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J1残留まで、あと3つ――強気強信強愛で!

勝った! 勝った! 勝った!

 2019年11月23日
 J1 第32節 北海道コンサドーレ札幌×ジュビロ磐田

 後半90分+7分 アディショナルタイムでの荒木大吾の劇的PKで!
 大逆転劇!
 勝点3をもぎ取った!
 勝った! 勝った! 勝った!(ゲンかつぎで3回)

 前半26分には、山本から松本、藤川と、トリッキーなパス回しから、アダイウトンが難易度の高いシュートを決め、先制点をあげた。待ちに待ったゴール。歓喜を味わった。

 しかし、後半には苦しい時間が待っていた。攻める気持ちは見えるものの、ほんの少しズレているようでうまくいかないのだ。

 このまま90分。あと少し。なんとか持ちこたえてくれ。

 しかし、そういう時間にめちゃくちゃ弱いのがジュビロ。そして、それをみんなが知っている。

 そういう気持ちが呼び込んでしまうのか、後半43分――コンサドーレの福森が蹴ったコーナーは、ペナのやや後ろめ、中央あたりに放り込まれ、深井にきれいなヘディングを決められてしまう。ううう…。

 心に突き刺さる一発だった。

 この試合に勝たないとジュビロが「J1に残留」する可能性はほぼなくなるという状況。「ついに、このときが来てしまったか」と、半ば覚悟をした。見ていられなくて、本気で近所を散歩してこようかと思った…。

 思いとどまったのは、選手たちが諦めていなかったからだ。

 今シーズン――追いつかれ、焦りまくり、絶体絶命な状況を自ら作り出し、自滅した場面を何度も見てきた。でも、この日のジュビロは違っていた。

 川又堅吾が必死でボールをチェイスする姿は勇気だった。闇雲に走り回るのではなく、みんなが可能性を探してクールにプレーしていた。必死な中にも冷静さが見えた。それが、荒木大吾のPKでの得点につながったのだ。

 いい勝利だった。
 勝って3ポイントを取るのは本当に素晴らしい。ま、順位は変わっていないし、相変わらず「絶体絶命」ではあるけれど、わずかでもJ1残留の可能性が残っているどころか、前節より前を行くチームに近づいているんだもの。勝つってすばらしい。

 のぞみはまだつながっている。

チームの成長を見る愉しみ

 とはいえ、圧倒的危機的状況なことに変わりはない。

 コンサドーレ札幌戦には勝ったけれど、次節は、勝点3を取らないと、その場でアデュー。勝点3を取ったとしても、湘南が勝てば「J2へ降格」だ。
 自動昇格はない。最終節で松本山雅と湘南を抜いて16位に立ち、J2を勝ち抜いたチームとプレーオフで残留/昇格を争うのが、唯一の残留コース。
 自慢じゃないけど、崖っぷちエリアの本当に崖っぷち、きわきわのところに立っている。

 なのに、フベロ監督が就任してから、試合を見るのが楽しくてたまらない。こんなにギリギリ追い込まれてなお、試合を見るのが本当に楽しいのだ。なんだろうね、このドキドキするような高揚感。

 もう吹っ切ったからかな。

 来シーズンをJ2で戦うかもしれないことは、とっくに受け入れている。それくらいに、今シーズンは早いうちから大きな負債を抱え込んでしまったのだ。

 試合を見ていても、ミスばかりが目に付いて、選手一人一人の力が足りないように見えた。戦術も見えなくて、チームが同じ絵を描こうとしていないと思った。監督と選手たちの間に見えない壁があるのも感じた。ジュビロを応援する気持ちに変わりはなかったけど、サッカーが面白くて好きになったのに、ジュビロのサッカーに魅力を感じなくなっていた。それが最大のストレスだったのかも。

 それが、もう遠い出来事のように感じる。いまは、順位のことはさて置いて、試合を見るのがシンプルに楽しい。

 スタメンを見て、自分の見立てと違うことがあっても、「おお、そう来たか」と思う。監督の采配を、選手一人一人を信頼できるのがうれしい。試合ごとにチームが出来上がっていく過程がわかる。それを見るのが楽しい。

 こういう成長の愉しみって、そういえばジュビロの試合で体験したことなかったな。応援するようになったのは最強の時代だったし。
 うん。得がたい感覚。

 フェルナンド・フベロ監督のおかげです。

 フベロ監督は教師の経験があるらしく、根気よく「教える」ことに長けているのかなと思う。そのワイルドな風貌から、激高するような熱さを想像していたのだけど、試合後のインタビューを見ると、厳しい試合の後でもとてもクール。淡々と最良のコースを探しているように見える。

 選手の選び方とか、ちょっとフィジカル重視かなと思うものの、それが現代サッカーの潮流だし、まさにそこがジュビロに欠けていた部分だと思う。それはピッチ上の選手たちの成長ぶりを見れば明らかだ。

 チームが新しいサッカーを始めているのだと思うと、本当にわくわくする。私たちは、試合でその経過を見ることができる。そこには、チーム作りの現場に立ち会っているような楽しさがある。だから、絶体絶命の状況に合っても、試合を見るのがこんなに楽しいのかもしれない。

 そして、チームが新しくなっていく現場を見る楽しさは、J1でもJ2でも変わらない。だからだろうか、たとえ来シーズンから下のカテゴリーで戦うことになっても、それはそれで面白いかもしれないという気持ちになったのは。

