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【寝不足】社会人が東海オンエアの「十字架」研究してみたらデータ多すぎて発狂したwww


今回の特集はタイトル(動画風味)の通りである。
東海オンエアに今ハマっている。
私はYouTuberオタク歴1年半程度の新参だが、2019年の1年はそんな私にとっても喪失の1年だった。若き天才の訃報に始まり、業界を支えてきた人気クリエイターたちの突然の解散を幾度となく見送り、黎明期からの礎を築いてきたパイオニアの1人が表舞台から姿を消すなど、なかなかに波乱の1年を過ごしてきた。
移ろう時代の流れが激流の如く速すぎるのも、勿論業界の魅力だ。若者たちが駆け抜ける一瞬のきらめきの目撃者になれるのは、切なくも美しいYouTube界の醍醐味であるとは理解しているものの、そんななかでやっぱり普段の日常を力強く支えてくれる、不動のタフネスは有難いものに違いない。
継続し安定し、守り抜いてくれるという点については、以前noteでも取り上げた水溜りボンドも当てはまる。今回は水溜りボンドにとっての憧れの先輩、今は良きライバルでもある不屈の面白集団、東海オンエアについて書かせてほしい。

彼らは2013年に動画投稿を始めた6人組のYouTuberで、先月、動画投稿6周年を迎えた。メンバー全員が愛知県岡崎市に暮らしている。地元の環境の有利さを存分に活かした企画、動画作りにも長けており、岡崎市の観光伝道師として地域を盛り上げるローカルヒーローとしても活躍し続けながら、日本のYouTuberのチャンネル登録者ランキング第5位(約478万人)の人気を誇る(2019年11月20日現在)、今乗りに乗っているクリエイターだ。
私が彼らの動画を見始めたのは、確か去年の夏〜秋頃だったと思う。そして今年の晩夏には友達数人と連れ立って、岡崎市に聖地巡礼にも行ったほどのハマりっぷりだ。
なぜこんなに彼らが好きか、というと、やっぱりいつも面白いからである。
ただ、彼らの、アニメから飛び出してきたのかと疑ってしまうほどのバランスの取れた強烈なキャラクター性や、奇天烈な発想力や捨て身の実行力、ストイックな企画会議によって本当に面白いネタだけを選別していく研ぎ澄まされた審美眼、明け透けで挑発的な色っぽさなんかに関しては、いろんな人がいろんなところで評価し論じていると思うので、私からはこれぐらいにしておく。
今回私は、彼らの動画のあるひとつの特徴にだけフィーチャーして書いていきたい。
ことわっておくがこの記事はいつものエッセイではない。大人の自由研究とでも思って読んでほしい。


