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日本の戦後復興や発展は「良き敗者(グッド・ルーザー)だったから実現した

 夏の全国高校野球甲子園大会で決勝戦で敗れた仙台育英高校の須江監督は選手たちに「グッド・ルーザー(良き敗者)たれ」と教えたという。その通り仙台育英高校の選手たちは優勝してインタビューを受ける慶応高校の選手たちの言葉に一々拍手を送り、清々しい印象を与えていた。

 2007年4月29日のTBS「時事放談」の中で、筑紫哲也氏は、「グッド・ルーザー(良い敗者)」と見出しが付いた発言の中で日本は戦争での負けぷっりが良かったから戦後の復興や発展に成功したと下のように語っている。

これは貴重な動画ですね https://www.youtube.com/watch?v=FqfbLLb7Rgc


「筑紫氏:例えば沖縄の集団自決の問題もそうなんですけれども、色んなことをですね、歴史で今までいわれたことを修正していこうとするリビジョニストっていうの、必ずいつもいるわけですね。そのことはいいんですがね、やっぱり最近のこれ全体で、僕がすごく気になるのはですね、一言でいえば潔くない。つまり吉田茂さんという総理大臣がそれこそ戦後つくった人が、『日本の100年、なぜ日本がこれだけ成功したのか』っていう短い論文書いてますが、それは我々がグッド・ルーザーだったから。つまり負けぷっりがよかったからだと。で、近代化の時も下関なんかで砲撃されて、負けるわけですよ。負けた時に、これはいかんということで、やっつけた敵から色んなものを学ぼうとする。占領の時もそうだと。色々言いたいことはあったけども、しかしそこで潔く負けたからこそ戦後はつくられたんだという。麻生(太郎)さんのおじいさんですよね。」https://www.tbs.co.jp/jijihoudan/column/200707_02.html

 
 筑紫氏がいう「リビジョニスト」は「歴史修正主義者」のことだろうが、日本の歴史修正主義者たちの中には日本の加害の事実も認めず、「強い日本を取り戻す」と戦前は悪ではなかったと訴える人たちもいる。筑紫氏が言うように、日本人が謙虚になって戦って敗れたアメリカからいろんなことを学んだことが日本の発展をもたらした。婦人参政権などの民主主義、農地改革、労働組合の結成、また教育の民主化などもかつての敵から学んだものだった。

 日本にも歴史を修正してナショナリズムに訴える政治家たちがいる。麻生太郎氏はかつて「ハングルは日本人が教えた。うちは平仮名を開発したが、おたくらにもそういうのはないのか、と言ったらハングルができた。日本の植民地統治は教育制度を整え、ハングル普及に貢献した」 「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。他の国を探してもない」とも語っている。

救いようがない https://twitter.com/tokyonewsroom/status/1217133048615112704


 日本の将来の首相候補とも一部で言われる高市早苗経済安全保障相、山谷えり子参議院議員などは、従軍慰安婦は存在しなかったとかねがね主張し、歴史教科書から「従軍慰安婦」の「従軍」を削除することに「貢献」した。
 同じく、TBS「時事放談」の「歯止めが・・・」という見出しがついた野中広務氏と藤井裕久氏の対談の中では下のようなやりとりがある(2007年5月20日)

「野中氏:(前略)航空自衛隊、海外航空自衛隊はサマワ全域に活動してですね、そして物資の輸送だなんだといわれながら、本当はね、アメリカの兵隊を運んでいることの方が多いって言ってる。(後略)
藤井氏:そうですね。私はね、やっぱりこのほかの国は色々問題あるのに、日本はスッと通ったっていうお話なさいましたがね、やっぱりね、このイラク戦争がそもそもね、いいのかどうかっていうとこ、もっと議論しなきゃいけなかったと思うんですね。」https://www.tbs.co.jp/jijihoudan/column/200707_03.html

 
 野中氏が言うように、航空自衛隊はイラク戦争の際に物資だけでなく、米兵も空輸していたことが指摘されていたが、政府は国会、国民に説明することはなく、小泉首相などは「自衛隊の活動地域が非戦闘地域」などとふざけた発言を行っていた。藤井氏の発言「イラク戦争がそもそもね、いいのかどうかっていうとこ、もっと議論しなきゃいけなかったと思うんですね。」は、米国のブッシュ政権が主張するイラクの大量破壊兵器の保有は信じられないという声が国際社会では圧倒的だったからこそ、ドイツやフランスはイラク戦争に反対した。また、戦争に国連安保理決議による裏付けもなかったが、小泉政権は真っ先にイラク戦争支持を表明したことを指している。小泉氏の主張や姿勢はイラクが湾岸戦争後、ずっと国連の大量破壊兵器の査察を受けてきたことを無視する修正主義だ。

かなり危ない任務だったことは容易に想像できます。


 政府が歴史修正主義の言説を頼りにするならば、国の信用を落とすことは明らかで、実際従軍慰安婦問題では韓国と軋轢が生じ、日本のイラク戦争支持の姿勢は中東イスラム世界など国際社会における日本のイメージを大いに損なうものだった。歴史修正主義ではない、戦争を真摯に反省し、「敵」のよいところを採り入れる謙虚な日本が戦後復興や発展をもたらし、イスラムの人々など日本への敬意の背景となった。一部右派の政治家たちのように歴史修正主義的主張をずっと強調し続けたら日本の国際社会における信用はがた落ちであったことはまぎれもない。


どんな神経をしているのやら


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