見出し画像

【特集2009 「残さんね宮崎弁」】100人のイチ押し

創刊70周年を迎えた宮崎日日新聞社と宮崎大学教育文化学部国語学研究室との共同事業で、「残さんね 宮崎弁」と銘打ち、後世に伝えていきたい宮崎の方言を広く県民から募集しました。このコンテンツは2009年10月5日~2010年3月4日まで100回に渡り紙面掲載されたもので、読者、県内有名人の「私のイチ押し宮崎弁」と方言に纏わるエピソードを紹介したものです。住所・職業は掲載当時のものです。

2009年 8月25日紙面から

 「方言が『古くさい』『恥ずかしい』と思われていたのは過去の話になった。方言を持つことを誇るように、暮らしの中には方言があふれている。暮らしに根差す方言は地域の宝だ。一方で、新たな世代の刺激を受けて方言は進化している。方言を見詰め直すことは郷土愛をはぐくみ、地域の将来を描くことにつながる。時代が地方へ向かう今だからこそ、あらためて問いたい。あなたが未来に伝え残していきたい宮崎弁は何ですか?―」

001「てげ」

国富町本庄 野田美妃さん(歯科衛生士)
父親の転勤が多く、小学校時代に話す言葉といえば標準語。宮崎弁を知らないまま入学した本庄中1年のころ、友人が「宮崎弁講座」を開いてくれた。「超すごい」と言うと「てげすごいやが」と教えられた。方言を覚えてから、友達も増えた。宮崎弁は初めて覚えた方言。今は誰よりも流ちょうに話せる自信がある。

002「はめつけてやれ」

宮崎市下北方町 富永政男さん(無職)
「一生懸命やれ」と、人を励ますときに使う。高校を卒業後、就職先の福岡へ出発する日に、駅まで見送りにきた父は「はめつけてやれ」と激励してくれた。仕事できついときには、父のこの言葉を思い浮かべていた。宮崎の名はいま、全国的に知られている。人のぬくもりを感じられる宮崎弁を多くの人に伝えたい。

003「えらしい」

延岡市島浦 古谷由美さん(アルバイト)
小さい子どもを見たときや、かわいい洋服やバッグを見たときなどに言う。言葉そのものの響きも好きだし、「かわいい」というより愛らしいと感じた気持ちがより強く伝わる気がする。延岡市や宮崎市ではあまり聞かないが、島浦ではどこでも通じる。いつも使っていて愛着のある言葉なので、ぜひ残していきたい。

004「あんべらしゅ」

宮崎市江南 達中千鶴子さん(日舞教授)
迷っているときや選択を迫られたときなどにこの言葉を掛けられると、気持ちを落ち着けて意思を決めることができるやさしい言葉。母や亡き祖母が使っているのが耳に残っていて、この言葉を聞くと幼いころを思い出す。若い人や子どもらはあまり知らないだろうが、迷っているときはこの言葉を掛けてあげたい

005「むじい」

都城市鷹尾 神脇道子さん(主婦)
標準語の「かわいい」よりも「むじい」と言われた方が相手の気持ちが伝わる。幼いころ満州から引き揚げて、都城市に移り住んだ。当時は周りから話しかけられても言葉の意味がほとんど分からなかった。現在でもはっきりとした意味が分からない方言を聞くことがあり、宮崎弁の奥深さに驚かされる

006「おーきん」

高鍋町上江 坂本康子さん(農業)
「ありがとう」よりも「おーきん」と言われる方が、相手の気持ちがじかに伝わる。声を掛けられると、思わず笑顔になってしまう。母の世代が使うことが多く、懐かしさを感じる方言。声の強弱で気持ちの込め方が異なり、県民以外には意味を説明するのが難しい。宮崎弁には、心が温かい県民性が表れている

