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中村哲医師の精神は生き続ける ―アフガニスタン・ナンガルハル州で新たな用水路の完成

 5月4日、アフガニスタンのナンガルハル州で中村哲医師が現地代表を務めていたペシャワール会の支援で1年半にわたる工事が行われていた新しい用水路が完成して、5月4日、完成記念の式典が行われた。タリバン暫定政権のマンスール水・エネルー相代行は式典で、ペシャワール会がアフガニスタンの人々の困難を忘れることなく、支援してくれることに感謝の言葉を述べた。用水路が完成した地域はかつてISが活発に活動したところで、用水路の完成による民生の安定には暴力を減じることへの期待もある。用水路は1万4000人の人々の生活を支えると見られている。

新たに完成なった用水路 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240505/k10014441201000.html

 イスラエルは昨年10月以来、ハマスを軍事力一辺倒で制圧することで、国の安全を図っているが、本当の平和は軍事力ではなく、中村医師の主張や活動のように、人々の生活を改善することで実現することをこの用水路の完成はあらためて教えている。民生が不安定なところに平和や安定はやって来ない。

https://www3.nhk.or.jp/.../20240505/k10014441201000.html

 アフガニスタンでは米軍が大量に武器・弾薬を残し、それが遠くパレスチナのハマスにまで移転されていることが指摘されている。また、アフガニスタンでは今年10月には西部ヘラート州で立て続けに4度の地震が発生し、2000人以上の犠牲者が出た。また今年に入って麻疹が流行して、今年4月までに1万5000人の子どもたちが罹患した。国民の3分の2が人道支援の必要な状態だが、そのための国際的な支援金がなかなか集まっていない状態だ。

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 アフガニスタンではテロの脅威はなかなか払拭できず、2023年10月13日、バグラーン県の県都プレクムリ市内のシーア派モスクで、少なくとも17人が死亡する自爆テロが発生した。これには「ISホラサーン州(ISKP)が犯行声明を出した。また、モスクワ郊外のクロッカスホールでの大規模テロの前日である3月21日にアフガン南部カンダハルの銀行前で自爆テロがあり、少なくとも3人が死亡、12人が負傷した。

 ISKPはISの拠点があるイラクやシリアから資金提供を軍事的知識や訓練を受け、モルディブにも工作員を派遣していると見られている。

 若者が武装集団に入り、テロ行為に走るのは、アフガニスタンに十分な職がないからだ。中村医師は用水路の建設などが若者たちの職の創出に役立つと考え、支援を続けた。アメリカは、それとは真逆にタリバン政権が復活後はアフガニスタンに経済制裁を科し続け、かえってアフガニスタンを経済的苦境の下に置いている。

 国連では、アフガニスタンの国際社会への復帰に向け、国連加盟国にアフガニスタンへの関与や接触を増やすことを求める安保理決議が昨年12月に成立した。この決議は、グテーレス事務総長にアフガニスタンとの調整を図る国連特使の任命を求めると同時に、タリバン政権に女性の権利のほか、治安やテロ、麻薬など直面するさまざまな課題に包括的に取り組むことを促している。

https://twitter.com/1947_2016/status/1236681152661843969

NGOの活動は話題性があるところに集中する傾向があるが、2021年にタリバン政権が再び成立して以降、アフガニスタンへの国際社会の関心が薄れる中、活動を継続するペシャワール会の活動は貴重で、現地の人々から高く評価されるものであることは疑いがない。

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