見出し画像

Xデザインでの学び - #10 新規ビジネス開発とアート思考 -

Xデザイン第10回では「新規ビジネス開発とアート思考」をテーマに「アート思考」「エフェクチュエーション」「ブリコラージュ」「リフレーム」「逆転の発想」について学びます。また講義の後半はリフレームの発想法をベースとしたアイディエーションと銀紙を使った作品制作でした。かなりタイトなワークショップでしたが、時間的制約が逆に良かったのかむしろ思考の取捨選択が上手く行った気がします。引き算は大事ですよね。

アートもデザインも共通の社会課題認識に根ざす

アートもデザイン同様、社会問題に対する認識を基盤とするという指摘。これは見落とされがちかもしれません。ただ表現活動は大体において自己認識と外界のズレの違和感、何か違うぞっていう感覚が出発点になることが多いですし、考えてみればその通りですね。

またアート思考の説明では「ソーシャルアート」が紹介されていました。聞き馴れない言葉ですが、社会課題にアートやクリエイティビティを活かして向き合っていくアプローチです。日本語での検索だと、障害のある人とアートという社会包摂のテーマが多くヒットするようですが、本来はより広義にアートを使った社会問題の提案や解決の為のアプローチ全体を指します。講義ではIn House Recordsという囚人の為の音楽レーベル が紹介されました。これはJudah ArmaniというRCA出身のサービスデザイナーという方による犯罪者の再犯率の高さを解決する為の社会復帰促進の為の事例で、人の持つ潜在能力に着目したサービスデザインとして面白い事例なので、気になる方は下記の記事もチェックしてみてください。

アート表現による社会提案という意味合いでは、Art for Social changeとかSocial justiceといったようなキーワードの方が海外事例が多くヒットします。こちらの方がアートによる社会提案というソーシャルアートの直感的なイメージにより近いですね。バンクシーの風刺的な作品もある意味イギリスっぽい典型的なソーシャルアートですね。

この分野についてはスペキュラティブデザインとの違いについても気になります。スペキュラティブデザインも作家性が強く、独創的且つ内発的な作品が多くみられるので、ソーシャルアートと志向性が近いですね。

ブリコラージュとプロトタイプの時代

レヴィ=ストロースが「野生の思考」で発表した大変有名な概念で「ありあわせの素材を使い、様々なレベルでの細かい差異を利用して本来とは別の目的や用途のために流用する思考方法」という定義されるブリコラージュ。講義ではマルセル・デュシャンの「レディメイド」、ジャン・デュビュッフェの「アール・ブリュット」という現代美術のエポックメイキング的な出来事とレヴィ=ストロースのブリコラージュとの概念の近似性が示唆され、ブリコラージュのデザイン態度としての要諦が整理されます。

ブリコラージュの特徴から「即興」というイメージがまず浮かびました。目の前の状況から出来る最善を尽くす態度、とも言えるでしょうか。ある意味、ITのβ版文化やアジャイルとかスクラムといった現代的な開発手法にも通じるところがありますね。先の見えない時代ならではの発想方法ですし、各人や所属する文化圏としての経験知がベースとなるからこそ生み出せる可能性と捉えられます。ある意味無意識な内面的なものとも言えそうですね。

完成という定義が難しい、プロトタイプの時代にそぐわしい概念だと思います。「野生の思考」は今改めて読んでみたい一冊ですね。

こちらのサイトにある「栽培の思考と野生の思考」に関する整理表も分かりやすいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?