現代短歌練習16

物言わぬ画面の向こうため息を感じて知らぬふりする夜更け

怠けずに働きなさい分かってるけれど響かぬ上面の笑み

心臓の内側に棲むヤマアラシ日曜の夜もぞりと動く

骨折をすれば信じて、いやいっそ次は死ぬから忘れておくれ

あと八日削る命の残高を次の生へと持ち越せたなら

白線を踏む遊びをば今してて落ちたら終わり火葬の許可を

深夜目を覚まし母の香手繰り寄せ早く私を迎えに来てよ

やかんから漏れる嗚咽と湯気があり油汚れのタイルに手形

口紅とリップクリーム替えましょう心かさつき命を嘆く

額縁を肌身離さず持ち歩き死に場所くらい自分で決める

くるくると回る木馬のいずれかに養母の幻反故の約束

職業は不信養殖業者です仮の姿は市職員です

活きのいい鬱の女が今日もまた期待に添えず生き恥晒す

目障りな機能亢進すぐ止めよ我の余白に誰かを入れよ

手応えのない気持ちだけ打ち込んだスマホは糞だでも捨てられぬ

神様がクーリングオフ訴える殺す順番間違えたって

普通ってそんなに偉いことなんかストレスチェック飛び蹴りしよら

才能の才の字わざと片仮名にその違いには誰も気付かぬ




しんどいときほどことばが溢れてきて嬉しい悲鳴が上がる。でも胃の辺りがきゅうきゅうするよ。生きてる実感する。

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