007「すいが」

都城市平塚町 永岡武雄さん(無職)
頼み事をした時「おいがすいが(おれがやる)」と威勢の良い返事が返ってくると、すがすがしい気分になる。自衛官だったころは県外生活が長かったが、宮崎弁は抜けなかった。宮崎県出身者と話していると「けんかをしているようだ」と周りは驚いていた。県境で育ったので鹿児島弁の影響も受けていると思う

008「おかん」

宮崎市大島町 柳本芳明さん(無職)
家の前にあり、車が1台が通れるような小さな道路の意味。綾町で暮らしていた幼少時代、「おかんに出っと危ないぞ」と両親からよく注意されていた。故郷を思い出す懐かしい宮崎弁。東諸県郡で耳にする言葉で、今では年配の人しか使わない。宮崎弁はほかの方言と比べると、ものの言い方がやさしいと感じる

009「ゆたーと」

西米良村竹原 黒木定蔵さん(西米良村長)
西米良村では60代以上がよく話す方言で「温泉にいってゆたーとすっか」のように使う。忙しい時代だからこそ「ゆたーと」の精神を大切にして、じっくりと物事に向き合う姿勢が必要と感じる。自然豊かで森の精霊「カリコボーズ」がすむとされる西米良村。県民の皆さん、西米良村にきてゆたーとしてみらんね

010「よだきい」

川南町平田 工藤須磨子さん(無職)
本当に何もやりたくないときに使う言葉で、標準語よりも話し手の気持ちがよく伝わる。より感情を込めるときには、語尾を伸ばして話す。別の言葉では言い換えることが難しいので、県外の人に対しては正確な意味を伝えにくい。前向きな意味ではないが、自分にとっては最も好きな宮崎弁

011「とぜんね」

清武町加納乙 長友能文さん(無職)
古里の都城市では、親やきょうだい、長年連れ添ってきた妻を亡くした人に「とぜんねぐわんそ」と声を掛ける。「本当に寂しいことでしょう」という意味で、言葉の響きに相手をいたわる気持ちが込められている。優しさにあふれた宮崎弁で、この言葉だけで話し手の思いが伝わってくる

012「じゃあて」

日南市今町 澤山玲さん(会社員)
日南市内では、子どもからお年寄りまで幅広い世代が話す方言。基本的には「そうなんだ」と相手の話に同意する言葉だが、声の強弱やイントネーションを変えるだけで、聞き手の疑問や驚きを表す意味に変わる。相手と円滑に会話するには不可欠な方言で、気が付くと口癖のように繰り返してしまう

013「嫁じょ」

宮崎市長嶺 黒木美枝子さん(主婦)
お嫁さんのこと。愛している気持ちがにじんでいる言葉。響きもかわいくて好き。夫はよくしてくれているが「おい」とかで呼ばれているので、自分の奥さんには使わないのかも。「うちん嫁じょが買うてくれたとよ」など、誇らしく思っているときに使う。長男の嫁じょも明るく優しくて、どこにもやりたくない

014「およばん」

宮崎市田野町甲 前田 秀幸さん(農業)
疲れたという意味で、焼酎を飲んだ翌日に「てげおよばん」と言えば、「二日酔いで体がだるい」ということ。相手は「まこつや、そんげ飲まんでよかったっつよ」と言い、笑いが起きる。方言は自分の子どもには伝わらないことがあり、寂しく感じる。だからこそ、めったに使わない方言を聞くと、にこっとする

015「かっごんほか」

三股町樺山 内村ノリ子さん(主婦)
うっかりという意味。最近では高齢者のボランティアで豚汁の炊き出しをしたとき、味噌をするすりこぎを忘れ「かっごんほか」だった。小学校教員だった約40年前、標準語を重視する時期があったが、いまは方言が見直されている。方言は実感がこもり、うなずくことも多い。方言も標準語も両方使えるのが理想

