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ロセルのOut Of Systemでのインタビュー日本語訳 -How To Block If You Are Undersized ft. Agustin Loser-

 ウォーズリー兄弟、マアの3人で運営しているYouTubeチャンネル『Out Of System』に、Superlegaプレーオフ準決勝の第4戦を控えたロセルに行ったロングインタビュー動画が投稿されました。そこで話されたことを日本語に訳しています。

 ツイッターに上げたものを土台にしていますが、いくつか修正している箇所があります。また、一言一句忠実に訳したものではないので、大体こんなことが話されたんだなというぐらいに読んでいただけると幸いです。
 (ヘッダーの写真はFIVB、Powervolley Milanoより)


1. 東京五輪での銅メダル

ウォーズリー弟:
 今季、そして2年前の東京五輪での銅メダル等、素晴らしい成功を収めている君を迎えられて嬉しく思っているよ。

ロセル:
 ありがとう。東京五輪は最高だった。五輪は初めての経験だったけれど、そこでメダルを獲ることができて、信じられなかった。最後のブロックは一生忘れることはないと思う。

https://olympics.com/en/video/men-s-bronze-medal-match-volleyball-tokyo-2020-replays

 今季も素晴らしいよ。シーズン中盤はあまりよくなかったけれど、最後にはとてもいい仕事ができていて嬉しい。


2. Milanoをよくしているものは何か

マア:
 Milanoをそんなによくしているものは何だと思う?

ロセル:
 自分たちは素晴らしいグループで、みんな友達なんだ。コート外でもよく会うし、とても素晴らしい関係を築いている。それがバレーボールをする時にも大きな助けになっていると思う。自分としてもこの短期間で彼らとこんな関係が築けて嬉しい。パトリィ、石川、ピアノ、ポッロはすでに2〜3年一緒にプレーしているけれど、自分は1年目なので、それでこんな関係を作れているのはとにかく素晴らしいこと。

📷:Powervolley Milano

ウォーズリー兄:
 ピアッツァについてよく耳にするんだけど、彼の偉大さについて取り上げるとしたら何がある?

ロセル:
 チームにたくさんの感情を注いでくれるところだと思う。練習中も常に100%注ぐし、自分たちからも100%のものを引き出そうとしている。そのおかげで練習で200%出せるようになって、それが試合にも生きていると思う。
 また、ビデオやスタッツで他のチームについて学ぶ際に彼は素晴らしく、バレーボールのことをとてもよく知っている。例えば、プレーオフでは1試合だけじゃなく2、3試合から4、5試合プレーする。だからそこでは戦術を持ってプレーすることが必要。1つの試合では1つのやり方でプレーし、相手はそれについて研究してくるし自分たちも相手について研究する、そこで次戦は戦術を変えるかどうかを考える必要が出てくる。ピアッツァはそういうことに非常に長けていて素晴らしい。ここまでのところそれがとてもうまくいっている。


3. フランスリーグvsイタリアリーグ

ウォーズリー兄:
 君とメルガレホは2シーズンをフランスリーグで過ごしてからMilanoに移籍したよね。リーグによる違いや各個人のプレーに違いはあったりする?

ロセル:
 Superlegaはまた別のレベルだと思う。フランスリーグも素晴らしくいいレベルで、すべてのチームが競合している。でもSuperlegaにはベストな選手がいて、どの試合もオリンピックや決勝戦のような感じ。今季は特にそうで、Perugia以外のチームの力が拮抗していたから。それがとてもよかった。イタリアもポーランドも最高の選手が揃っていて毎週末彼らを見ることができるから、各個人のプレーも違うと思う。


4. 背の高くないMBがどうやってブロックするか

マア:
 ロセルはイタリアリーグで小さいMBの1人だよね。最高の選手たちとどうやって戦えている?君が学んだ秘訣や、背の高くない若いMBたちへのアドバイスは?

ロセル:
 バレーボールを始めた時もしくは代表チームに入った時から、自分はそんなに背が高くないことはずっとわかっていた。アタックとブロックのスピードを上げることにいつもトライしていて、そこで少しでも違いを作り出そうとしている。強いサーバーでいいブロックとアタックができる完璧なMBになろう、改善していこうと練習を重ねている。ベストとはどういうものかわからないけれど、昨日よりもよくなろうとしている。ここに来るまでにたくさんの練習を積んできて、とても嬉しい。アルゼンチンではバレーボールは人気のあるスポーツではないので、2年間のフランスリーグとMilanoでの1シーズンを経て今の自分がここまで到達したことは素晴らしいと思うし、犠牲を払いながらこれまでやってきたことを誇りに思う。背が高くないことも背が高くならないこともわかっていたので、自分のスピードを磨いて完璧にしていくことに力を注いできた。


5. アルゼンチンのオフェンスシステム

ウォーズリー兄:
 アメリカにもアルゼンチンから素晴らしいコーチがたくさん指導しに来てくれているけれど、アルゼンチンのオフェンスシステムについて話したい。アルゼンチン代表チームにおけるオフェンスの鍵は何?オフェンスシステムに関してコーチが話すことは?

