってがんばってきたから。

私にとっての「ファーストアルバム」(歌詞集付き)、大切にします。クリープハイプは私の味方。だからずっと応援しています。
#クリープハイプ #尾崎世界観#ことばのおべんきょう





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