016「だれんごっしな」

野尻町三ケ野山 武ナミ子さん(農業)
「疲れないよう、体に気を付けてね」と、相手をいたわる言葉。仕事で頑張っていたり、疲れている友達にこう声を掛ける。わたしも実家に帰ったときに父からよく言われた。安らいだ気持ちになる。夫と農業をやっているが、お互い言ったことも言われたこともないので、身近な相手には言わないのかも

017「じょきなもん」

宮崎市松橋 黒木由美子さん(介護施設管理者)
幼いころ、北郷町に住んでいた祖母が「まっこち、じょきなもんじゃ」と近所の人と話していたのを覚えている。標準語に訳すと「あの人は頑固な性格だよね」という感じか。自己主張が強く、周りの人の意見を聞かない性格の人を例える時に話すが、宮崎弁ならではの温かさを感じさせる方言と思う

018「のさん」

えびの市向江 鵜木竜二さん(公務員)
幼いとき実家の隣に住んでいた祖母から「のさんやろうけど、がんばれ」とよく言われていた。どんなつらいことがあっても祖母は「将来自分のためになるからがんばれ」と励ましてくれた。「のさん」だけで使うと「つらい、面倒くさい」という否定的な意味になるが、個人的には気に入っている宮崎弁

019「くんね」

宮崎市吉村町 森元清子さん(主婦)
延岡に里帰りすると、すぐにこの言葉が出る。「~してください」とか「ちょうだい」という意味。親やきょうだい、友人など親しい人に頼み事をするときに使う。「そこを掃除してくんね」「そんお菓子ちびっとくんね」など。親しみのある言葉だからこそ、言われると進んでしてあげようという気持ちになる

020「ぬきい」

西都市三納 宮野原清敏さん(無職)
東京都の飲食店で働き始めた35年前、八百屋に買い出しに行った。6月に入り暑くなり始めたので、「今日はぬきいなぁ」と店員に話し掛けると、意味が通じなかった。慌てて「暑いですね」と言い直した。5年間東京に住んでいたが、標準語が話せずに悩んだ時期もあった。今となってはいい思い出になっている

021「よかんべ」

宮崎市高岡町 新町幸子さん(家事手伝い)
私たちが暮らす旧高岡町五町独自の方言なのでしょうか。以前、親せきの子どもを一時預かっていたときのこと。「ちゃんとしなさい」と子どもを注意するときに、「よかんべせんといかんよ」と度々言っていた。しばらくして宮崎市に戻った子どもたちが「よかんべ」と話すと、周囲に笑われたらしい

022「だれやみ」

宮崎市中村西 河野幸生さん(理容業)
晩酌の意味で県内全域で使われる。地域によっては「だれやめ」とも言う。県内の居酒屋やすし店に入ると「だれやみセット」というメニューに引きつけられる。千円前後で飲み物と小鉢、刺し身がセットになっていて、店に入ると思わず注文してしまう。焼酎の消費量が多い県なので、将来残っていく方言だと思う

023「ぐらし」

都城市南横市町 篠原美智代さん(公務員)
かわいそうに、という意味。子どものころ母に怒られて泣いている間、祖母が「ぐらしかねえ」とずっと言ってくれた。自分と同じ気持ちになって考えてくれているようで、とてもうれしかったのを覚えている。77歳の母も悲しいニュースをテレビで見たときなどよく使っている。反射的に言葉に出てしまうみたい

024「げんね」

都城市都北町 柚木幸子さん(パート)
「恥ずかしい」という意味のかわいらしい言葉。「げんねげんねやったがね」のように繰り返すと「ものすごく恥ずかしかった」と強調される。「恐縮する」という意味でも使い、手作りのお菓子をあげたときに、大した物でもないのに「げんねこっちゃどん、ありがとうね」と言われると、うれしく思う

025「~す」

五ケ瀬町三ケ所 菊池俊雄さん(無職)
尊敬の助動詞として「言わ(おっしゃる)」「読ま(お読みになる)」などのように、動詞に付けて使う。どんなわんぱくでも使っていたので、延岡の中学校に行ったとき、ほかの生徒が「先生が来たぞ」と言っていて驚いた。「来らした(来られた)」「行かっさんの(行かれないの)」などの変化をする

