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平野太呂@ON READING 2017.1.22

気になる人、平野太呂さんという写真家が名古屋にいらしていたので会いにいきました。ON READINGでのスライド&トーク。
ずっとずっと欲しかった自主制作の写真集『LOS ANGELES CAR CLUB』がご本人からしか買えないと聞き、この機会を待っていたのです!


「この車、停まってるのか、走ってるのか、どっちだろう?」

ひたすら車が映っているだけの写真、最初に見た時の私の疑問です。何枚か見るうちに「走っている」と分かりますが、背後の風景が流れていてようやく分かる。クルマの趣味はない私が、なんか面白くてカッコいいなーと興味を持ったのが最初です。

撮影方法も不思議。ロスのハイウェイを飛ばしながら、ピンときた車を見つけると同じ速度で伴走し、真横からカメラに収めていったそう。車種にこだわってるわけでもなさそうだし、カッコいい車、変な車、ボロボロ車もあります。平野さんによると「乗っている人の匂いが滲み出ている車」が好きで、そんな車を狙っていったとのこと。

アメリカ西海岸で、水のないプールだけを撮った写真集『POOL』(2005年・リトルモア)。

平野さんの解説では「アメリカのプールは日本と違って底が丸く、スケートボーダーたちには打ってつけの練習場だった」そうです。自身もスケートボーダーの平野さんは、西海岸の住宅街で、打ち捨てられて廃墟と化した立ち入り禁止のプールを撮影したとのこと。

映画『E.T.』で、自転車で空を飛ぶ有名なシーンがあります。私は子どもの頃にあれを観て「アメリカって、プールばっかりなんだなー!」と思いました。空から見下ろすアメリカは、あちこちプールだらけだった。普通にプール付きの家に住んでるんですよね。この写真集に出てくるプールに、お洒落で豪華なものはありません。周りは草ボーボー、荒れ果てたプールばかり。さびれた遊園地みたいな物悲しさが通底しています。

『LOS ANGELES CAR CLUB』で、私が不思議に思っていたのは「なぜこんな手法で撮ろうと思ったのか? 停めてある車じゃダメなの?」ってことでした。平野さんに聞いたところ「撮ってる過程も面白くないとイヤなんです」。停まっている車では簡単すぎて満足できない。3車線の最も速い車線で伴走しながら撮っているため、後続車に対しても緊張の連続。プールは全部こっそり裏庭から入って撮っている。トライ&エラーで続けてきたスケボーで培われた精神かも…とのことでした。なんでわざわざ苦労したいのか。意味が分からないですね。いや、ホントは分かります。そういうの面白いです。

ちなみにプール撮影では持ち主に見つかって怒られたこともあり、その人がエルビス・プレスリーの物真似が趣味のおじさんだったことから、次の写真集『The Kings』の構想が生まれたとか。エルビスになりきってる人々を集めた写真集『The Kings』、これがまた楽しいです。

『LOS ANGELES CAR CLUB』を見た大根仁監督が「初めまして。ロスへ行く仕事があるんだけど、一緒に行きませんか」と、速攻電話してきたそうです。私は大根ファンですが、大根さんとお仕事をされていることは知りませんでした。英会話NOVAのCM撮影、2人でカメラを回したらしい。なんと!
「女優カメラは大根さん、動かない絵は僕」。有名な女優大根カメラ、ここでも…。
そんなお話も聴けた「俺得な日」でした。平野さんはふんわりした素敵な方でしたが『LOS ANGELES CAR CLUB』はハードカバーでカッコいい本です。ホクホク!


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