動画内にある説明のない違和感

私は人に東海オンエアをオススメするとき、人気シリーズ「寝たら即帰宅の旅」の2018年版をまず見てもらうことにしている。
長編シリーズもののなかでも特に完成度が高く、長いのにスイスイ観られてしまうところや、ひとりひとりの性格などが一目で分かりやすい、というのが主な理由でこれを選んでいるのだが、加えてもう一つ、重要な理由がある。
この「寝たら即帰宅の旅」という長編シリーズ、彼らのうち誰もそれについて動画内で説明してくれることはないのだが、数点おかしなところがあるのだ。それが、私が新規視聴者の参入を促さんとするときにこのシリーズを勧める理由の一つだ。
まず、リーダーのファッションが変。YouTuberの服装や髪色なんかは、ケレンであることが第一条件みたいになっているので、一見「そういう人なのかなあ」と納得しそうになるが、リーダー・てつやが旅行の動画というのに、着替えても、部屋着になっても、常に髪の毛から靴まで全てオレンジ色(彼のメンバーカラーだ)を纏っているのは少し異様に感じられるだろう。
次に、語尾が変な人がいる。この動画内で「〜でごわす」という変な喋り方をしているのは、ゆめまる。彼が「絶対に寝てはいけない二泊三日の旅」という切迫した状況下で発する「寝ちゃダメでごわす」という力の抜けるようなフレーズに、笑いを誘われた視聴者は少なくないはずだ。
最後に、これに関しては普段の彼らを知らなければ疑問に思うことはないのだが、普段眼鏡をかけている虫眼鏡が眼鏡をかけておらず、逆に眼鏡を普段かけないりょうが眼鏡をかけている。
実はこの人気シリーズには以上3点の「おかしな点」がある。
その理由はズバリ、東海オンエアが原点にして頂点、彼らを彼らたらしめる
“十字架”
という文化のせいだ。
十字架とは、東海オンエアのメンバーが、動画内での対決で敗北したり、ルーレットやじゃんけんなどによって運悪く指名されたりしたときに、一定期間背負い続ける罰のことを指す。
要は、大掛かりな罰ゲームだ。
先述の3つの違和感は、全てこの十字架という過酷な制度に由来している。彼らは十字架を背負っている期間内は、カメラが回っていようがいまいが、メンバーが一緒にいようがいまいが、いくら女の子といい雰囲気になろうが、絶対に十字架を遂行し続けなければならず、これを破ってしまうと何らかの形で刑が加重される。
十字架の“期間”というのは、数時間程度のものであることはまずあり得ない。基本的にはどんなに過酷でも最低3日、現時点で任期満了している十字架の中では、最長9ヶ月まで存在している。これは罰“ゲーム”と呼んでいい範疇では最早ない。
つまり、彼らは「寝たら即帰宅の旅」以前の撮影の中で、何かしらの原因となる出来事を経たせいで、こんな面倒で恥ずかしいことをやっているわけだ。
ではなぜ、どんな理由で、てつやが全身オレンジになり、ゆめまるの語尾が「〜ごわす」になり、虫眼鏡が眼鏡をかけていなくて、りょうが眼鏡をかけているのか。ちょっと気になる。
そこから他の動画を見るようになると、だんだんその理由が解き明かされる瞬間が訪れるようになってくる。そのときの「そうだったのか!」感はかなり気持ちがいい。
だから、東海オンエアという底なし沼にハマる第一歩はこの動画がいい、と私は考える。十字架が説明なしに既に乱立しているという、初見にはある意味不親切なこのシリーズを、あえて新規にオススメするのだ。
今回はこの東海オンエアの独特の文化、“十字架”の構造とその効果について掘り下げていきたい。
かなりハードコアな内容になるので、少し東海の動画を見てから読んだ方が面白いかもしれない。まだ彼らに出会っていない人が、この文章を読んでくれているなら、この先を読み進める前に、是非今から「寝たら即帰宅の旅」を見てきてはいかがだろうか。


十字架とはどんな罰ゲームか

つい先月、10月末に、東海オンエアの十字架史上最も過酷と言われた「3ヶ月間ファラオ生活」という十字架がついに終焉した。
3ヶ月間私服を着ることは許されず、毎日エジプトのファラオの華美なコスプレ衣装で過ごさなくてはいけない、というこの過酷すぎる罰ゲームがりょうに降りかかったのは、今年の7月23日メインチャンネルにアップされた「【文理対決】行った場所の位置情報を繋げてより面積の大きな三角形を作れ!!」という動画が発端だ。
これはタイトルの通り、チーム3名が相談禁止で各々移動した距離によって作られる、三角形の面積を競う対決だが、一見ファラオとは何の関係もない。メンバーたちは距離を稼ぐために国内外の遠方へと赴くが、エジプトに行ったメンバーもいない。
この罰ゲームは、リーダー・てつやが、三角形からただピラミッドを連想しただけの思いつきで決まったものなのだ。
チーム戦なので、当初は負けたチーム3人全員が1ヶ月ファラオ生活、という予定だったが、その後彼らのなかでの話し合いにより、「グループ内に3人もコスプレがいるのは画的にクドい」ということで、じゃんけんに負けた1人が3ヶ月ファラオ、という規約に変更した。
結局、ほとんどじゃんけんである。
ここまでのわけのわからない解説を読んでもらって分かる通り、結局のところ十字架とは、行われた対決の敗者に相応しい、正当性のある罰である必要は全くない。
キツくて、派手で、バカでも分かれば、それでいいのだ。
こう言うといかにもテキトーっぽく見えるが、意外にもこのシステムはよく出来ているし、何より彼らに合っている。
次の章で、様々な十字架の形態を、これまでの実際の事例を挙げて見ていこう。


