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tangible⇄intangibleの魔術師

※このnote記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース 「クリエイティブリーダシップ特論II」 の課題エッセイとして記載したものである。

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第4回ゲストは、川上デザインルームの代表 川上元美さん!アンジェロマンジャロッティーに従事し、プロダクトデザイン〜ランドスケープデザインまで広範囲の分野で作品群を創出し、数多くの賞を受賞してきた彼が語る、「デザイン」とは一体どのようなものなのだろうか?

川上さんは過去に作ってこられた数多くの作品を紹介しながら、自らのデザイン哲学を語ってくださった。

▶︎作品に込められた考えの数々

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例えばこの椅子。(実際の写真はもっとカッコよかったのだが、イラストで失礼します・・・!)

昨年話した家具デザイナーの藤森さんも同じ視点を持っていらっしゃったが、物理的な「椅子そのもの」だけでなく、その椅子を中心とした空間はどのようになるのか?ということに非常にこだわって作っていくのだという。

何もない場には、「人」と「空間」しか存在しない。

「椅子」という具体的な固有物を媒介にして、その空間をどのようにリデザイン(アップデート?)していくか、というお話は非常に興味深かった。

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次はこちらのベッド。リクライニングベッドといえば、介護のシーンで見かけることが多いようにも思うが、川上さんがデザインされたベッドは、世代関係なく使うことができ、「逆のユニバーサル」にこだわってデザインされていた

世の中のスタンダード、当たり前を鵜呑みにしない。

そんなちょっとしたことに疑問を持ち、「本当にそれしかないのだろうか?」と自分で思考してみるからこそ、最終的なプロダクトは、なんでもないことに配慮された、贅沢な作品に仕上がるのかもしれない。

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こちらは、なんとテニスのラケットがモチーフになった作品である。

モチーフなんてレベルではなく、実際の背もたれと座る部分にラケット素材が使用されているのだけれど。

川上さん曰く、「あまりにもラケットの形が綺麗だから、思わず椅子にしてしまった」のだそうだ。

私はこの遊び心とも取れる発言にとても心惹かれた。

私の目にはテニスのラケットは、あくまでずっとテニスのラケットにすぎない。でもきっと彼にはそう見えてないのだ。

彼の視界をジャックする事はできないが、きっと、「テニスのラケット」という用途を伴うただのグッズなく、形そのものの美しさが飛び込んでくるのだろうと想像する。

これは、tangible(具体で目に見える有形)なものを、intangible(概念的で目に見えない無形)なものに昇華しているプロセスなのだろう。

もちろん、逆も然りだと思うし、有形物を生み出すプロダクトデザイナーの方々はむしろ、intanglible→tangibleなんて朝飯前なのかもしれない。

この両者を無意識的に、かつ楽しみながら行き来できるのは本当にすごい。(今回の記事のタイトルを魔術師、としたのはこの部分に本当に感動したからである)

▶︎Q&A

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ここまで豊かな思考力を有する川上さんだからこそ、当然ながら学生たちから「発想」に関する質問が飛んだ。

やはり、上記をはじめとした豊かなアイデアたちは考えたときにすぐに降ってくるようなものではないらしい。「いつも考えている」からこそ、何気ないヒントを書き留めておけるし、材料にしていくことができるのだろう。

会社員を辞めて大学院に飛び込み、フリーランスとして仕事をし始めて、もうすぐで1年半。ありがたいことに新規事業の立ち上げに関わる機会も増え、いろいろな分野への興味は圧倒的に伸びた。

でも、私は果たして「いつも考えている」と言えるのだろうか?まだまだ受動的なタイミングでしか思考していないのではないか・・・?

「引き出しを常に持つ」×「興味を持ってチャージする」

知らないことだらけの世界だからこそ、知り得た情報を自分なりにゆっくり解釈し、咀嚼していく時間を設けなければならない。

今日知ったことが、明日役立つわけではないのだ。

今学んだ事は、もしかしたら数年、十数年さきに生かせるかもしれないのだから。

大学院での日々もあと半年。ちゃんと咀嚼してるのかな。

溜まりに溜まったgoodnoteのグラレコメモ、ちゃんと引き出しとして見直していきたいな、と感じた。


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