『早い者勝ち主義』

『早い者勝ち主義』、人類が人類たる最も普遍的で、誰もが実践している主義、ルール、哲学なのに、これを声高に唱えている人が見当たらないので、早い者勝ち主義にのっとりこれから私が声高に唱えさせてもらいます。
(既に先人がいるようであれば潔くと取り下げます)

さて、ほとんどの生物は受精という、まさしく早い者勝ちにより誕生する。
しかし、いざこの世に生を受けた後は早い者勝ちなど、どこ吹く風、割り込み・横取りを遠慮する生物など人類を除いてない。

人類もかつてはそうであった。
しかし、人類はある時、早い者勝ちのルールを知り、生活に取り入れた。この時から人類は文明・文化を発展させるパスポートを手に入れた。衣食住の安定を約束され、『早い者』である年長者や先祖を敬い、その知識を活用するようになったので。
年長者や先祖を敬うという点からすると、宗教の隆興にも早い者勝ち主義は欠くことの出来ない重要なピースであると言える。

重要なルールだからと言っても、それを守らない者は必ず出てくる。古今東西の争い事は早い者勝ちのルールに反したこと、または早い者が誰なのかが判然としないことによる場合が大半である。最近は大手を振って早い者勝ち主義に反することは少なくなり「我こそが正当な早い者である」との主張のもと争いを始めることが多い。

また、なるべく争い事を減らすため人類は法律を始めとした約束事を沢山作ってきたが、その根底を流れている考えは『早い者勝ち主義』であることが多い。早い者勝ちは当たり前で、何を基準に早い者と定義するか、またそれによる紛争の解決方法を取り決めたものが。特許や商標などがイメージしやすいが、それ以外の約束事を思い出してもらっても、早い者勝ちと無関係なものを探すことのほうが難しいのでは無いか。

冒頭でも書いた通り『早い者勝ち主義』、人類が人類たる最も普遍的で、誰もが実践している主義、ルール、哲学なのに、これを声高に唱えている人が見当たらないのは何故でしょう?
一つには『早い者勝ち主義』という名前が、ちょっと、さもしい感じを想起させるからでしょうか?そうであれば、新しいネーミングを考えましょうか?しかし、センスの無い私は辞退しますので、読者のみなさまに『早い者勝ち主義』で権利をお譲りします。

最後に『早い者勝ち主義』は、かように重要ではありますが、我々はこれだけに従えば良いのでしょうか?
そうで無いことは皆さんのご認識の通りです。早い者勝ちが大事であることを承知しながら、『譲り合い』を実践することが、より洗練された人類に発展していくために重要なのでは無いでしょうか。
何千年後かに、『2000年代前半までが早い者勝ち至上主義時代、それ以降は譲り合い最優先時代』と分類されるように。

fin.


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