ガザ・ナセル病院の機能停止と、「汝もし正義を与えざればむくい受くる日ありなん」(サーディー)
WHO(世界保健機関)は、18日、ガザ地区南部最大のナセル病院の機能がイスラエル軍の攻撃によって完全に停止したことを明らかにした。水と電力の供給が停止したため、酸素吸入を行っていた8人の患者たちも死亡した。イスラエルは人間社会で最もやってはならないことを現在行っている。
日本政府もイスラエルとの防衛協力の停止や放棄、またイスラエルとのワーキングホリデー制のキャンセルなど強い抗議の意思表示をすべきだと思うが、支持率14%(毎日新聞)の岸田首相にはそのような気配がまるで感じられない。ガザ問題で発言しない中で、ウクライナ復興会議など開いても説得力をもたないだろう。
汝もし正義を与えざればむくい受くる日ありなん -サーディー(イラン・シーラーズ生まれ、教訓文学と抒情詩で有名:1210年頃~92年頃)
アダムの子らは互いに手足の如く
一つの宝に基づいて造られている!
四肢の一つが運命(さだめ)のため悩んだら、
他のものらが何で安心していられよう!
もし、汝が他人(ひと)の苦痛を悲しまぬなら、
何で、人たるの名に値しよう!
(サーディー著『薔薇園(グリスターン)(蒲生礼一訳、平凡社:東洋文庫、1964年)』第1章物語10「人類の一体性」より引用)」
現在ガザ地区には必要な食料の2%しか届いておらず(オックスファム)、200万人以上の人々が飢餓の中で生活している。イスラエルのヘルツォグ大統領は昨年10月7日にハマスの攻撃に責任のないガザ住民はいないと述べ、無差別なガザ攻撃を正当化したが、この発言自体が民間人への攻撃を禁止した国際法に違反する。
ハマスはアメリカが支援した2006年のパレスチナ立法評議会選挙で勝利したことを根拠にガザの統治を行ってきたが、ガザ人口のおよそ半分を構成する10代の住民たちはこの選挙にまったく責任がない。また、現在5万2000人余りの女性たちが妊娠中だが(1月11日付「The Lancet」の見積もり)、病院まで攻撃される中で安全な出産など望むことはできない。子どもや女性は戦時国際法でも保護の対象だが、イスラエルのガザ攻撃の犠牲者たちの実に7割は子どもや女性たちとなっている。
アメリカのバイデン大統領もネタニヤフ首相のことを「ゲス野郎(asshole)」と呼んだとNBCは伝え、またPOLITICOは「bad f---ing guy」と形容したと報じた。TBSのニュースではassholeは「ろくでなし」と訳されているが、そんなかわいいものではないだろう。
強き腕と指先の力もて
か弱き貧者の掌をくじくは罪なり。
不運なる者を赦さずして、はばからざれば
足を踏み外すとも彼の手を取る者なからん。
悪しき種子をまき手良き望みを抱くは
愚かなる頭脳をしぼり、空想を描くものなり。
汝の耳より綿を取り出し、人々に正義を施せ
汝もし正義を与えざればむくい受くる日ありなん。
(サーディー『ゴレスターン』沢英三訳、岩波文庫)
The Economist/YouGovが今年1月21日から23日にかけて1664人のアメリカ人を対象に行った調査では、特に18歳から29歳の世代で、49%がイスラエルがガザ住民に対してジェノサイドを行っていると回答し、「そうは思わない」の24%、「わからない」の27%を圧倒した。
また、アメリカのユダヤ人たちも若い世代は変化しつつあり、2021年に「ユダヤ有権者協会(the Jewish Electorate Institute)」が委託して実施した調査では、40歳以下のユダヤ系アメリカ人の33%がイスラエルはパレスチナ人に対してジェノサイドを行っていると回答し、年長の世代の15%を大きく上回った。さらに、40歳以下のユダヤ系アメリカ人の20%が「イスラエルには存在する権利がない」と答えたのに対して、年長の世代は3%だった。(イスラエルの「ハアレツ」紙の記事、昨年12月26日)イスラエルに最も影響力のある国アメリカの若い世代がパレスチナ問題にも正義を与える肯定的変化をもたらすことを願わざるを得ない。
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