モヒカン故郷へ帰る

昨日、少し1人の時間ができたので、久しぶりに映画館で映画鑑賞!なんと2年半ぶりでした。ちなみに、以前観た作品はジョセフゴードン主演のスーパプレイボーイ映画、ドンジョン(笑)
私はスマホを持っていないので、映画を観たいときにどこで何をやっているのか調べる術がなく(久々にスマホ欲しいと思った)、職場からほど近い飯田橋ギンレイシネマでリバイバル上映を観覧。山田洋次の家族はつらいよと、松田龍平主演のモヒカン故郷へ帰るの2本立て。が、観たかった家族はつらいよは時間が合わず、後者のみ観ることにしました。

全然期待せずに観たけれど、なかなか良作でした。
鳴かず飛ばずのバンドマンえーちゃんこと松田龍平が、妊娠した彼女(前田敦子)を連れて7年ぶりに故郷(広島の島)へ帰ります。そして父親(柄本明)が祝いの宴を開くのですが、間もなく末期ガンであることが発覚、余命僅かであることが判明します。仕事をしていないえーちゃんと仕事を辞めた彼女はそのまま島に残り、最後の父親との時間を過ごす。というお話。
ストーリーは大したことないのですが、ディテールが良かった。若干堤幸一意識してそうなカメラワークとか演出はあざとさも禁じ得なかったけれど、"おもしろい映画を作るのだ!"という気概のようなものを感じて、微笑ましく眺められた。やたら美しい島の風景や、父親がコーチを務める中学吹奏楽部のメンバーのビジュアルが妙なリアリティを出し、フィクションなんだけど身近な出来事のような気持ちにさせる。

そして何より素晴らしかったのが、父親である柄本明と息子である松田龍平の演技。柄本明は、そこらにいる明るくてクレイジーな末期ガン患者を見事に演じていた。今まで役者の演技のことなんて考えたこともなかったけれど、今回、前田敦子の演技があまりにも下手、ということも相まって、2人の演技の素晴らしさが際立っていた。演技を演技と思わせない演技。この人たちにとって、これが当たり前の日常で、当たり前のやりとりだと素直に思える。無理がない。無理がないけど、ただ単に普通、というわけではなくて、そこにはきちんとフィクションが介在している。
父親がボケだし、みんなで海へ行った時に父が『中学でたら東京行ってビッグになって帰ってこい』と言う場面は、思わずうるりときた。ボケた父親に対して、その父を否定せずにそのまま受け入れ、中学生の自分に戻る息子。それだけで息子の父親への愛情がありありと伝わってくる(それ以前に島に残りつづけてる時点で伝わってはいるが)。父の気持ちを考え、常識や世間体ではなく、父がどうしたいかを判断基準として父と向き合う息子の姿に、家族ってこれだよなぁ。と、自分の理想像を見た気がします。

ちなみに母親役はもたいまさこ。私の好きな女優トップ3に入る演技派。もたいまさこは、やっぱりコメディー女優だと痛感。どんなにシリアスな場面でも、絶望的な場面でも、"光"をもたらす。だから、"死"をテーマにした作品だけど悲壮感漂わなかったのは彼女の存在が大きいと思う。そして前田敦子は今回もたいまさこにかなり"もってかれた"感がありました。コメディエンヌのような演技を連発していたのだけれど、なんだか立ち位置あやふやで、キャラクターもいまいち定まらず&しっくりきておらず、全編通して浮きまくっていました。引き立て役としては十分力を発揮したと思うけど。

なにより久しぶりの映画館が快適だった。暗い館内にはポツポツ他人の気配があって、つまらなくて出て行く人もいて、椅子はフワフワだけど少し狭くて、映画に集中できる。映画の世界にだけ没頭できる。ああなんて贅沢な時間!!と思い、今度はいつ来られるかなぁなんて未練を感じつつも、子供のお迎えに向かうのでした。
#映画
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#柄本明 #松田龍平 #前田敦子 #子育て

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