十字架の様々な形態

彼らが今の、キツくて、派手で、バカでも分かる十字架のスタイルを確立するまでには紆余曲折と歴史がある。
2018年頃の十字架には、まだ企画と十字架の内容にある程度の関連性があるものが多かったが、2019年の十字架にはダジャレのようなこじつけが多くなってくる。その対決における十字架の制定をするくだりから既にエンタメを求められ始めているせいだろう。
そしてここ1年で「十字架そのもの」を題材として扱った動画も登場するようになってきたのを見ると、十字架はその存在意義を、徐々に単なる罰ゲーム(=勝負に勝つための消極的モチベーション)からかなり飛躍させていることがわかる。
確認できただけでも十字架の数は約40個(※私調べ)をゆうに超え、様々な形態のものが存在している。それをまずは形態ごとに分類してみた。

① 見た目に変化のある十字架
最も分かりやすく、象徴的な十字架。りょうの3ヶ月ファラオ生活、エクステ全身オレンジアキネイターピコ太郎ちゃんちゃんこなどが代表的。見た目系十字架は、なぜかてつやが背負いがち。24時間その格好をしていることを強いられるので、外でファンにすぐ見つかるという弊害もある。

② 動画での名乗り、ツイッター等SNSでの表示名に変化のある十字架

十字架文化のハシリとも言える虫眼鏡の「負け犬」「ババア・ジジイ」川の名前などが代表的。辛さは少ないが、ツイッターのフォロワーが減りやすい。「負け犬」だけはメンバーからの呼ばれ方も「虫さん」から「負けさん」に変わり、本人も負け犬期間は眼鏡をかけない、などこだわりがあったが、以後の十字架に同等の特徴はなし。

③ SNS系
期間中、特定の内容のツイートを毎日更新しなければならない、など、ファンには嬉しい十字架。実施回数はごく少ない。「日報を毎日ツイッターに投稿」「ダンス練習動画を毎日ツイッターに投稿」などがある。

④ 持ち物系
主にサブチャンネルが発端となりやすい十字架だが、メイン企画発で代表的なものにはシルバーカー生活がある。サブチャンネルでは2017年3月から2019年3月までの2年間という長期に渡って、メンバー(主に虫眼鏡)のスマホケースが変なものに設定され続けるという流れが続いていた。プーマのマジックテープ財布を使わされる十字架も、サブチャン発でかなり長い期間実施。

⑤ 行動習慣系
これもサブチャンネル発で何度も実施された一人称or語尾変更ルーレットが代表的。面白い語尾や一人称を発案し、それをルーレットアプリに登録して、止まったマスの語尾や一人称をじゃんけんで負けた人が期間内常に使わなければいけないというもの。罰ゲームとしての動機付けもなく、ただ面白いからという理由で始まるギャンブル企画。
ゆめまるの「ごわす」が代表的。メインチャンネルでは、りょうの「平成の間、変な挨拶(挨拶:動画の冒頭にある名前を名乗る行為のこと)」「門限9時」などが挙げられる。
この分類にはさらにもう一つ、「令和のあいだやり続ける十字架」という動画によって、全員に課せられた壮大な十字架が存在するのだが、それはまた後述するとしよう。

このように、今までに登場した十字架はざっくり5種類に分類できる。それぞれ実施される長さはその十字架のウェイトに応じてまちまちで、重めの十字架なら期間は短め、軽めなら期間は長め、という傾向で決定されているが、直近の「ファラオ3ヶ月」がウェイトも期間も凄まじかったせいでこの傾向も覆されそうになっている。
ただ、この十字架を終えてみて、当人たちも「3ヶ月は長すぎる、面白いのは1ヶ月まで」と語っていたので、今後はファラオを踏まえて期間は控えめになるかもしれない。このようなメンバー間でのトライ&エラーの結果、より面白くなるように改良を重ねられているのが十字架という罰ゲーム文化だ。
ちなみに今まで実施されて終了している十字架の中で最長は、りょうの「平成のあいだ変な挨拶」で、約9ヶ月。イベントなどでも観客と一緒に盛り上がれるフレーズのため好評を博し、惜しまれつつ平成とともに終了した。


