江戸川乱歩『人間椅子』

NHKで30分間、朗読と映像による狂気的な作品が放送された。

開始10分ほど経って観たのだが、タイトルの奇妙さと狂気的な内容にどんどん惹き込まれ息をするのも忘れるほどだった。

人間椅子、その名の通り人間が椅子の中に入り様々な人間と布一枚を通して肉体だけで繋がっているというもの。しかしそれはあくまで一方的なものである。

その中に入っているのは男であり、姿の見えぬ布の向こうの人間をやはり肉体のみで判断することができる。

その男の狂った興奮に性的な共感を一瞬覚えるも、
行き過ぎた行為に気持ち悪さも共存しだす。

中村靖日さんによる朗読がいやにその共存を助長するように思えた。魅力的な声だからだろう。

小説を読んだことがなくこのドラマによる形が初めてであったが、
その男に求愛された奥様は気味悪さを感じながらも、最後には同じようにその肉体の興奮に取り憑かれたのかもしれない…

江戸川乱歩ってこんな作品もあるのねと静かに驚いた夜でした。

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