ロセル:
 自分たちはいつもミスをたくさんしないようにプレーしている。自分も背の高いMBじゃないし他の選手もみんなそう。だからエラーやミスを少なくしてスマートにプレーする必要がある。ボールがよくなければリサイクルを試みたり、チームとしてプレーすることが大事。代表チームには素晴らしい選手が数人いるが、全員がそうなわけじゃない。だからチームとしてプレーしなければいけないし、東京五輪ではそう戦った。それが自分たちにとって唯一の勝てる道だった。ポーランド、USA、ブラジルなんかには彼らと同じやり方では勝てない。でも勝てたのは、自分たちが何をすればいいかわかっていたからで、真のチームとして戦ったから。
 また、自分たちはいつもスポーツにおいて感情的にそして競争的に生きている。サッカーのW杯を見ればわかってもらえるだろう。彼ら全員が泣いていたけれど、自分たちはそうやってスポーツに生きているんだ。そしてそれがいつも自分たちの力になっていると思う。

ウォーズリー兄:
 人々にとってメッシのような存在は他にいないと思う。彼のアルゼンチンにとっての重要さったら。

ロセル:
 そうなんだ。マラドーナも。自分はマラドーナを見ることはできなかったけれど、父や叔父、すべてのアルゼンチン人にとってマラドーナは特別。それと同じ感覚を自分はメッシに覚える。


6. アルゼンチンでバレーボールは人気があるのか?

ウォーズリー弟:
 アルゼンチンでのバレーボールはどう?サッカーが一番なのは知っているんだけど。ブラジルではサッカーとバレーボールがトップ2だよね。

ロセル:
 アルゼンチン人はバスケットボール、テニス、ラグビーの次ぐらいにバレーボールが好き。多分6位か7位ぐらいかなと。

ウォーズリー弟:
 東京五輪で銅メダルを獲った後は国中でお祝いしていたと思うんだけど。

ロセル:
 自分は人口5万人の小さな町の出身で、帰った時は素晴らしかった。大きなトラックで迎えてくれて、自分はそれに乗って、町のみんなが待っていてくれた。故郷を出て10年以上になるから、地元の人たちとのつながりは薄れていたんだけど、すべての町がそうだったかはわからないけれど、みんなが自分のことを祝ってくれるというのはとても素晴らしいことだった。愛を感じることができた。準々決勝、準決勝と進むにつれて、知らなかった人たちと関わりを持つようになったし、テレビで実況を担当したモンテサノがとてもいい仕事をしてくれたんだ。彼のおかげで人々がより試合を見ようという気持ちになってくれた。最終的には他のスポーツのようにはならなかったけれど、自分の町では真の夢を生きているようだった。

📷:アルゼンチンバレーボール連盟


7. 海外でプレーする際のカルチャーショック

ウォーズリー弟:
 アメリカ人がヨーロッパに行くとかなりカルチャーショックを受けるんだけど、南アメリカ人にとってはどう?

ロセル:
 イタリアは言語が似ていて、特に勉強しなかったけれど6ヵ月過ごすうちにどうやって話せばいいかわかるようになった。人々もフレンドリーで。あと、アルゼンチン人の祖先は500年前にやってきたスペイン人とイタリア人だから。例えば自分の曽祖父はイタリア人なんだ。自分たちは似ているところが多いので、イタリアに着いた初日にアルゼンチンにいるような気がしたぐらいで。それはとてもよかった。確かにフランスは言語も違うし人々も違うので、より難しい。

ウォーズリー弟:
 Milanoはいろんな国から選手が集まっている多様なチームだけど、まず話している言語はイタリア語?

ロセル:
 そう、イタリア語。最初イタリア語がわからなかった時には英語で話していたし、みんなが助けてくれた。エバディプールもイタリア語が話せないので、彼と話す時はみんな英語を使う。でも1年経つとチームの全員がイタリア語を話すようになる。あとチームにはキューバ人が2人いるので、彼らとはスペイン語を使うよ。彼らもイタリア語を学んでいるけど、似ている言語だからやっぱりそんなに難しくない。


8. 世界のトップ3ミドルブロッカー

📷:Powervolley Milano

マア:
 今世界のベストMBたちと戦っているわけだけど、止めるのが難しい選手トップ3は?

