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中村哲医師の死から4年 ―アフガニスタンの人々はその知恵から学ぶ

 2019年12月4日に中村哲医師が銃弾に倒れてから4年が経ちました。アフガニスタンが干ばつや政変による困苦や混乱の中にある今こそ中村医師の考えや活動がさらに重たい意味をもつようになっていると思われます。

 アフガニスタン南部のカンダハルを訪れた時、政府軍兵士の若者とタリバン兵の若者が仲良くしている場面に出くわしました。その若者たちは、その時々の形勢や給料の多寡を見ながら、政府軍に入るかタリバンに入るかを決めているようでした。つまり、彼らは生活のために戦っていました。

 中村医師も語っていましたが、普通に仕事をして食べられるようになれば、命まで懸けて戦う必要はなくなります。だから中村医師は、用水路を掘って農業ができるようにしようとしたのです。

水の開通を喜ぶ https://www.pref.fukuoka.lg.jp/somu/graph-f/2020winter/minispecial/index.html?fbclid=IwAR29v16QdQbfnYQekF0Zt022ayK8O10XvWxUX-fD-I-3yhykOmBJmk_AUbU

 「テロとの戦い」は、そもそも武力でテロをなくすという発想自体が間違いでした。米国も武力だけでは駄目だと気付いて復興支援にも力を入れるようになりましたが、空爆を続けながらの復興支援では人々の心をとらえることはできませんでした。

 支援の中身も、一方的にモノやカネを与えるだけで(実際に対テロ戦争開始直後には空から支援物資を投下していました)、中村先生のように住民の目線に立った支援ではありませんでした。

 米国はアフガニスタン政府にも莫大な復興資金を注ぎ込みましたが、その多くは旧政権の高官たちの懐に消え、アフガニスタンの人々の貧困を改善することができませんでした。それが「テロとの戦い」が失敗し、アメリカが支援した政府が倒れた最大の要因だったと思います。

西日本新聞のギャラリーより https://specials.nishinippon.co.jp/tetsu_nakamura/kids/gallery/?fbclid=IwAR3zPs_4HfowVRoU38hWmzJKC0VOXF41Pk3ladmMDw08NTVfSZEAwjeqUcE

 米軍の撤退とタリバンの全土掌握は、欧米の武力による中東イスラム世界支配は必ず「失敗」という終わりがあることを教えています。アメリカはイラクでも失敗し、その結果ISという残虐な組織も誕生することになりました。

 今後、アフガニスタンが安定するかどうかは、タリバン政権が人々に食べる手段を与えられるかにかかっていると思います。

中村医師が建てたモスク https://specials.nishinippon.co.jp/tetsu_nakamura/kids/gallery/?fbclid=IwAR3zPs_4HfowVRoU38hWmzJKC0VOXF41Pk3ladmMDw08NTVfSZEAwjeqUcE

 WFP(世界食糧計画)は、アフガニスタンでは全人口の3分の1に当たる1400万人が深刻な飢餓の危機に直面し、200万人の子どもが栄養失調に陥る危険があると警告しています。この人道的危機を乗り越えるには、国際社会の支援が不可欠です。

西日本新聞のギャラリーより https://specials.nishinippon.co.jp/tetsu_nakamura/kids/gallery/?fbclid=IwAR3zPs_4HfowVRoU38hWmzJKC0VOXF41Pk3ladmMDw08NTVfSZEAwjeqUcE

 タリバンは、人々が食べることが幸せという中村医師の知恵に学んでアフガニスタンに平和や安定をもたらしてほしいと思っています。中村医師はアフガニスタンの人々が自助で生きていくための方途を示しました。タリバンが米軍と戦いながら20年も消滅しなかったのは、やはり彼らなりに人心を掌握していたのでしょう。軍閥たちの暴力がある中で、タリバンに守られながらその支配地域で活動していたという援助団体の女性の証言もあります。


タリバン兵士に守られながら支援活動する女性 https://theconversation.com/what-my-20-years-in-afghanistan-taught-me-about-the-taliban-and-how-the-west-consistently-underestimates-them-167927?fbclid=IwAR1TfLMKs5oN_V5JK-CLoV_CQxCm1W6yZLMZKlxhUkIVSy_ysONdg9wsKqA

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