ガルーダの飛翔 第三部 夢の見た夢、扉の向こうの扉(長編小説)
一
激しい雨が降りつけ、落雷が大地を震わせた。
二頭の白い龍はらせん状に絡み合いながら猛スピードで鉛色の空へ上昇してゆき、熱せられた白く輝く太陽の中に吸収されていった。
龍の姿が見えなくなると、大地に深閑とした静寂がおとずれた。暗い空の隙間から青空が顔を覗かし、眩しい陽光が大地にまっすぐに差した。小鳥がさえずり、花が開き、蝶が舞った。生命は何事もなかったかのように永劫につづく輪廻のカゴの中で踊り出した。
太陽に溶けていった二頭の龍は、翌日地上に舞い戻ってきた。一頭の龍は山奥にあるサロ呪術師の村へ降り立ち、子猿に姿を変えた。もう一頭の龍はチェンマイ市内へ降り立ち、オレンジの袈裟をまとった小坊主に姿を変えた。
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