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配信で『アルカンシェル』花組千穐楽を

配信で『アルカンシェル』花組千穐楽を見ました。

せめてこれが『アデュー・マルセイユ』のようなショーとの二本立てだったらまだ納得できたけれど…。なぜ一本物にしたんだろう。少なくとも小池修一郎さんは「できる」と思ったのですよね? このストーリーで。全く理解できない。

タイトルと設定を見た段階で、トリュフォーの『終電車』やジョゼフ・ロージーの『パリの灯は遠く』あたりの映画を想像した。小池さんが参考にしていてくれていたらいいなと思っていたのだけど、いつもどおり、厚みのない小池修一郎オリジナル作品だった。

レビュー場面はきれいだったけれど、その時代を表現しているだけのナンバーなので、オリジナルのショー場面を見る楽しさはない。植田紳爾の『レビュー交響楽』を思い出した。ドイツの兵士を個人としてストーリーに組み込むのなら、もう少し内面に踏み込んでほしい。描き方が類型的だし、登場人物も書き込まれていなくて魅力に欠けた。心を動かすセリフもない。トロフィーとしての女性を求める適役が出てくる話はいい加減うんざり。本当に残念。

そんなガッカリ感の中で始まった、柚香光サヨナラショー。こちらはすばらしかった。

メドレーにせず、一曲一曲にその時の衣装で登場した。選曲もとてもよくて上品。構成がとてもよかった。ナンバーは多くないけれど、クール・ビーストまで登場して、さすがれいちゃん、センスがいい。

幕が開くと、『はいからさんが通る』の少尉が大階段に立っている。あれは最高でした。サヨナラショーだと時間と場面の制約があって、衣装はショー仕様になることがほとんどだけど、れいちゃんは衣装もメイクも完全に少尉として登場した。でも、紅緒さんはいなくてたった一人。椅子に置かれた紅花のブーケを手にして銀橋を渡っていく演出にもぐっと来た。

まだ記憶に新しい『二人だけの戦場』の場面を永久輝せあさんと見せてくれたのもよかった。こういう心が見える場面が芝居にもあったらなと、また思う。そして、2つの旅行鞄を見て思い出すのはやっぱり水美舞斗さんのこと。

水美舞斗さんが登場しなかったのは残念だった。
過去には、『戦争と平和』で退団した榛名由梨さんのサヨナラショーに、他組のトップスターだった剣幸さんが特出して『風と共に去りぬ』の「ナイト・アンド・デイ」を踊ったこともあった。できないことではなかったと思う。水美さんは同期からのお花を渡してくれたけれど。

そこにいない人、できない場面のことばかりを思い出してしまうサヨナラショーでもあった。そんなせつなさもあって、ことさらすてきに感じたのかもしれない。

柚香さんの大劇場最後のあいさつは黒燕尾姿。手にしたお花もとってもきれいだった。名前はわからないけれど、真ん中に金色の王冠のように光りかがやく花が二輪。名前のまんま。何か意味があるんだろうか。聞いてみたい。

いつもながら、「青春のすべてをかけた」ということばを聞くと胸が痛む。ファンにとっては大劇場の千穐楽って、東京にはない特別な感動がある。壮一帆さんのあの日を思い出しながら。いろんな行事ができていたらいいなと思う。

大劇場の卒業、おめでとう。東京で観るのを楽しみにして。

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