反マスク デンマークRCT論文の問題点

https://note.com/kawasemi_no_hina/n/n48434e6440cc

反マスクが頻繁に言及する、デンマークでたった1か月間の外出時のみマスクをつけた群2392人(42人抗体陽性化)とつけなかった2470人(53人抗体陽性化)で両者に統計学的有意差が無かったという研究の問題点を指摘していく。
まず、両群エントリー時に抗体陰性を確認するのだが、判定時の抗体検査は特異度99.2-99.5%とのことですが、陽性率1%ちょっとだと偽陽性のノイズが大きくてこの参加人数では何も言えないのだ。
特異度99.2%ということは、偽陽性が0.8%あるということ。今回の研究では陽性率が約1%だったのだが、これは陽性判定された例のほとんどが偽陽性で間違って判定されたものである可能性が高いわけであり、笑い話である。これは本当は英文にしてどこかに投稿してあげたいくらいである。世界中で反マスクに利用されている論文なので。
しかもFDAは抗体検査は症状発生後17日(感染して22日)経ってから判定すべきとされている。抗体が確実に上がるのに日数がかかるからである。ということは、この研究では多くは研究開始前の感染を見ている可能性がある。
また、平均では外出時のマスクは18%「感染を受ける事」を減らしたが、参加人数が少なすぎて信頼区間が1を跨いでしまい、有意差無しとされてしまったのだが、もっと参加人数が多かったら有意だった可能性が高い。
また、マスクにはウイルスの吸い込みを抑 える働きより(サージカルで着けなかった場合に比べ50%程度)も対面する人への暴露量を減らす効果(サージカルで20-40%に減らす)が高いので、無症状感染者が多い状況ほど、感染拡大防止効果は大きいはずである。この研究では伝染させない効果は見れていないので、実際の社会での効果は見れていない。

https://journals.asm.org/doi/full/10.1128/msphere.00637-20#fig2

しかも研究が行われた時期のデンマークではコロナに感染する人はまだとても少なかった。約600万人の人口で一日300人=2万人当たり1人である。それを各2000人程度の対象者で有意差を検出できるだろうか。10日に1人感染者が出る程度にしかならない。観察期間30日でも3人程度だろう。実際この研究でも試算の通りで、PCRでマスク群0人で対照群5人だった。

この論文は上記のような欠点があり、なにも有効な結論は言えないので、米国の主要雑誌には不採用になったのでAnnals of Internal Medicineという二流雑誌にかろうじて載ったというものである。反マスクがRCTだと葵の御紋のように持ち出すが、統計学的に問題のある何も確定的なことは言えない質の低い研究なのである。対象人数も期間も小さすぎて、抗体検査では誤差が大きすぎて何も検出されないようなダメダメ設計の調査で有意差が出せなかったのは当たりまえで、少なくとも有意差が出せなかった=マスクに効果が無い、などという理屈はおかしいのである。これをRCTだ、RCTだと連呼するのは論文を自分の力で評価する能力が無いことを露呈しているようなものであり、全く恥ずかしい話なのである。

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