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ふと思い立ったので「御代ヶ池」に行ってきました。~三宅支庁管内池シリーズ第2弾~


日々それなりに何不自由なく生活している。スマートフォン一つでなんでも手に入るし、世界中と繋がることができる。でも、だからこそ、日常を離れたくなる時がありませんか。
 
さて、今回は大人気支庁管内の池紹介シリーズの記念すべき第2弾として「御代ヶ池(みよがいけ)」を紹介します。不朽の名作である第1弾「大路池」編はこちら。

東京から約200キロメートル離れた御蔵島には、御代ヶ池と呼ばれる火山湖があります。都民の日制定30年を記念して1982年に選定された新東京百景の一つです。
周囲は400メートルほど、深さは2メートルほどの湖で、島の南側の黄楊(つげ)の原生林の中にあります。

御代ヶ池に行ってみよう

三宅島から御蔵島へは定期船かヘリコプターで行くことができます。
今回は往復ともヘリコプターという弾丸の旅程を組みました。三宅島からは約10分で到着します。
 
御代ヶ池に行くためには、専門のガイドさんに依頼して案内してもらう必要があります。宿がある里から御代ヶ池入口までは車で行く必要があるので、ガイドさんに迎えにきてもらいました。道の両脇には、牧野富太郎博士が日本産ユリ属の王者と讃えたサクユリが咲いており、御蔵島の夏を感じさせます。車で走ることおよそ30分で御代ヶ池入口に到着しました。

御代ヶ池入口

ガイドさんから杖をお借りして、早速山に入っていきます。コース入口の案内板で全長0.6kmと聞いて、これは案外余裕なのではと思っていましたが…。
 
前を行くガイドさんがいなければ、どこを通れば良いかわからない山道を転ばないように進みます。岩には苔がびっしりついており、水分を多く含むため足元はぬかるんでいます。
10歩ほど歩いたところで、息苦しくなりつけていたマスクを外します。まだ慣れませんが、ようやくマスクなしの日常を取り戻してきたことに喜びを感じます。

御蔵島は空から雨の降っていない時でも、霧粒が樹木の葉に捉えられ、そこから雨となって降ってくる樹雨という現象が起こり、雨に降られたようになってしまうそうです。幸いこの日は天気に恵まれ、とても歩きやすいコンディションでした。
 
森の中はヒグラシやニイニイゼミが鳴いており、少しひんやりしています。鳥の鳴き声もすぐそばで聞こえてきます。
人間はガイドさんと自分の2人きり。
息をする度、普段考えている取り止めのない悩みも、不安も、孤独も、どこかへ消えていくようです。
 
足元にはクサアジサイやタマアジサイ、ガクアジサイの花が咲いています。
歩くのに必死で、キクラゲの写真を撮るのが精一杯です。

野生のきくらげ

また、オオミズナギドリの巣穴や、巣穴に戻ろうとして必死に前進する際についた傷跡のある木を見ることができます。訪れた7月下旬はオオミズナギドリの子育てシーズン序盤とのことです。同じ道をオオミズナギドリも必死に歩いているのかと思うとなんだか感慨深いです。

オオミズナギドリの巣穴

突如、目の前に現れた崖同然の坂道に絶句していると、ここを登ったら到着だよというガイドさんの励ましが。

到着

坂道を登り切った先には、よく見ると木と木の間からキラキラと輝く湖面が垣間見えます。

想像していたよりずっと大きい池が全貌を現しました。ネットの情報だけでは分からないことがたくさんあることに気づかされます。
池の向こうには霧がかかっていますが、時折、長滝山が見えます。

湖の辺りでベンチに座りながらガイドさんとおしゃべりをして、写真撮影をして、すっかり意気投合してから帰路に着きました。
 

帰路

帰りも来た道と同じ、黄楊の原生林の中を一歩一歩、ゆっくりと歩いていきます。

御蔵島の特産である黄楊の木は成長が遅く、樹齢が50年を超えても両手で覆えてしまうほどの太さにしか成長しません。御蔵島では昔から子供が生まれると黄楊の木を植え、大切に育てるという習慣がありました。
黄楊の中でも特に、吹き付ける強風に耐え、幹や枝がくねって成長した木には独特の木目が形成されるため、高値で取引されているそうです。
 
人生にだって、この山道のように険しい道や曲がりくねった道があって、先が見えず不安になる日もあるでしょう。時には、もう一歩も動けないとうずくまる日がやって来るのかもしれない。
 
そんなどん底の日々の中で、大切な気持ちを分かち合える人と出会うことがあります。そんな日々が、黄楊の木目のように自分の魅力になったと思える日がやってくるかもしれない。山登りの最中だからこそ、自分でも見失っていた本当の気持ちを自然と話していたことに気づきます。
 
ガイドさんと別れて坂道を下ると、夕焼けに浮かぶ三宅島が見えました。

右に三宅島、左に神津島が見えます

走り続けることに疲れたら、少し立ち止まって、深呼吸。そんな時間がある人生も悪くない。心を充電する週末に御代ヶ池を訪れてはいかがでしょうか。

翌朝の三宅島


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