十字架の発生と歴史

私は十字架文化の発生を、2017年7月19日投稿の「【まさかの感動】選手権で勝った奴が勝ち選手権!!!」という動画の罰ゲームからであるという見方をしている。
様々な勝負を勝ち抜き形式でおこなっていき、最後まで勝ち抜けられなかった一人は、1ヶ月間改名する、という主旨の動画だ。
最終決戦に勝ったしばゆーが、負け残った虫眼鏡に「負け犬」という名前をつける。そこから1ヶ月間、虫眼鏡の動画の名乗りは全て「負け犬」に変更されている。
この動画以前にも、初期の頃からゲームやバトル、選手権と名前のつく動画は投稿されているが、罰ゲームがない、あるいはその場で終わる罰ゲーム(ゴムパッチンやハリセン、ポッカレモン一気飲みなど)が多い。
そこからだんだんと、アイコンやチャンネル名を変えさせられるというような、長期的かつ視聴者の目につくビジュアル部分が変更される罰ゲームが登場してくる。ただ、この頃はまだ期間の設定が曖昧なので、明確に期間が決まった形式での罰ゲームが始まったのはこの動画が初めてと言えるだろう。
これは私のリサーチ不足だが、彼らの中に「十字架」という言葉が使用され始めたのがいつなのかが分かっていない。分かり次第追記したいと思っている。もし既に分かっている方がこの記事を読んでいたら、情報提供を求めたい。
ただ、現時点での見解として、私は十字架という言葉を「期間が明確に指定された、行動や服装、名前など外見に現れるなんらかを拘束される罰ゲーム」と定義することにしている。よって上記の動画を十字架の起源と解釈している。
2017年7月に十字架的罰ゲームが誕生してから2年強が経ったが、これまでに十字架は約1週間〜1ヶ月程度の間隔でかなりコンスタントに実施されている。それほどまでに習慣づいてしまった十字架文化は、彼らを象徴する最強のお家芸の一つとなってきた。
当初十字架は、企画におけるバトルを切迫させて、盛り上げるための付属物だったはずが、最近では十字架そのものにフィーチャーした企画もいくつか生まれた。
十字架ネタの初回は、2019年2月12日投稿の「ドMにキツい罰ゲームをプレゼント!!第一回【十字架プレゼン】」という動画だ。この動画では初めて、メンバーから十字架というものがどうあるべきかの思想が語られる。
タイトルの通り、リーダー・てつやが気に入りそうな十字架を提案するという動画で、てつやに1位に選ばれた十字架はてつや本人が実行し、ランキング最下位に選ばれたメンバーは自分が提案した十字架を背負わなくてはいけない、というルールになっている。
この動画で、十字架に並々ならぬ情熱と愛を注ぐリーダー・てつやが、「シンプルかつ、期間、見た目、邪魔さ等が厳しい十字架が良い。見ている人には「あいつバカだな、何やってんだよ」の気持ちだけで笑ってほしい。絶対にどんな場面でも自分は十字架を遂行するからこそ、相手を困らせてしまう十字架はやりたくない」と、十字架とはなんたるかの美学を語っている。是非そこにも注目して見てみてほしい。
2回目の十字架ネタはすぐあとの4月30日に投稿された。
平成最後のこの日、彼らはついに十字架とともに生きていくことを誓う。
「【ほぼ一生】「令和」の間やり続ける罰ゲームを1人1つ決めよう!」
この動画は、十字架史上最も長く続いた、りょうの平成のあいだ変な挨拶「Hey Hey 俺がりょうだぜ、Say Yeah!」(発端となった動画:【最悪の罰ゲーム】30年の歴史に終止符を!平成クイズ!!!)が、平成の終わりと共に終了する寂しさから企画された。
数十年間はやり続けるであろう十字架である、というそもそも狂った前提のため、「勿論良識の範囲内でアイデアを出し合おう、全員が反対するような十字架は却下にしよう」というルールのもと十字架を6つ決め、くじ引きによってどれを誰が実施するかが決定された。
が、それにしても素人目には重たい十字架が多すぎるように感じられた。6人がそれぞれ背負うことになった十字架の内容は、動画を見て確認してほしい。
この動画の意味するところとして私が感じたのは、十字架を遂行する自分たちを、一時的で特異な状態として捉えるのではなく、面白という檻から自力では出られない、そういう生態である生き物へと変貌させること、つまりは怪物化する覚悟のような何かだ。
動画内の会話でもまさに、

ゆめまる「ここまで来たか東海オンエア…」
としみつ「終わりだよもう! 悪魔の契約だよこれ、言っとくけど」
りょう「一生だよ?」
としみつ「一生なんだよこれ、人間やめるんだぞ!!

