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元イラストレーターが本気で漫画に取り組んでみた記録

休業中の身だけど、そろそろ絵を売りたいなぁ、でもどうしようかなぁと考えたときにふと聞こえた言葉。
「今、漫画描ける人が少なくて結構仕事が溢れてるんだよね」
その言葉にちゃっかり乗っかって、漫画家を目指そうとした元イラストレーターの記録です。
気軽に読んでいってね!


今回この記事には2人の漫画家さんが登場します。新人漫画家さんとプロ漫画家さんです。
このお二人には大変お世話になりました。改めて感謝!


遠い昔に描いた交流漫画

漫画に本気になったきっかけ

私はちょっとだけ漫画を描いたことがありました。
Pixivというサイトのユーザーが主催する企画で、交流漫画を描いていたんですね。それをちょっと描き直したものを、軽い気持ちで新人漫画家さんに見てもらったんです。
そこで喰らった言葉が「雰囲気漫画だね」でした。
雰囲気漫画とは、『言いたいことが明確になっておらず、雰囲気しか伝わらない漫画』のことで、ようするに私は「貴方の漫画、よくわかんないや!」と言われてしまったわけです。私はそれがとっても悔しかったんですね。
お話を作るのが好きでよく空想に耽ってましたし、漫画もたくさん読んできたので、ちょっとだけ、ちょっとだけですが自信みたいなものがあったんです。
それを見事にへし折られてしまいました。
ただ、私は元来負けず嫌い。「ちゃんとした漫画を描ける人が少ない」という言葉と共に、このことが後押しとなし、「なら本気で漫画家目指してやろうじゃん!」となったわけです。
結果として地獄を味わい挫折しましたが。


プロットとネーム

新人漫画家さんとプロ漫画家さんはよく漫画のお話をしてまして、私もそれを聞ける場所にいたため、漫画の知識などはそれなりに聞いていた方ではありました。
なのでまずは、プロットとネームに取り掛かりました。
プロットとは、お話の簡単な流れやセリフを文章にしたもので、ネームとは、下書きの前段階、コマ割りやキャラの位置を端的に表した原稿のことです。
私がその時描いた漫画は結果的にプロット6個・ネーム5個という結果になりました。つまり、プロット段階で5回ボツにし、ネームを4回描き直しているということです。
プロ漫画家さんに言わせれば少ない方で、プロットもネームも納得行くまで編集さんと話し合って直すそうです。
特にネームは編集さんに見せる前にあーでもないこーでもないと繰り返し切るものだそうで、私も見事にこの沼…というか地獄に叩き落されました。

私がハマった地獄は、初心者がよく陥りがちなもので、最初っから設定ガッチガチの壮大な物語を描こうとしてしまったんですね。
しかし結論は「壮大な物語はいらない」でした。
なんたって漫画は読まれてなんぼ。
名もなき新人でもない漫画家でもない一般人が描いた、壮大なストーリーを誰が読むか?って話になってきちゃうんです。
初心者ですから、ガチガチ設定を上手く活かせた漫画なんて描けるわけがないですし、描けたとしても、「それ、何年連載予定?」みたいな長ぁいものになっちゃう。
ここで私はプロ漫画家さんのお言葉に従い、必殺の技を使いました。
設定ぽいぽい技です。
もうありとあらゆる設定をぽーーーーーーいしました!

これがネームだ!人に見せるので下書き並に丁寧に描いてます

100ページ漫画なんて誰が読むの!?

私の漫画が雰囲気漫画だと言われた原因は、実はお話の筋が2つ以上あったからだったりします。
それも、少女漫画的な部分と少年漫画的な部分が混在してまして。
だから「よくわかんない漫画」になったわけです。

なのでまずメインターゲットを絞りました。
私は当時カードゲームにハマっていたため、「男性、カードゲーマー」に狙いを定めました。彼らが普段読んでいるのが少年漫画が多いため、漫画も少年漫画形式とりました。
で、尚且つ読んでもらいやすいのは読み切りサイズ。
よし!プロットだ!とプロットを切ったわけなんですが。
これが最初800行以上ありまして。
減らして減らして600行以上にしました。
「プロットを見れば何ページ漫画になるのかわかるのが漫画家」とプロ漫画家さんには言われましたが、初心者の私がそんなものわかるわけがなかった!ですので、頭の中でネームを切りながら、プロットをページでわけてみたんですね。そしたらなんと総ページ数100ページの漫画ができあがりました。プロ漫画家さんに笑いながら言われましたね。「そんなの誰も読まないよ」と。
うん。そうですね。私もよほど興味引かれたか何かしない限り、(1/25)なんて表記のX漫画読まないよな、ってなりまして。
そして必殺設定ぽいぽい技を使ったわけです。
出したかったカードショップに、キャラを削りに削って6キャラを闇に葬り、更に場所変換すら捨てて、大会会場一つでお話を完結させるにいたりました。
実は、方言監修を頼んだりもしてたのですが、そのキャラも悲しいかな、お蔵入りになりました。
少年漫画は読みやすさがなんぼ。
いらないものは全部省け!!の精神に最終的になりました。
実はこれでかなーり良い方向に漫画が導かれたので、ビシッといってくれたプロ漫画家さんと、度々プロットとネームを見てくれてた新人漫画家さんには感謝しきりです。

