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アオイコイ

【優しさからくる嘘って、すごく綺麗で、残酷だと思う。】

恋で誰かを傷つけた
私が誰かを傷つけた
それだけで「恋」はしないと決めた

君はいつだって私の涙に気づいてくれた
真面目な私を泣かせるのはいつも君だけど
笑わせるのも君だった

運動が苦手だけど君がドッジボールをするから
私たちは雨に打たれながら笑いあった
私の作ったすごろくで君が笑ってくれるから
すごろくの数はどんどん増えて

でも私が君といて誰かが傷つくのを知った
そして君が誰かといると私が傷つくのを知った
だったらもうこんな気持ちいらないと
投げ捨てたのは確かに私だった

爽やかで透明な恋だって
二人海で笑いあうような
私がしてるのは恋じゃなく
醜くて汚い「嘘」なんだよ
嫉妬と憎悪にまみれてる
「ほらまたあの子だよ」
私が誰かを傷つけるなんて
そんなの私が許さないんだ

「ほらまたあの子だよ」
「先輩奪ったんでしょ」
「サイテーだよね」
「男好きとかキモ」

初恋を忘れた私とあの子
いつしか恋は汚れていた
「好きだよ」それを伝えるだけで
誰かが傷つき 私は悪者になって

理性に押しつぶされていく
本能のままに生きられたら
夢の中では笑いあうよ
私はもう弱くはないの

「こんにちは、××さん」
「今日は天気がいいね」
「そういえばあの時の返事だけれど」
「やっぱり私は君が嫌い」

恋は嘘に変わり
また誰かを傷つけていく
それでもほかの誰かが笑う
この嘘がいちばん幸せだと

「ほんとは好きだよ」

言えなかった たった一言は
夢の中で繰り返すだけ

ふたり 海辺を裸足で歩いて
おもむろに腕を引きキスをする
甘いキャンディみたいな恋
波の音で消えていった

ひとり 海に飛び込んで
これが人魚姫の罪だというの
苦いチョコレートみたいな嘘
彼女の鼓動は消えていった