日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(17) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 1

 示談交渉は決裂したが、私はまだ楽観していた。ここまで露骨な盗用なのだ。それほど困難はなく勝てるだろう。そう楽観した。ただ著作権侵害訴訟は勝っても賠償額が低いと聞いていた。弁護士に委任すれば費用のほうが持ち出しになる。勝っても金銭的には損をする。記事削除を潜り込ませた解決案はそうしたこちらの足元をみてきたと思った。ならばと、こちらにも考えがあった。本人訴訟だ。これなら費用は最小限ですむ。仮に10万円とか20万円の賠償額しか認められなくても金銭的に損することはない。示談交渉を委任していた弁護士にはアドバイザーとして協力してもらうことにした。著作権の本を買い込み、参考にしながら訴状を作った。提訴は2021年4月。文科省で記者会見をした。新聞テレビはどこも報じなかった。
 O氏の代理人は名古屋で多重債務問題の解決をめざす運動に携わる弁護士T氏だ。私が長年懇意にしているクレサラ対協(全国クレサラ・生活再建問題対策協議会)の会員でもある。

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