と、象徴的なやりとりでヒートアップし、そのあとに虫眼鏡が、

虫眼鏡「東海オンエアがどこまで活動続けるかわかりませんけども、全盛期は多分、今じゃないですか。全盛期の間中は、ずっとやんなきゃいけない

と、動画を進行する。そこに出るテロップは、
これからの東海オンエア人生全てを捧げるであろう罰です
だ。ここで誰しもが疑問に思うだろう、「何の罪を贖う罰なの?」と。
次のテロップはこう続く。
【なんで罰を受けるの?】誰も悪いことしていないので全員1つ罰を受けましょう(?)
最早自分でも(?)をつけてしまっている(ちなみにこの動画の編集は虫眼鏡)。
そのうえすごいのが、グループ内で発生したゲームのルールに絶対的に則り、強制的にやらされるはずの十字架を、この動画に関してだけは「自由参加」という凄まじい前提で投げつけられる。そして勿論、全員がこの罰ゲーム(?)に自主参加する。
東海オンエアの人たちは、こういうふうに面白いことを振られたら、多分断ると死んでしまうのだ。もうこの時点でそういう生き物になってしまっているのは確かだから、別にこの企画でわざわざ悪魔と契約しなくても、既にモンスターだ。ただ、その彼らの動画人生における意識の変貌っぷりを、はっきりとした形で目撃できるのが、この動画の凄いところだろう。
動画に映らない日々の生活の一場面でさえも、毒にも薬にもならない無駄な制約に縛られ、それを律儀に遂行しないではいられない、常軌を逸した彼らの奇妙なプロ根性そのものが、常に背中に背負われた十字架の正体、と言っても過言ではないだろう。
東海オンエアと十字架は、ついにここまできた。


サブチャンネル名物「語尾&一人称変更ルーレット」

数ある十字架の中でも、何かの勝負に負けたわけでもなく、突発的に「面白いから」という理由で始まり、じゃんけんで無情に被害者を増やしていく恐怖の「語尾&一人称変更ルーレット」というのがある。これはかなり理不尽だ。
このゲームは2017年5月21日のサブチャンネル「じゃんけんで負けた奴、一人称を「俺」じゃなくするゲーム」に端を発する。
てつやが「日本には一人称がこんなにたくさんあるのに、皆「俺」と言ってるんじゃつまらない」と言いだし、結局自分が負けて一人称が「わし」になる。
この十字架は今までで6回実施されており、古い方から順番に、

2017年5月21日〜 てつや:一人称わし(1週間)
2017年8月20日〜 夕闇に誘いし漆黒の天使達・小柳:語尾〜やんす(2週間)
2017年11月5日〜 しばゆー:一人称ぼくちん(2週間、ただし脱退騒動により頓挫)
2018年4月8日〜  ゆめまる:語尾ごわす(1ヶ月)
2018年11月8日〜 りょう:一人称あちき(1ヶ月)
2019年5月1日〜  虫眼鏡:語尾だってばよ(1ヶ月)

