月の下でテルヲが見た夢

いつもは録画しておいて夜遅くに見る『おちょやん』。今日は千代の選択が気になって早々と見てしまった。

テルヲに思いの丈を吐き出させてあげて、トータス松本さんに一世一代の見せ場をつくり、最後は地獄のテルヲさんに酒盛り。千代は許すとは言わなかったけど、親子であることは認め、暗い地獄への道をゆくテルヲを月になって照らした。

優し過ぎると思う。甘すぎると思う。

このドラマ、ものすごくたくさんの人が見てるんでしょ。それこそ、子どもを自分のものとしか思っていない非道な男に人生を狂わされた人もたくさん見ているわけで。今までだったら、ドラマの中の妻や娘や家族は許していたかもしれないけれど、もう、テルヲのような親を肯定するようなストーリーにしてはいけないと思う。

その気持ちは変わらないけれど、途中ではっと気づいた。

そうか、これは、テルヲが最期に見た鶴亀家庭劇の劇なんだ。

そう思えば、出来過ぎな展開も納得できる。シリアスなやるせない話でも、こうやって面白おかしく、みんなを楽しませるのが娯楽劇の真髄だから。

でも、テルヲのことは許してないよ。許してないけど、最期の酒盛りの場面はちょっと楽しかった。音楽も入って、ブラックだけど「地獄への行進」をみんなでお祝いするようで。千代の人生からテルヲが退場して心からよかったと思うし。題15週のタイトル《うちは幸せになんで》もとってもいい。

うん、やっぱりこれは、テルヲの見た夢だ。
千之助さんにならって、地獄のテルヲに盃あげときまひょか。

留置所? での場面。杉咲花さんの演技がとてもよかった。でも、私だったら、二人を向き合わせない。千代が背中を向けたままでの会話になったらよかった。ヴェンダースの『パリ、テキサス』みたいに。監視の人の演技がよかったです。

でもさ、テルヲは、千代が女優になっていなかったら、ここまで執着しただろうか。ヨシヲのことは心配じゃないの? その場しのぎで調子いいことばっか言って。

トータス松本さんだから見ていられたけど、同時に、それはうやむやに笑いにしてしまうズルい演出だということも書いておきます。それが娯楽や、と言われたらそれまでだけど。

違うドラマだから較べられないけれど、『スカーレット』の川原喜美子(戸田恵梨香)もどうしようもない父親に振り回されていて腹立ったけど、静かに主人公の人生から退場して行ったのはよかったなと改めて思う。

もう一つ。一平がテルヲの写真を撮る場面もよかった。テルヲのことだから、写真に残してほしかったんだと思うけど。でも、写真になると退場していくんだと思うと、少しせつない。

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