「悪夢を繰り返してはならない」 -山口淑子さんの言葉
「戦時中、李香蘭という名の私は、映画『黄河』の撮影で向かった最前線の日本軍兵士を慰問しました。1本のロウソクの前に立ち、『海ゆかば』を兵士と共に歌いました。しかし翌日になると、その彼らが一つまた一つと死体になって戻って来るのです。中東戦争の取材は、心の傷をよみがえらせると同時に、悪夢を繰り返してはならないと思いを新たにする機会でした。にもかかわらず、今も紛争が続く状況をみると、むなしさ、そして人間の愚かさを感じます。」
これは女優、歌手、そして参議院議員であった山口淑子さんの言葉だ。園児に軍歌を歌わせる幼稚園があるという報道に接すると、山口さんが形容するような、歴史を忘れる、あるいは歪曲して理解する「人間の愚かさ」を感じてしまう。
山口さんは1973年夏にイスラエルのエル・アル航空のハイジャックに失敗してイギリスで身柄を拘束され、釈放されたパレスチナ人コマンドのライラ・カリドにインタビューした。ライラが「私たちはユダヤ人を憎んでいるわけではない。力ずくで私たちの国を奪おうとする行為に反対しているのです」と語ると、ハイジャックは非道な行為であるとは思いつつ、ライラの「イスラエルに奪われた故郷の上を飛びたかった」という言葉が、山口さんには日本人が中国東北部に「満州国」を建国した過去にダブって響いたという。
山口さんは、イスラエル・パレスチナ二国家共存、つまりパレスチナ人が国家をもつことを支援して日本パレスチナ友好議員連盟の設立に参加した。
アメリカのトランプ大統領はイスラエル・パレスチナ二国家共存にこだわらないと2017年2月15日にイスラエルのネタニヤフ首相との会談で述べたが、民主党のバーニー・サンダース上院議員は、直後の2月27日、二国家共存を支持する圧力団体の「J Street」で講演を行い、「イスラエルがパレスチナの占領を継続し、パレスチナ人の政治的・市民的自由の権利を日々制限していることはアメリカの根本的価値観と相いれない。ヨルダン川西岸の入植地拡大は和平の可能性を奪い、苦難と暴力の要因となるもので、イスラエルの入植地拡大は国連安保理で16年12月に非難決議が成立したように国際法にも違反する」と述べた。
現在の中東問題の本質は、私たち日本人の過去とも無縁ではないことを山口さんの人生やその言葉は教えている。
アイキャッチ画像はhttp://analogshinn.seesaa.net/article/391650065.html より
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?