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第4回 おさえておく人や組織(クライアント3)

中国で20年会社を経営し、その後売却した筆者が中国における企業経営に関するよもやま話を綴るシリーズ第四回。

中国で活動を行っている日系企業、中国企業、欧米企業のうち、日本人が立ち上げた会社がサービスを最も提供しやすいのは日本企業であること、ただ時代が流れ現地のオペレーションが現地の人たちによって回されるようになること、市場において日本企業のプレゼンスが下がること等が影響して、最終的には様々な難しい問題が発生する点について前回述べた。

ただ、私の会社が日系企業にサービスを提供し始めた当初はまだまだ日本企業が中国市場に進出し始めた頃でもあったし、以前の記事で書いたように、日本人同士のコミュニケーションの楽さや、安心感で仕事がたくさんもらうことができた。

中国市場に進出している日本企業をクライアントとする場合、日本側の海外事業部と現地法人とでは特徴が異なる。まず予算で言えば、中国市場進出当初というのは日本側が現地法人の面倒をみていることも多いので、予算は日本側の海外事業部のほうが圧倒的に多く、現地法人のほうは予算がとても少ない。感覚的にはゼロが一つから二つ異なるというイメージだ。

例を挙げよう。とある強豪企業のブランドイメージ調査等を実施する場合、現地法人が出せる予算はせいぜい2.5万元(約50万円ほど)が限界で、それでも高いと言われるのに対して、日本側では必要性が認められれば500万円でも支払う。市場進出が落ち着き成熟し現地法人側に経営の主導権が移れば状況は変わるが、にしても概ねこうした市場調査の案件は日本側のほうが予算を多く持っていることが多い。

このように予算だけでみれば日本側を相手にするほうが圧倒的に儲かるわけだが、当然ながら予算に見合うだけの精度やクオリティーが求められるのであり、要望、追加作業、すり合わせのミーティングも非常に多く、拘束時間が長い。何より、データが整っていない中国市場において日本と同レベルのデータ精度を求められることが多いのはサービスを提供するこちらとしても困難が多かったと記憶している。

その点、現地法人は董事長や総経理レベルでも現地の状況を肌感覚で理解していることもあり、多少精度が甘くても、「データが集まるだけまし、むしろよくこんなにデータをたくさん集めてくれた」と喜んでもらることも多かった。そういう意味では予算は少ないものの現地法人はやりやすいお客様ではあった。

予算はあるが求められるレベルが非常に高い(時にはそもそも無理)日本海外事業部と予算は少ないが現地の状況がわかっているので仕事がしやすい現地法人、当初は売上をたてなければいけないこともあり、日本の海外事業部の仕事を多く受けていたが、私個人の考えとしてある時から、中国に来て会社を立ち上げておきながら、日本企業の海外事業部だけを相手にしていてもあまり意味はないと考えるようになり、意図的に現地法人を仕事を増やすようになった。売上の少なさは数でカバーするようにした。

結果的に時代は流れ、現地のオペレーションが現地の人々中心になったときでもある程度までは対応でき、会社を売却するまで生き残ることができたのは、割と初期の段階で現地法人相手の仕事を増やしたことが幸いしたと思っている。どのような顧客と仕事をするかは慎重に見極める必要があるだろう。

ここまで三回はクライアントについて書いてきた、次回からはマーケティングサービス業にとって、クライアント同様に最重要のサプライヤーについて書いていきたいと思う。

つづく

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