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【連載企画】県域JA誕生

 県域JAが2024年4月1日から始動する。統合による変化や影響、農家の期待と不安を追った。


<上>大改革 

農家所得増へ一枚岩
販促 物流効率化など期待

 「体力のあるうちに、しっかり次世代につないでいくJAが必要だ」。県域JA「宮崎県農業協同組合」の来春設立が決まった2日、宮崎市で会見に臨んだJA宮崎中央会会長の栗原俊朗(72)は気を引き締めた。

 飼料高騰、燃料高、後継者不足…。農業を取り巻く状況は年々厳しさを増す。JAにおいても、組合員数や利益の減少など深刻な課題が山積。そうした現状の中で大改革が始まろうとしている。組織が一枚岩になることで、経費削減や一体となった農畜産物販売、物流効率化、PRの強化など、効果は多岐にわたる。これはつまり、農家の所得向上につながっていく。組織にとっては組合員減少への対応や、経営基盤強化にも期待が持てる。

 県域JAは段階的に移行。当初は本店の下部に現JAを地区本部として配置し、1年以内にJA宮崎経済連など三連合会を統合。3年後には複数の地区本部を広域本部に集約する。

 県内JAの正組合員数は、全盛期の1948(昭和23)年度の11万4229人から、2022年度には4万9054人まで減少。事業総利益は1995年度の378億1903万円をピークに右肩下がりとなり、2022年度は238億7772万円。同中央会は「各JAでは職員数削減や、店舗統廃合による事業管理費削減で、事業利益を確保する状況が恒常化している」と説明する。

13JAが県域JA設立を承認後、会見で抱負などを
語るJA宮崎中央会の栗原俊朗会長(左)=2日午後、
宮崎市のJA・AZMホール別館         

 1948年の農業協同組合(JA)発足当初、県内に114あったJAは、昭和40年前後を中心に合併が加速。2000年に現在の13JAに集約された。

 「その後も県内を3、4JAに統合する話は持ち上がっていたが、議論は進まなかった」。11年から同中央会会長を務めた森永利幸(76)は当時を振り返る。「持続可能な農業に向けて、統合を成し遂げる必要があった」。任期満了直前の17年、県域JAの検討開始を決めた。

 森永から同中央会会長のバトンを受け、本格的に県域JA構想に着手したのは福良公一(70)。「勝手に決めていると農家に言われて精神的にきついときもあった。組合員の所得向上が目的だと、地道に訴えるしかなかった」。今年8月、各JA理事会が県域JA設立を承認するまでに、JA主催の組合員との意見交換は延べ1299回、4万1063人が参加した。

 巨大組織の新組合長に名乗りを上げた栗原は会見で、「食料生産県と言えども、10年先どれだけ厳しい状況になるだろうか。(組織を)まとめる力が必要だ」と強調した。

=敬称略= 

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