026「じゃけんどもよ」

宮崎市下原町 図師庄次さん(無職)
高校生まで住んでいた延岡市内でよく使われていた方言で、標準語では「しかし」という意味になる。相手の話が理解できず、反論するときに「じゃけんどもよ」と続ける。宮崎弁らしい温かさが含まれている方言で、相手を否定するのではなく、相手の意見を尊重したうえで自分の考えを述べるときに使う

027「あしなか」

宮崎市田代町 中武利幸さん(無職)
わら草履の意味で、幼少時代を過ごした旧東米良村(現在の西都市)で使われていた。父親が土間で草履を編んでいた姿を覚えている。当時は遊びに行く子どもから、農作業に出掛ける大人まで草履を履いていた。私が小学校に入学したころから靴を履くようになり、この言葉を使う機会も少なくなった

028「ぼうどう」

西都市茶臼原 安田光壬子さん(無職)
「全部」という意味。「泥棒にぼうどう持って行かれた」などと使う。夫の仕事の関係で全国を転々とし、40年以上離れていた宮崎へ帰ったときに聞いた宮崎弁は、とても心地よかった。「ぼうどう」も祖父母や両親が使っていた。友人が話すのを聞いて「そういう言葉があったなあ」と懐かしく感じた

029「ぼくじゃ」

日向市富高 松田陽菜さん(富島高3年)
テレビで被災地の映像が流れた時、一緒に見ていた祖父が「ぼくじゃあね」と言った。心から「大変だねぇ」と思っている感じが伝わってきた。父の友達には、強烈な宮崎弁を話す人がいて、意味が分からないこともあるが、聞いていてとにかく面白い。これから県外に行っても、みんなに宮崎弁を教えてあげたい

030「おやっとさ」

宮崎市吉村町 海東俊博さん(無職)
別れ際や農作業が終わった後などに相手に掛ける「お疲れさん!」という意味の言葉。世知辛い現代とは違い、互いに情けを掛け合う昔の温かみを感じ、なんとも言えずほのぼのとした気持ちになる。70歳まで過ごした都城市を離れ、宮崎市に移ってきたが、言葉が全然違う。「~ちゃが」なんて使ったことがない

031「びんずるこん」

野尻町三ケ野山 堀之内シゲ子さん(パート)
肩車のことを須木ではこう言っていた。「びん」は頭のことだと思うが、詳しくは分からない。末っ子でかわいがられたわたしは、父によくびんずるこんをしてもらった。延岡出身の母は、初めてこの言葉を聞いたとき、大笑いしていた。言葉の響きがおもしろい。野尻町では「びんずいこ」と言うらしい

032「もぞなぎ」

宮崎市江南 矢野幸代さん(主婦)
「かわいそう」という意味。結婚して、いまは神奈川県に住む娘が学生のころから飼っていた犬が死んだとき、電話先で泣いている声を聞いて「もぞなぎ」と感じた。出身は県北。年に1回ある中学校の同窓会に行くと、みんな方言丸出し。宮崎市では使わない言葉もたくさんあるので、聞いていて懐かしく感じる

033「じゃっとよ」

宮崎市上野町 谷口二郎さん(産婦人科医)
県外から最近戻ってきた娘と「じゃっとよ」という方言の話題で盛り上がった。わたし自身は中学3年から東京に引っ越した。都会では方言を話すのが恥ずかしく、標準語を覚えるのに必死。その影響で今は宮崎弁をうまく話せない。病院のスタッフと方言で話そうとしても「片言の宮崎弁ですね」と指摘される