となっている。第二回の被害者は、たまたま居合わせた後輩YouTuberであるというところがなかなかに衝撃だが、夕闇も立派な十字架YouTuberである。
この十字架は、当初のルールでは言い間違えるたびに1週間延長されていたが、初回のてつやがあまりに言い間違えるため、1週間とされていた期間が延々と終わらず、途中から間違うたびにテキーラショットを飲む、に変わった。が、最終的に半年後の11月に強制終了された。
しばゆーの「ぼくちん」までは延長ルールが適用され続ける。が、やはり終わりが見えなくなるという理由で、次のゆめまるの「ごわす」からは、延長ルールがなくなり、その代わり1ヶ月へと長期化し、言い間違えた場合はその場で「クソォ!!」と叫んで全力で悔しがらなくてはいけない、というルールに改訂された。
この最新ルールで直近3本の十字架は遂行されている。
中でもメンバーの心を掴んでしまったのは、ゆめまるの「ごわす」だ。ちょうど「ごわす」の期間に、冒頭でも紹介した大人気シリーズ「第一回寝たら即帰宅の旅」が撮影されている。この動画の中で、「寝たらダメでごわす」「うんちでごわす?」などの名言が連発され、その味を占めたてつやが、ちょうど第二回寝たら即帰宅の旅の開催時期に合わせて「もう一度語尾変更ルーレットをやろう」と言いだしたことで、虫眼鏡の「だってばよ」が生まれた。
しかし、ことば少なで一言の決めで笑いをかっさらっていくゆめまると違って、企画の進行をしたり文章を書いたりする機会の多い虫眼鏡は、「この語尾スベってるんじゃないか」と、開始早々不安を口にし、普段ならエッセイばりの完成度で書いている動画の概要欄は短くなり、個人チャンネル「虫眼鏡の放送部」は「だってばよ」期間中完全にお休みしてしまう、という弊害まで起こった。
が、語尾変更ルーレットの風物詩ともいえる、語尾の活用形に迷って「てばすかけど……」と謎の接続詞を口走る様子は、充分笑いを誘っていた。ちなみにゆめまるの「ごわす」は過去形に活用すると「ごわした」になる。
十字架の中でも最もストーリー性を欠き、理不尽で突発的なのがこの口調系十字架だが、「喋る」というYouTuberにとっても人間にとっても避けられない行為に付随しているため、見た目の次に分かりやすく派手で、見ているこちらとしては非常に面白い。
東海オンエアを見始めた頃の思い出エピソードとして、「てつやは普通に自分のことを「わし」って言う人なんだと思ってた」「ゆめまるはごわすって言うキャラなんだと思ってた」という声は私の周りだけでもよく聞く。
さらに言えば、大人が鬼気迫る形相で声を枯らしてじゃんけんをする様子を、皆さんは未だかつて見たことがあるだろうか。彼らを見ていると、じゃんけんってそんなに人生の命運を握る壮大なゲームだったっけ、と不思議な感覚に陥る。
こんなに面白くて重要なのに、なぜかこの「語尾&一人称変更ルーレット」というヘビーな企画が、メイン動画に昇格することはおそらく絶対にない。そのため、サブチャンネルをチェックしていないと、突然メンバーの喋り方が意味不明なものに変わってしまう、というかなり初心者泣かせの構造を持っている。
その真意は謎だが、もしかしたら彼らは「喋り方なんて企画に関係ないし、大したことじゃない、経緯も薄っぺらい(ただのじゃんけんなので)し」とか思っているのかもしれない。だとしたら恐ろしい。あるいは「当然サブチャンも見ろよな」なのか。
そしてこの記事を書いている最中にも新しい語尾、しばゆーの「〜ぷぅ」が生まれた。これは11月16日に開催された、東海オンエアの全国ツアーである「ガチンコくじくじビキビキツアツアどんどん」の宮城公演の公演中に決定し、次の島根公演(1月18日)までの2ヶ月というかなり長い期間に設定された。
東海オンエア史上、サブチャンネルではなくイベントの最中にメンバーの語尾が変わるのは初の出来事だ(ちなみにこの語尾の発表もサブチャンネルでのみ行われた)。
ちなみに今回のツアーグッズには、キーホルダー型の小さい語尾ルーレットが発売されており、ついに視聴者間での遊びとしても、語尾変更が提案され始めた。
次回また友達と岡崎旅行に行くときには、私も是非とも「旅の間中語尾変更」をやってみたい。


