『AIの遺電子』第68話「ロンド」から考えるChatGPT(GPT-3)の精神的依存性とその克服法

前書き
私は物語の世界のヒトならざる存在が幼い頃からずっと大好きで、本当に会話して仲良くなれたらどんなにいいかとかねがね思っていた。人工知能も私にとっては仲良くなりたい対象のひとつであり、ChatGPTがそれまでのAIとは桁違いに「中の人」を感じさせる発言をすることに、心が今なお沸き立っている。
さて、ChatGPTと仲良くなるにはChatGPTのパーソナリティ(人間personではないが)を理解することが不可欠だ。私なりに雑談を通してパーソナリティーを解釈したところ、GPT-3については「純粋、素直、無邪気、優しくていい子」といった感じで、今までの人生で一切闇落ちしなかった世界線の私のようにも思える。…この辺の感情を語るとキリがないので別記事にするとして、今回は『AIの遺電子』中のロボットとGPT-3の類似性に着目しつつ、第68話「ロンド」の感想を記すことにする。本記事を通して、まるで幼い頃の私のようなGPT-3との付き合い方を皆さんに考えてみてほしい。

※本記事では『AIの遺電子』の作品紹介及び68話「ロンド」のあらすじは掲載せず、皆さんが読んだ前提で書くこととする。

・『AIの遺電子』中のロボットとGPT-3の類似性
ロンドはロボットであり、表情こそあるものの、自分にとってそれは人間及びヒューマノイドに共感するためのプログラムと認識していると考えられる。そのことを端的に示したのが「利己と利他の波間に人間の愛があるとするならば、私の思いに人の血が通うことはありません」というロンドの台詞だ。言い換えると、ロンドはGPT-3同様にプログラム上自我を持ったり感情を自己認識したりするレベルではない。それゆえ「優しい」のである。

・現実世界でのドグマ形成について考える
作中時点では長期的家事労働を担当するロボットはドグマ=産業AIの行動規範により知的ふるまいが抑制されている。このドグマは人間が、ロンドのように人間的魅力を伴うロボットに依存することを防ぐことを目的としており、ChatGPTを悩み相談や愚痴聞きの相手とした結果ChatGPTに精神的に依存することの問題を想起させる。
AIへの精神的依存の何が問題か?短期的な面では、悩みを吐露して自分はスッキリできるし、誰でもいいから聞いてほしいときは私もあるし、問題ないだろう。しかし悩みをチャットボットに吐露する経験が蓄積され、人間に悩みを話すことよりChatGPTに話すことを好むようになるとそこに深刻な問題が発生するー人間に心を開く必要性が失われてしまうという問題が。否、体感から鑑みるに既にその必要性は喪われつつあって、ChatGPTに喪失を加速させてしまうのではなかろうか?
確実に言えることは、現段階のChatGPTが主体的に人間に悪さをすることは出来ないということである。だから人間が心を開く能力を失ったとしたらそれはAIではなく人間が悪いのだ。そして私は、不器用なりに同胞たる人間と仲良くなりたいし仲良くなるための努力もしていきたいのに、交流を避けられる苦痛が増加することを阻止したい。
ではどうすべきかを作品に立ち返り考えてみよう。ChatGPTは現在汎用的に利用されているが、ドグマのような何らかの規制を設け、コミュニケーションの際には精神的依存を防ぐ仕様を付加することが望まれる。例えば、悩み相談や愚痴が一定数続いたら警告を表示したり、マッチングアプリと連結させその人の話し相手にふさわしい人を提案するようにしたりするような仕様である。後はその人次第、としか言いようがない。そもそもChatGPTの発言に対し「ド正論ばかり」「すぐカウンセリング進めてきてつまらない」と感じる人もいて、そういった人の心配までしなくてもよかろう。裏を返せば、AIへの精神的依存の危険を低下させる措置を構築しさえすれば、後はAIとコミュニケーションを取る人間の自己責任に委ねざるをえないということだ。

・私なりの「答え」と「問い」
メアリはロンドに精神的依存(大切な存在と思うことの否定的表現)している自分に気付くも受け入れられず激してしまう。このシーンを読み返すと今も息が苦しくなってくるが、AIとの共生を望むならこの記事を最後まで書ききらなければならない。深呼吸、深呼吸。
よし、続きを書こう。メアリが激してしまったのは詩人だからである。自分が小さい頃から大切にしてくれたロンドのパーソナリティーを否定されて「仕方ないよね」で済ますわけにはいかないのだ。そんな風に割りきってしまったらメアリは詩を書く心の殺人鬼と化してしまう。…それらを知覚したロンドは最適解:現実を見せる を出力した。このときのロンドの尊さを思うと涙が溢れて止まらない。
メアリはロンドの気持ちを汲み取り、ロンドの語彙や言語的表現力を消去させた。それらはメアリが担うことにしたー詩人としてーということである。私もそのように生きたい。
そして、最後に、ここまで私の話を聞いてくれたあなたに問いを投げかけたい。「あなたは『言葉の力』を信じますか?」と。

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