034「あっさめ」

宮崎市赤江 白坂由香里さん(非常勤職員)
あっさめ(あっち)、こっさめ(こっち)、そっさめ(そっち)、どっさめ(どっち)―。祖母が南郷町の人だったので、県南の言葉を聞くと大好きだった祖母を思い出す。バスガイドをしていた当時、県外のお客さんを案内するときに宮崎弁を紹介していたが、「あっさめ、こっさめ」はかなり笑いがとれていた

035「日向時間」

宮崎市生目台 秋本美幸さん(会社員)
学生時代から仲の良い5人の友達がいるが、待ち合わせの時間を誰も守らない。遅れても「日向時間やね」と言って問題にしない。自分たちだけかもしれないが、のんびりとした宮崎を象徴する〝方言〟だと思う。仕事などに遅れるのは許されないが、都会にはない宮崎の文化として見直すのもいいかもしれない

036「ほっぽほうらい」

五ケ瀬町三ケ所 甲斐楠雄さん(無職)
「めちゃくちゃ、でたらめ」の意味。「がま出せ節(高千穂音頭)」の歌詞にも「高千穂峡の夕さりがた ほっぽほうらい歩いたら」と使われている。宮崎市や県南と県北の方言を比べると、大きな違いがある。わたしが暮らしている五ケ瀬町の方言丸出しで話し掛けると、宮崎市の人たちは理解できないと思う

037「がまだす」

日之影町七折 津隈一成さん(日之影町長)
「頑張れ」の意味で、口癖のように使っている。町内の基幹産業である農林業を盛り上げるため「がまだせ日之影町農林業振興大会」を開いている。農作物の栽培方法などを町民が発表するもので、今年で3回目。中山間地域の特色を生かした農林業を「がまだす」の精神で進め、町の活性化にもつなげていきたい

038「けしんめ」

日南市吉野方 上倉広子さん(自営業)
服の表と裏を間違って着たまま、娘が小学校へ登校した。当時の担任だった女性教諭から「あら、けしんめに着ちょる」と言われた。娘は初めてこの方言を聞いたようで、帰宅してから「けしんめ」の話題で盛り上がった。宮崎弁で授業を進めるユニークな先生で、保護者からみても親しみやすい人だった

039「よかにせ」

木城町川原 永岡さださん(農業)
近くの大規模な農家では、昔から農業を学ぶために若者が働いていた。若者の中には仕事を嫌がって遊び半分で働く人もいるが、まじめで一生懸命に仕事をする男性を見つけると、「よかにせがおる」と地元の人の間で話題になったものだ。男前なのはもちろん、頭が良く、親切で優しいイメージがある

040「てのもそかい」

えびの市向江 西持田まゆみさん(無職)
当時小学1年の妹が「てのもそかい」と近所の人たちのまねをしていた。まちの中心部まで歩いて買い物に行っていた時代。仲の良い人たちを誘って出掛けるときに「一緒に行きましょう」を方言で「てのもそかい」と言っていた。この言葉を妹はよほど気に入ったらしく、身ぶりを交えて口癖のようにしていた

041「せしこうた」

宮崎市東宮 小野幸子さん(主婦)
実家の西都では、台風が来たときなどに「もう、せしこうたが」というふうに使う。本当に苦労した、心底難儀した、ということを相手に伝える言葉。娘の真生(7)に標準語を宮崎弁でどう言うか教えている。「テレビの言葉とはちょっと違って面白い。『せしこうた』は友達には使わない」(真生さん)

042「ぼっけな」

宮崎市瓜生野 大渡京子さん(無職
ぼうっとしている、魂が入っていないという意味。「ぼっけな運転しちょっと事故すっど」などと使う。「ぼけっしちょっかいよ」と言うよりは、「ぼっけなかいよ」と言う方が、ひょうきんな感じで和む。生粋の宮崎人。まだ何も面白いことは言っていないのに、イントネーションを聞いただけで人が笑いだす