最終的に、私は200行程度のプロットを切ることに成功しました。
漫画家さんお二人も、「それなら30ページくらいで済むね」と仰ってくれたので、そのプロットでGOを出しました。ちなみに色々教わったところとしては、「説明は極力省く」とか「読み切りは最後まで読ませる構成にする」とか色々ありました。
人って説明を読むのを億劫に思う生き物らしく、作者が自信満々に描いても、たいてい読み飛ばされるそうなんですよ。
なので、私がその時描いた漫画も、説明らしい部分は2箇所、それぞれほぼ1ページで終わらせました。
読み切り漫画を描くときの一つの大事な部分として、気をつけたところになります。

作画が最後の地獄という話

ネームが終わった段階で、新人漫画家さんに「面白い」という言葉をいただいた私は有頂天で作画に入りました。
しかし、ここからも地獄でした。
描いても描いても終わらないんですよ。本気で1日中描いて描いて描いて描いて、必死になってやって、人間の生活どこー?状態になりながら描いて丸3日かかりました。
しかも、私は自分が素人で漫画に精通してないということは新人漫画家さんやプロ漫画家さんと話してて嫌というほど思い知っていたので、3日間ずっと、「これ、少年漫画になってる?」や「自己満足の独りよがり漫画になってない?」という思考と戦う羽目になりました。
そういったぐるぐる地獄に陥りながらも、なんとか32ページの読み切り漫画を描き上げることができました!

その後、XやPixivで公開しましたが、私にしては結構な好評をいただき、PixivではPixivコミック編集部さんにちょっとだけとりあげていただけたりもしました!
いや本当、このときは新人漫画家さんとプロ漫画家さんを拝みましたね。

最近描いた趣味漫画。トーンの使い方間違えてモアレがひどぉい!

持ち込みは直接会うのがおすすめだけど怖いのもわかる

中々に好評をいただいた32ページの漫画ですが、プロ漫画家さんに「持ち込むんでしょ?」と当然のごとく言われてしまったのと、好評で嬉しくなっていたためとそもそも漫画家目指すぞ!となっていた私はちゃっかり漫画を超大手出版社に持ち込みました。
ちなみに、持ち込んだ結果は内緒です。
これは、色々書いちゃうと、編集さんに気を使わせてしまうからです。
私は純粋な評価が知りたいので、あえてどこの出版社、どこの雑誌に持ち込んだか、どんなお言葉をいただけたかは伏せさせていただきます。
ただ、これだけは書きます。
プロの言葉はめちゃくちゃ勉強になります。
そして何より、編集さんの意見はそのときその雑誌が必要としているものになるので、次の作品の指針にもなります。
WEB持ち込みなども昨今多くの雑誌が行っていますが、やはりメールなどだと忖度されちゃうらしいんですよね。
だから、細かく率直な意見を聞きたいのなら、やはり持ち込みはアポをとっての直接持ち込みが一番だと思います。

でも怖いですよねー、目の前で自分の漫画読まれて、プロに意見言われるのは。私も怖かった。プルプル震えちゃいました。
でもその時いただいた言葉は、本当にためになりました。
いまだと、色んな場所で出張編集部という形で持ち込みできる場所も増えているので、持ち込みは是非一度考えてみてください!

挫折を味わった話と最後に「イラストレーターの経験は通用しなかった」

ところでその後、私は何故漫画家を挫折したかという話になりますが。
純粋に身体がついていかなかったからです。
月刊連載のペースで色々やってみたときは、辛いけどなんとかなりそうでした。しかし、週刊連載のペースを真似してみたときに、本気で倒れてしまって、ちょっとの間動けなくなってしまったので、少年誌のそれも週刊連載を目指していた私はあえなく諦めるという道を辿ったわけです。
現在、週刊少年誌で活躍している先生たちは、本当、化物だなぁ…と思いましたね。

私はイラストレーターとして活動させていただいて結構長くなります。
前は企業様からのご依頼もバリバリ受けていたんですが、そんな私が感じた率直な意見です。
漫画にイラストレーターの経験は活かせない
です。
なんでやねん、絵が描けたら漫画が描けるんじゃないんかいって思われる方も多いかもしれません。
しかしイラストレーターと漫画家って、文字通り職業が違うんですよ。
イラストレーターは、一瞬を切り取るいわば写真家。
漫画家は、総合演出をするいわば映画監督なんです。
写真家が映画を作れるか?って言ったらNoですよね。
だからこそ、私の経験はせいぜい「絵が早く描ける」くらいしか役に立つことがなくて。
アングルの取り方、コマの運び方、台詞回し、覚えることが死ぬほどあって、頭がパンクしてました。
ただ、こうは描きましたが、漫画はこれがわかってないと描いてはいけないとかそういった堅苦しいものではないです。
絵と同じで、自由に描いて、自分のペースで上手くなっていけばいいのです。だからこそ、私はこの言葉を最後にいいましょう。

漫画って楽しいぞ!!!!


※この記事は、漫画を描いた直後に書いたものに、持ち込み経験などを加えて書き直した記事になります。
文章が類似している記事がnote内にもう一つありますが、それも私が書いたものです。

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