日本最古の石
島根県の津和野町で日本最古の石が発見されたという記事をネットで見つけ、頭の中が疑問符でいっぱいになった。
日本最古の石?
それって、日本中の石を全部調べたってこと?
そもそも、どうやって石がいつできたか調べるのか?
謎だらけだ。その石が、津和野町郷土館で展示されているというので、行ってきた。
JR津和野駅から古い町並みを通り抜けていく。郷土館は川べりにあった。訪ねると文化財係の宮田健一さんが応対してくれた。
件の石は展示室の入口にあるガラスの陳列ケースに並べられていた。大きなものは人の頭ほどあり、見た目は西日本でよく見られる花崗岩のようだった。かつて関西に住んでいた頃、近所の山に登ると、ごま塩をまぶしたような柄の岩が多くボロボロと崩れやすかったのを覚えている。それがまさに花崗岩だった。
展示されている岩は、25億年前に形成された花崗岩が後に変成作用を受けて花崗片麻岩になったものだそうである。25億年前は日本最古だとのこと。見たところそんな重大な雰囲気はなく、そのへんの山に転がっている「普通の石」と区別がつかない。
どうしてこれが日本最古だとわかるのか。
宮田さんによると、岩石のなかのジルコンという鉱物に放射性元素のウランが含まれるため、それが放射壊変し鉛に変化した比率を測定することで、年代がわかるそうだ。
そしてこれが最古と断定できるのは、日本列島のなかでも古い地質と比較的新しい地質の分布はわかっていて、日本じゅうの石を調べなくても、その古い地質の領域で採取したなかで最古ならば、ほぼそうと断定できるらしい。津和野には京都府の舞鶴からつながる舞鶴帯と呼ばれる岩石の帯が通っており、最古の石もその舞鶴帯に挟み込まれた岩体から採取されたものだという。
このへんの地質学の話は、埋蔵文化財が専門の宮田さんにも説明が難しいようだ。調査を行なった広島大学の早坂准教授による解説資料を読んでみたが、その解説も私には難しかった。とにかくこれ以上古い石は、現在全国のどこでも見つかっていないってことで納得しておく。
25億年前といえば、まだ生命と呼べるものは細菌ぐらいしかいなかった時代。当時の風景を想像することすらできない。
石のひとつを誰でも触われるよう棚の外に展示していたら盗まれたそうで、今は盗難防止のためめちゃめちゃ重い石を展示している。私も触って25億年という歳月を想像しようとしたが、あまりに途方もなくて何も浮かばなかった。
小学館サライ「ミヤタ珍品堂」から改稿して転載
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