Believe. 「信じる」ことが力になる

 もちろん、奇跡のように勝ち続け、J1に残るのが最良のシナリオだ。

 だからこそ、ゆるサポ一個人としては、「絶対勝点3!」とか「絶対残留!」というような高圧的なフレーズで選手たちに圧をかけていく応援だけはしてほしくないと思う。

 すでに追い込まれている選手たちをさらに追い込んでも、いい結果が出るとは思えない。「磐田の誇りを胸に」というフレーズも忘れてもいいくらい。

 もちろん誇りを捨てる必要はないけれど、それは一人一人の胸に刻んでおけばいい。こんなギリギリの状況下でできることは、チームと選手を「信じる」ことぐらいではないだろうか。

 たとえどんなことがあっても、応援する気持ちに変わりはない。
 どんなときもチームと選手を信じて、どこまでも進もう。

 そう選手たちに伝え、信頼して試合を託し、愛をもって応援する。
 静岡の「ぬくゆるい」土地柄(笑)を考えても、そのほうがのびのびと戦えると思うのだ。

 ホームが鬼門なんていう、サッカー世界的に非現実的なことが起こってしまうのはなぜか。それはサポーターが考えなくてはいけないことだと思う。

 「強い磐田を見たい」という気持ちが、選手に対する圧力になってしまってはいないだろうか。選手たちに対する信頼が足りないか、伝わっていないということはないだろうか。無意味なプライドが、相手チームを格下と捉えさせてしまってはいないだろうか。

 そんなふうに考えるようになったきっかけになったのが、第28節 横浜F・マリノスを迎えてのホームゲーム――スタジアムで聞いたマリノス・サポーターの応援チャントだった。

 スタジアムで観戦する楽しみのひとつは、相手チームのサッカー、そしてサポーターの応援スタイルを見ることだ。そこから気づかされることがとても多いのだ。

 マリノス・サポーターの応援は、横浜という街の雰囲気そのままに、スマートでセンスがいい。誰でも受け入れてくれるようなウェルカムな雰囲気があり、メリハリがあってカッコいい。
 『レ・ミゼ』の「民衆の歌」だって持ち歌にしていて、ミュージカルに出演している役者さんたちが応援に来て歌ってくれちゃうこともあるのだ。その資金力も含め(笑)、めちゃくちゃいいな、うらやましいなと思う。

 そのマリノスのサポーター席から後半になって聞こえてきたのが、このチャントだった。

 《世界の果てまで 俺たちは共に
  勝利を奪え おお横浜》

 アウェイ限定のチャントみたいだけど、「世界の果てまで」って、そんなところに行っちゃっていいの? と、最初は違和感があった。
 でも、そこに引っかかって、考えているうちに、最高のフレーズに思えてきた。

 だって、「たとえそれが世界の果てであろうと、どんなところへも、共にゆこう」って言ってるんだよ。「勝とう」とか「勝ち続ける」とか「チームの誇り」とか言うより前に、まず、自分たちは「どこまでも共に行く」と、チームを全肯定してる。信じている。それって、最大級の愛と信頼の表明なんじゃないだろうか。

 ダイバーシティ的な考えからいっても、とてもいい。マリノスめ、伊達にトリコロールカラーにしていないな(もちろん、ほめています)。

 地域性やチームカラー、クラブのコンセプトもあるから、マリノスのやり方を目指せと言いたいわけじゃない。ジュビロには、家父長制的なサッカー、チーム作りから脱却し、監督であれ、選手であれ、カリスマ的な存在に依存し過ぎることなく、一人一人が考え、強い意志を持って戦えるチームを目指してほしいと思っている。
 やや話がそれているけど、フベロ監督は、そういった時代や社会にも沿ったサッカーを意識しているように思えて、そんなところも好ましい。この体制は始まったばかりだから、まだ答えは出せないけれど。ともかく、そんな視点からも今後のチームづくりを愉しみに見ていきたいと思う。

 選手たちが試合ごとに成長のあとを見せてくれるにつれ、フベロ体制もサポーターからの信頼を得ているように感じ、それがうれしい。札幌戦前のものだけれど、こんな記事が出たり、DAZNでもよく抜かれるようになったしね。

 フロント陣も、よく決断してくれたと思う。シーズンの後半になって、チームを再構築し、プレースタイルを変えようなんて簡単にOKできることじゃない。
 だからこそ、クラブとして、まだ結末の分からない今のうちに、フベロ体制の来季の続投を表明してほしいところ。「信頼」を表明する、とても意味のあることだと思うから。

 さて、そんなわけで、いよいよ来週30日は、名古屋グランパスを迎えてのホーム最終戦です。この試合はスタジアム観戦するので、めちゃくちゃに気合い入ってます(笑)。

 J1残留まで、あと3つ――グランパスに勝って、最終節の神戸にも勝って、プレーオフにも勝つ。
 と、チームの目標はとてもシンプル。とはいえ、雑念が入り込むのはいいことではないので、選手たちが目の前の試合だけに集中できるようになればいいなと祈るばかり。監督、スタッフ、選手たちを信頼して。

 そして、次節はホーム最終節でもある。
 選手たちには、サポーターにつらい思いをさせたなんて考えてほしくない。ただ、次シーズンに「繋がる」プレーを見せてくれたら、もうそれでいいです。いろいろいろいろいろいろあったシーズンだから、大掃除になるような気持ちのいい試合になりますように。

 ホームが鬼門? ホームで勝ててない? そんな記録は断ち切りましょう。

 応援するよ。強気強信強愛(強い気持ち・強い信頼・強い愛)で。

【参考】
小沢健二 「Believe/文学のテクノロジー」「強い気持ち・強い愛」



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