「東京恋物語」第二話:迷宮の中へ
爽やかな風とともに、桜の花びらが路面に舞う午後の青山通り。
赤坂郵便局を右折し、六本木交差点へ向かう白いベンツは、ゆっくりとスピードを落とし、左に見えるオフィスビルの玄関口で停まった。そこには、宮野浩介が経営するIT会社、エムケーフォースが入居している。
専属運転手の坂本憲次は、車を降りると手なれた動きで、後部座席のドアを開けた。そして間もなく、待っていたかのように、白いピンストライプが印象的な濃紺のスーツを着こなした細身の男性が、携帯電話を耳にあてながら現れた。宮野である。