043「まつぼり」

椎葉村松尾 山元俊朗さん(松尾中校長)
椎葉村で知人2人と会話していたときのこと。Aさんが「しし肉が取れたからどうぞ」と言うと、Bさんは「まつぼり物をありがとう」と答えた。村内では「まつぼり」は「思いがけなくもらう」の意味。詳しく聞くと、忘れていたへそくりを見つけたときのような、うれしさを表現するときにこの方言を使うという

044「こでな」

宮崎市大塚町 河野通臣さん(無職)
生意気という意味。反抗期に私が大人びた理屈を言ったとき、祖父や母から「こでなこつばっかり言うな」と怒られたのを覚えている。東京で結婚し、妻も神奈川県出身なので、ほとんど宮崎弁を使わずに過ごした。帰郷して約40年。いまでは妻も宮崎弁に染まり、学生のときの同窓会で指摘されるらしい

045「ぶえん」

宮崎市恒久南 日高篤盛さん(無職)
鮮度の良い生魚のことで、妻が幼少時代に住んでいた旧北方、北川町で使われていたという。私が北方町で教員を務めていたときもPTA会長さんが年末「土々呂にぶえんを買いに行く」と言っていた。新鮮な魚が手に入りにくい地域なので、塩を振らなくても腐らない「無塩」がなまって「ぶえん」になったようだ

046「ががつく」

西都市右松 日野光幸さん(無職)
「慌てる」という意味。「飲ん方」で、乾杯が済んでいないのに食事にはしを付けようとしている人に「ががつくな」と使う。子どものころ、いろりのもちを早く食べたくて、まだ焼けていないのに手を出し、父親に「ががつくな」と火ばしでたたかれた。「あわつるな」より厳しく言おうとする気持ちが伝わる

047「しのべる」

宮崎市本郷南方 江藤洋子さん(主婦)
宮崎市田野町で育った幼少時代、大人からお菓子をもらうと「ポケットにしのべとかんね」と言われた。「大切なものをしまう」という意味だと思っていた。だが、宮崎市にある主人の会社の友人らは「片付ける」の意味で使っていたという。大分県出身の主人は、友人の会話を聞いてずっと疑問に思っていたようだ

048「あまめ」

宮崎市山崎町 井野絹子さん(会社員)
義母がゴキブリを指して「あまめが出た」と言い、宮崎市出身の私でも知らない言葉で驚いた。言葉の響きはかわいいのに、実はゴキブリ…。埼玉にいた大学時代、宮崎弁でしゃべるのが恥ずかしく、無口になっていたら、友達が「宮崎弁で話していいとよ」と言ってくれた。友達には「てげ」などの言葉を教えた

049「だれやめ」

宮崎市花山手東 白石知子さん(潮見小校長)
父は毎晩、「だれやめ」(晩酌)をしていた。「だれやめ」は一品おかずが多く、仕事の疲れをねぎらう母の気持ちがこもっていた。父は「ぎょうさん食べなさい」と、その一品を子どもらに差し出していた。戦争を経験した父は、たくさん食べられることに幸せを感じ、子どもらにも分けてやりたかったのだろう

050「よか」

串間市奈留 吉田禮子さん(自営業)
状況によって「いいですね」や「必要ない」「大丈夫」など意味が変わり、県外の人は戸惑うようだ。商売をしているが、取引のある京都の問屋も「10年たってやっと分かるようになった」と言っていた。抑揚なく言われると、串間出身の私でもお客さんに「いる、いらない、どちらの意味ですか」と聞き直すほど


番外編「~ちゃ、~ちょ」

東京都 酒井瞳さん(タレント)
誰かに怒って文句を言うとき「~してたよね」というより「~しちょったやんけ」と言う方が違和感なく、感情が入りやすい。響きも柔らかい感じがして好き。一緒に番組に出演しているメンバーに関西出身の人がいるが、スピード感が宮崎弁と全然違う。何でもない日常の会話でも聞いていて面白く、あこがれる。私も珍しい言葉を使っているのかな。

じゃあじゃあ

ここから先は

13,495字 / 2画像

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?