ロセル:
 まずシモン。次にフラヴィオ、彼のアタックはとても高くて強い。あと自分が弱いのがソレ。彼からたくさんのことを学んだから、彼を3番目に入れなければ。他にもリシナツはモンスター。選ぶのは難しい。みんなそれぞれプレースタイルが違うから。ソレは自分に似ていて、他はみんなモンスター(笑)。

ウォーズリー弟:
 型破りなMBをどうやって止めるの?例えばソレは上体をすごく傾けて打つよね。あれをどうやって止めるの?

📷:FIVB

ロセル:
 あれはとても難しい。以前よりも彼のことを少しわかるようになったので動きを予測しようとするけれど、彼は素晴らしくて、いろんなコンタクトポイントでボールを打つので、どうしようとしているか掴むのは難しくてとても大変。でも自分も違ったやり方であれをする。あれはアルゼンチンMBの特徴的な動き。自分たちはそんなに背が高くないので、ネットで水平線上に跳んで(ドリフトクイックのこと)ブロックを混乱させようとしたりする。

マア:
 水平線上に跳ぶのは誰が最初に始めたの?

ロセル:
 わからない(笑)。いい質問だね(笑)。でも自分はバレーボールを始めた時からずっとソレのプレーを見てきた。彼は代表チームのメインMBだったから。自分が代表チームに加わった時にも彼はたくさんのことを教えてくれた。教わるにはソレはとても最適な人だったし、今では彼ととても仲よくしているよ。

マア:
 すべての秘密をここで打ち明ける必要はないんだけど、ソレが水平線上の動きについて教えてくれたことですごく役立ったことは?

ロセル:
 多分足の動き。アプローチの時にどうやって足を動かさないといけないか、この方向、あの方向へ跳ぶためには足をどこに踏み込むのか。また、ブロックでは、セッターをもう少し精神的にリーディングする方法について。


9. 背が小さいMBとしてのリードブロック

マア:
 リードブロックについて。君は小さいけどどこにでもいるよね。何を見ている?

ロセル:
 最初にボールがどこにあるかを見ようとする。それから、セッターによるかな。ボールがどこに行くかわかりやすいセッターとわかりにくいセッターがいるから。わかりにくいとより難しくなる。でも、リーディングの際に試みていることは、ボールの行方がわかる前に動こうとしないこと。待って、待って、待って… MBがとても速いとより難しくなるけど、リーディングをしている時にはMBのことを考えないように、パイプとポジション4(いわゆる前衛レフト)、ポジション2(いわゆる前衛ライト)のことを考えて、ボールが行くまで動かないようにする。1秒でも無駄にしないように、最終的にいいものにすることが大事。


10. ブロックに関するベストミドルブロッカー

マア:
 ブロックでのトップ3のMBは?ピアノいいよね。ニミルとジェスキーは以前ピアノと一緒にプレーしていたけど、2人とも彼はすごくいいって言ってるんだ。

ロセル:
 うん、彼はすごくいい。素晴らしいMBだよ。彼はいいトーナメントでたくさんプレーしてきて、そんな彼からいろいろと学ぶことができるので、一緒にプレーできて嬉しい。ピアノ、ソレ、ソレはリーディングが素晴らしい。

📷:Powervolley Milano


11. 身体へのケア

ウォーズリー兄:
 君はまだ若いけれど、自分のやることをすべてわかっている。もしバレーボールを始めた頃の自分にバレーボールのキャリアにおいて、コート内でも外でもやっておいてほしいことを伝えられるとしたら、何を言いたい?

ロセル:
 身体のワークをもっとやるようにと。ジムでの予防はものすごく大事だから。最初はバレーボールを楽しんでプレーする、それでいい。でもある時点で何をすべきか教えてくれるフィジカルトレーナーがいる。もっと早い段階から自分の身体についてもっとよく考えられるようになってほしい。なぜなら今、今季、自分の身体のこと、どうワークするかをより学んでいる。自分は今25歳で若いけれど、もっと前からそれをやっていれば今もっとよくなっていたと思うから。

ウォーズリー弟:
 Milanoのような大きなクラブの一員であることは、クールでいいことがいろいろあると思う。

ロセル:
 そうだね。例えばフランスリーグのチームとイタリアリーグのチームの違いとして、彼らがすべてにおいて取りうるプロフェッショナルなあり方が素晴らしい。設備や遠征、ホテルなんかにも自分がよりプロフェッショナルであることを感じられると思う。サッカー選手のように。1つだけ言えるとしたら、そういったいろんなことすべてが物事を易しくしてくれるので、自分はただバレーボールのことだけを考えればよくなる。

ウォーズリー弟:
 時々自分と兄とでチームのユニフォームを全部を洗わないといけないこともあって(笑)。それを会場に持っていかないといけなかったり(笑)。そういうのってすごいうっとおしくって。だからわかるよ。


12. 世界最高のチームにどうやって勝つのか

ウォーズリー弟:
 あともう少しだけ質問を。Perugiaのようなチームとプレーする時、Lubeのようなチームとプレーする時、君にも相手にもワールドクラスの選手がいて、監督がブロックをクリエイトして、セッターを引き出して、石川にハイボールを打たせる、見ていてすごくかっこいい。どうやって5試合かけて徐々にレオンや他のワールドクラスな選手たちを減退させていったのか。特に重要な局面や大事な瞬間に、姿勢やゲームプランがより必要な時に、何を信じる?

