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アルコール専門病棟での生活 (その1)

断酒20年のヨウスケです。

年末にアルコールで潰れてしまい、連れて行かれたのは内科ではなく精神病院。アルコールの離脱症状で身体中が震え、診察した院長から

「ここまでのは久しぶりに見た」

とありがたいような情けないようなお言葉をいただきました。

そのまま入院となり大部屋に案内されました。

 アルコール専門病棟。どんな人達が入院しているのかも不安です。

 解毒のための点滴をさっそく打たれます。点滴を打たれているうちに尿意が…。移動できる点滴台があればいいのに、天井から点滴をぶら下げられていて動けません。普通、病院ならばこういうとき、ナースコールを押して呼べばいいのですが、ここにはそれはありません。

「ヤバい漏れそう」

 と、ゴソゴソキョロキョロしていると斜め向かいのベッドで寝ている患者さんと目が合った。角刈りの強面のおじさん。

  どうしていいか分からなくて黙っていると、発せられた言葉は

 「あんちゃんよ、目が合ったら何か言わんといかんぞ!」

 ものの言い方で

 「あ、その筋の人や、やべえ」

 と思いましたが、正直におしっこが漏れそうだと話すと、その人は大声で看護師さんを呼んでくれましたが、誰も来ません…。

 「来ないな…あんちゃん大丈夫か?」

 と声をかけてくれます。

 ちょっと大丈夫じゃないことを告げると、

 「ワシが点滴持っててやるから一緒にトイレ行こう」

 とベッドから起き上がってこっちに向かって来ます。しかし、何と片足が不自由なようで杖をついて歩いています。

 トイレまで2人羽織みたいにひっついて歩いて行き、横で点滴を持っていてもらいながら、無事に用を足すことができました。

 介助される側の人だろうに、なんて親切な人なんだ…。

 ベッドに戻ってその人にお礼を言い、簡単に自己紹介して少し話をしました。

 「怖い人かと思ったけど、面倒見の良い人で良かった。」

 少しホッとしました。

 初日からこんな出来事があり、約1ヶ月間の精神病院での入院生活が始まりました。

 
 さて、今となっては正確に覚えてませんが、病棟での毎日は次のような感じだったかと思います。

 朝は6時起床。食堂に体温計があり、計測して置いてあるノートに自分で記載する。その後、抗酒剤シアナマイドを飲まされるというか飲みます。

 この抗酒剤、これを飲んだ状態でアルコールを口にすると頭痛や顔面紅潮などの非常に不快な二日酔いの状態を起こす作用があるらしいですが、自分で実験してみたことはありません。

 7時朝食。食堂は自分の席が決まっています。隣の席には同じ頃に入院してきた同い年の男。彼はベッドも隣でした。

 9時から解毒の点滴タイム。午前中は点滴打たれながらベッドでおとなしくしてるか、本を読んだりしています。

 12時昼食。

 午後は週に2回は病院内で断酒例会というのがあり、そこで自分の飲酒歴などを話していき、同じく他の人の話をえんえん聞いていきます。

 例会の無い午後は診察などがあり、特に何もなければゴロゴロしたりしてます。

 夕食は5時過ぎくらいだったかと思います。

 夕食終わると風呂は2日に1度くらいだった記憶があります。

 だいたいこんな感じで1日が終わります。

 鍵のかかる部屋に閉じ込められるわけでもなく、外出も許可が出ればできます。入院患者はシラフだとまともでおとなしく、看護師さんも今までの内科病院に比べてフレンドリーで話しやすい人が多く、居心地は悪くはありませんでした。  

 しかし、入院患者の多くは、アルコールが原因で仕事も家庭も失った人、
退院してもまた飲んで病院に戻って来て入退院を繰り返している人、アルコールが原因で足が不自由になり、松葉杖や車椅子を使わなければいけなくなった人などが多く、

 「俺もこういう人たちと同じ人種に分類されるのか?」

 「精神病院に入院したということで
、もう再就職も結婚も不可能かもしれないな…」

 「31歳にしては早くも人生終了か…」

 と、鬱屈とした気分になっていきました。

 さらに、身体の検査を進めていくにつれ、恐ろしい事実と向き合わなくてはならなくなりました。

                           続く

                           

 


 


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