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中村哲医師が語るアフガニスタンの親の気持ちと「なし崩し的」の富と武器への拝跪

 拙著『武器ではなく命の水を送りたい 中村哲医師の生き方』(平凡社)へのアマゾン評でFBの友達でもある田中 猪夫さんは、下のように書いておられる。

「次男の剛くんの話が出てこないので、補足したい。
 中村医師には5人の子供がいたが、次男の剛くんは難病(脳の腫瘍)によって10歳でなくなっている。(中村医師の専門は脳神経)
 その剛くんは、お父さんがアフガニスタンから帰ると、四肢の麻痺で体を動かせないにも関わらず、父の顔を見て「お帰りなさい!」と明るく目を輝かせたそうだ。2002年12月、病状が悪化したとき、剛くんは『人間は、いっぺんは死ぬから』と言って、逆に家族を慰めた、とブログにある。
そして中村医師は、剛くんの死に接し、『アフガニスタンでの空爆と飢餓で犠牲になった子の親たちの気持ちが、いっそう分かるようになった』と」


 下は中村医師の言葉だが、中村医師は聖書の言葉『剣によって立つ者、必ず剣によって倒される』をしばしば引用していた。

 「現実を言うなら、武器を持ってしまったら、必ず、人を傷つけ殺すことになるのです。そしてアフガニスタンやイラクで起こっているように、人が殺し合い、傷つけ合うことの悲惨さを少しでも知っていたなら、武器を持ちたい、などと考えるわけがありません。」―中村哲『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための18人の発言』 (岩波ブックレット657)より

用水路の試通水。水が来るというので近所の子どもたちが集まってきた。 https://www.montbell.jp/generalpage/disp.php?id=438


 中村医師は「富と武器への拝跪・信仰こそが偶像崇拝」と説いているが、日本政府は殺傷能力のある武器輸出を行う方針を国会での議論もなく固めた。(朝日新聞8月23日)集団的自衛権、反撃能力、防衛費倍増、すべて閣議決定で決めてきた手法は憲法が定める国民主権や戦争放棄の精神が無視され、かつて今の自民党副総裁が口にした「ナチスの手口」を踏襲しているかのようだ。

 同じくFBの友達、榎戸 誠さんが引用された拙著の中村医師の発言を下に紹介する。

「中村先生は『憲法は我々の理想です。理想は守るものじゃない。実行すべきものです。この国は憲法を常にないがしろにしてきた。インド洋やイラクへの自衛隊派遣・・・。国益のためなら武力行使もやむなし、それが正常な国家だなどと政治家は言う。私はこの国に言いたい。憲法を実行せよ』と語りました。・・・また、中村先生は『貧困や戦乱に苦しむ世界の人々が求めているのは(日本の)武力ではなく、日本が最も得意とする民生支援だ』と述べました。中村先生が言うように、世界が評価するのは日本の武力、軍事力ではなく、民生支援です。『民生支援』とは戦争や混乱がある国や地域で医療や食糧などの分野で人びとを助けることです。」

アフガニスタンでは日本から贈られたランドセルは机代わりにもなる https://camp-fire.jp/projects/view/344159


 政府は殺傷能力がある武器輸出は「国際法違反の侵略を受けている国の支援にとって『重要な政策手段』」(朝日新聞)としているようだが、戦争はいつも防衛、自衛権を口実に戦われてきた。中村医師が観察したアフガニスタンもアメリカは自衛権の行使と言って空爆を行い、空爆や飢餓の犠牲となる多数の子どもたちの親を生み出してきた。2022年1月1日付のTolo Newsは過去16年で28、500人のアフガニスタンの子どもたちが犠牲になっていることを伝えている。武器輸出を推進する議員たちは、正義の戦争などというものはなく、子を戦争でなくす親の心の痛みがわかっているだろうか。殺傷能力がある武器だから当然その武器で犠牲になる子どもたちが現れるのはわかりきったことだ。


杉山大二朗氏『仁義ある戦い』(忘羊社)より


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