ロセル:
 第1戦はそれができなかった、ひどいプレーだったから(笑)。0-3で負けてしまった。でも最初から計画や戦術が多数あって、自分たちの姿勢や感情… 相手チームのように大事なところで個人の選手が助けてくれるような、自分たちはそんなチームではないので、プレッシャーのかかるところでどうやってプレーするか、それがとてもうまくいったと思う。特にホームでの2試合はそうで、どちらも3-2で自分たちが勝った。プレッシャーのもとでとても素晴らしい仕事をした。すごく重要な局面でいい点の取り方ができたのをいくつか覚えている。それが自分やチームにより自信を与え、その自信は試合を重ねるごとに強くなった。Perugiaとの初戦はプレーがよくなかったので、負けた後のチームの感情はそんなによくなかった。でも第2戦をいいプレーをして勝つと、第3戦ではとてもいいプレーを始めることができた。最終的にその試合には負けてしまったけれど、まるで雪だるまみたいにどんどん自信がついていって、最後にはPerugiaのホームへ行って、そこで素晴らしいチームのようにプレーをして、最高だった。レギュラーシーズン中にはできなかったことを、プレーオフでのPerugiaとの最後の試合で成し遂げることができた。姿勢、計画、すべてが混ざり合っていたと思う。

ウォーズリー兄:
 第5戦に向かう前にピアッツァが言ったのはどんなことだった?

ロセル:
 『200%でプレーしなくてはいけない。シーズン中のすべてはこの試合のためにあった。そうしなくてはいけない。彼らはプレッシャーに晒されている。私たちは楽しむんだ。自分たちのわかっていることをやろう』と。

ウォーズリー兄:
 今言っていたことは、重要な局面で大事なことだよね。特にMilanoのような、Perugiaよりも小さなクラブの選手たちがそのことに気づけるように。大きなクラブにはより大きなプレッシャーがかかっている、だから自分たちはただコートに出ていって自由にプレーすること。大事なメッセージだよね。実際に君たちはよりゆったりと自由にプレーして、相手コートにより緊張感を与えられていた。見ていて本当に素晴らしかったよ。

ロセル:
 今戦っているLubeとの第4戦も自分たちのホームであるんだけど、彼らに今プレッシャーがかかっている。自分たちはファイナルへ進むことができるが、どうなるかわからない。彼らには負けられないというプレッシャーがあり、自分たちは楽しまなければ。そしてファイナルに到達できたらとても嬉しい。


13. Yuki Ishikawa

ウォーズリー弟:
 最後にもう1つだけ。さっきメッシがアルゼンチンという国にとってどれだけ重要か話したよね。そのスモールバージョンだけど、君のチームメイトの石川は日本で大大スターだよね。会場にはいつも日本人がたくさん観に来ているの?そして彼に熱狂しているのか、イタリアではそうでもないのか?

ロセル:
 うん、クレイジーだよ。わからないけど、会場の20%かそれ以上の観客が彼を観に来ている(に驚いて目を見開くマア(笑))。すごいよね。彼はとても情熱を持った素晴らしい人なんだけど、試合後に30分〜1時間は残ってファンとの記念写真やサインに応じているんだ(に再び驚いて目を見開き「ほほほぉ」と感嘆するマア(笑))。ロッカールームでは自分は彼の右隣なんだけど、彼はいつもファンからのプレゼント、チョコレートや食べ物等いろんなものが入ったバッグを持って戻ってくるんだよ。素晴らしいよね。そうだね、彼はスーパースターみたいだね。

📷:@fujitv_volley1

ウォーズリー弟:
 すごいね。

マア:
 それは知らなかったよ。

ウォーズリー弟:
 次またそんなファンにとってもビッグマッチを迎えるね。Superlegaプレーオフ準決勝第4戦、リーグ連覇中のLubeに2-1と準決勝シリーズ王手をかけているMilano。Milanoを応援しているよ!ホームでの試合後には石川はきっとよりたくさんのバッグを持ってロッカールームに帰ってくるだろうね!