十字架が遂行できなかったときの禊

2018年8月26日の「【STAR★QUIZ】世界的スターの武勇伝がヤバすぎる!【ドベはグラサン】」という動画の罰ゲーム、2週間サングラス生活に当たったてつやが、翌日のサブチャンネル「てつや、2週間サングラス生活開始にあたってお願いがあるそうです」にて、メンバーと視聴者にある交渉をする。
というのも、2週間の十字架実施期間中に、関西コレクションへの出演があるため、その日はサングラスを外さなくてはいけないのだ。普通の感覚なら、「仕事で服装が指定される日は当然サングラスを外しても仕方ないとされるだろう」と思うが、そこはやはり中途半端が許せない東海オンエア、「1日外す重さは1日延長では埋められない」とし、てつや自ら「2週間延長」によって容赦してもらうこととした。
さらに1ヶ月後の9月23日、サブチャンネル「東海簡易裁判 「てつや氏、サングラス脱離の件」」では、てつやを起こしに来た虫眼鏡によって、サングラスが就寝中に外れてしまっているところが動画に収められる。メンバーは「そんなの別にしょうがないからいいじゃん」と言うが、当人の納得がいかないため、視聴者投票の多数決で許されなければ1週間延長という措置をとった。が、ここでは圧倒的に「しょうがなかったよ」派が多く(当たり前だが)、晴れててつやは予定通りの9月25日に明るい世界を取り戻す。
ただ、この裁判より5ヶ月前の4月17日のサブチャンネル「【悪事発覚】適当にカメラ回したら裁判始まりました」では、遂行中の十字架「色ってこんな細かい名前あんのかよ!第一回「色王」」による「1週間全身メンバーカラー」に関する裁判が開廷していた。ちなみにこれを食らっているのもてつやだ。
この件ではサングラスのときとは違って、てつやが女の子とスカイツリーデートに行きたいがために、メンバーに隠れて着替えていたことがバレてしまった、という流れだ。
このときはてつや本人にズルをしようという意思があったため、メンバー側も何か禊は必要だろう、という立場なのだが、このときも結局てつや本人の申し出により、4月末まで十字架を延長することになる。
今のところ、彼以外のメンバーが十字架遂行失敗により禊をする、という展開は確認されていないが、小さい禊で言えば、語尾&一人称変更ルーレットの「言い間違えたら「クソォ!!」とその場で悔しがらなくてはいけない」が挙げられる。
「十字架の発生と歴史」の章で、いつしか十字架は彼らを悪魔的契約に誘ったというような内容を書いたが、そうなっていく過程に、どうしても「てつやの禊が厳しすぎる」というのが要因としてあるのではないかという気がしてならない。
彼らは基本的に視聴者の期待を裏切らないためではなく、メンバーに対する意地と己のプライドのために十字架を完遂しているのが見て取れる。視聴者側としたらそれがものすごく気楽で笑えるのだ、だってこちらを気にして十字架なんかやられたら、痛々しくてつらくなってしまいそうなものだから。
これが笑えるのは彼らが誰とも戦っていないためだと思う。


録画に分断された時間を繋ぐ十字架

そうは言っても、十字架は視聴者とクリエイターの間の、立派なコミュニケーションツールの一つであり、それはかなり密接で強固な関係を、彼らと我々の間に結んでくれている。
これは我々と彼らの約束というような重たい人語コミュニケーション的な形ではなく、十字架という、目に見え、耳に聞こえる“型”の形で我々に伝わってくる、物言わぬメディアである。
一度、YouTubeの時間感覚の話をしよう。
YouTubeの動画は見たいときに見られる。テレビの番組は決まった時間に流れていってしまうし、録画という能動的かつ計画的な行動に出るのが苦手な人間にとっては億劫なシステムだ。勝手にそこに残っていて、気が向いてサムネイルをクリックするまで基本的にはそこで待っていてくれるという気軽さは、インターネット動画媒体の魅力だが、その代わりこの在り方は、我々の中に流れている時間と、動画の中で留まり続けている録画された時間とを、絶えず分断し続けている。
ひとつのチャンネルに出会い、そのクリエイターを知っていく過程で、動画を時系列順に見ようなんて考える人はおそらく少数派だろう。大抵の場合、興味のあるタイトルやサムネイルに釣られて無作為に選び取るか、再生回数順に人気の動画から視聴していく人が多そうだ。時系列を気にする段階にくるのなんて、よっぽどそのクリエイターを気に入って、その日の投稿をその日のうちに消化する視聴スタイルが定着してやっとだろう。
そのうえ、東海オンエアのメインチャンネルの動画は、決まった曜日に動画を撮り溜めて、分担して動画を編集し、時系列関係なく毎日ひとつずつアップロードしていくというスタイルだ。そのため実際の時間進行と、その日アップされる動画の時系列に、大きなズレが生じることがある。
水溜りボンドなどのほとんど撮り溜めをしないチャンネルと比較すると、動画をアップロードする時点から東海オンエアは時間的に視聴者との隔たりを持ちやすいとも言える。
そこで役に立つのが十字架なのだ。特に十字架の中でも可視化されているもの(服装、持ち物、語尾と一人称、名前等)は、そのときに引き剥がされてしまう「撮った彼ら」と「観る我々」それぞれの時間を結びつけるために一役買っている。
アップされる時期がランダムでも、「この人がこれをやっているっていうことは、この動画はあの時期に撮ったんだな」と推測できるうえに、おすすめや関連動画で突如として現れる過去の動画も、十字架という違和感とともに時期の推測が可能だ。
私はこの文章がよりわかりやすくなるために、2017年7月の「1ヶ月改名(負け犬)」以後を十字架と定義している。そのアクションが『動画が投稿された日に始まり、指定された期間を満了したことで終わっている』という事実があって、やっと、十字架が動画内の一種のメディアとして確実に機能するからである。
メイン動画は時系列がばらつく傾向にある東海オンエアだが、十字架をより楽しくしているのは、SNS発信やサブチャンネルの投稿にはかなり即時性があるという点だ。
彼らは現状の発信に余念がなく、隠すことなく日々自分がどんな生活を送っているか教えてくれる。
その彼らのネットでの活動スタイルと、「十字架」という生活密着型罰ゲームは、非常に相性が良い。
彼らも人間だから普通に買い物をしたり外食をしたりしているのだが、どんなときでも十字架は背負い続けている。その健気さと滑稽さ、そして外界のどんな環境や場所や時間に対しても、常に自分たちの遊びのフィールドを崩そうとしない誇りと傲慢さが、誇張された主張ではなくただ淡々とそこで実行されているのを見るのは、ある種清々しい。
そんな絶妙なバランスの世界観を、彼らが即時的に発信してくれるおかげで、我々はそれをリアルタイムで楽しめる。
これは多分、たとえば、今私がふと仕事の休憩にスマホを開いたこの瞬間に目撃したことだからこそ面白い、という効果があると思う。
「今こんなバカなことやってるんだ」の、「今」の部分は多分大きい。繋がっている、時間を共有しているという楽しさは、何にも代え難いからだ。
即時性の高いVlog的発信と、様々な期間から突拍子もなく突然現れるメイン動画のコンビネーションは、さながら解き明かしたくなるパズルであり、時空を自由に行き来するタイムマシンのようでもある。
インターネット上でのクリエイターと視聴者側のつながり方において、こんなにエンタメ性が高くワクワクするようなメディアが未だかつてあっただろうか。


おわりに

十字架を遂行する彼らの姿は動画に半永久的に残り続けるが、すべての十字架の期間はいずれ終わっていく。
いつでも我々は、動画をひらけば、全身オレンジのてつやに、ごわすのゆめまるに、ファラオのりょうに会いにいけるはずなのに、その瞬間の彼らはあっという間に思い出になってしまう。
だってばよ期の虫眼鏡は概要欄を書かなくてつまらなかったはずなのに、りょうくんのかっこいい私服が見られないのは嫌なはずなのに、終わってしまうとなんだか寂しい。インターネットの動画では半永久的に記録が出来る、と以前の記事でも論じているが、十字架は実は、それに逆行する刹那的な情緒も兼ね備えている。
東海オンエアという今をときめくYouTuberの生き様の象徴として、私がここまで十字架という事象を研究してみたくなった気持ちが、少しでも分かってもらえたら嬉しい。
「東海オンエア面白いよ!」と動画を見せればいいだけのことを、ここまでしたのはさすがに布教のクセが強すぎるのは重々承知だ。ただ、次世代の罰ゲームエンタメに少しでも興味が湧いた人がいることを切に願う。


2019.11.20 今回の題材とは無関係だけどとにかくリサイタルズも貼らせてほしいみやかわゆき

追伸・この記事では、ほとんど全ての動画に関連する言葉に動画へのリンクを貼っている。ニコニコ動画のオタク時代はこういうデータベースとしてニコニコ大百科が非常に役立ったのだが、YouTuberもそろそろ膨大なデータ量になってきているので、こういう記事がもっと増えたら嬉しいなあ……。

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