カメラマンの宮川

現在YouTube登録者数1050人。本業は法人撮影を専門とするカメラマン。地元の草加…

カメラマンの宮川

現在YouTube登録者数1050人。本業は法人撮影を専門とするカメラマン。地元の草加市にて生前遺影撮影会も開催。草加商工会会員。読書と格闘技が好きです。趣味で短編小説書き始めました。好きな作家はジャック・ケルアック、チャールズ・ブコウスキー、太宰治など。

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短編小説「銃声のあとに」

ハルキは、朝から心が重かった。 昨日も結局学校を休んでしまい、家の中でうつうつとしていた。 親からは厳しい言葉が浴びせられ、渋々学校に行くことに決めた。 玄関を出ると、秋の冷たい風が彼の頬を撫で、少しだけ彼の憂鬱を和らげたが、それでも足取りは重い。 学校が嫌いだ。 教室に行けば、Kたちにいじめられるのは目に見えている。 それでも、逃げられない現実が彼を苛む。 学校に着くと、授業はすでに始まっていた。 下駄箱の前で靴を履き替えようと扉を開くと、ハルキは驚いた。 銀色に輝くリボ

    • 短編小説「罪と罰」

      男は二人の鬼に連れられ、暗い廊下を歩かされた。 その先に立ちはだかるのは、巨大な閻魔の影。 赤々と燃える瞳が彼を見下ろし、恐怖と緊張が男の心を締め付ける。 「丸山行雄だな?」と閻魔が低く尋ねた。 行雄は静かに頷いた。 閻魔は重い帳面を広げ、そのページと行雄の顔を交互に見比べる。 帳面には、行雄が病で現世を去るまでの72年の生涯が記されている。 行雄は若い頃から、公務員として堅実に働いてきた。 真面目で律儀な性格は周囲からも評価されていた。 彼には妻の陽子がいた。 二人は

      • 短編小説「消失」

        薄暗い独房の中で、男はベッドの端に座っていた。 四方を取り囲む灰色のコンクリートの壁は、まるで自分自身の頭の中を反映するかのように冷たく重かった。 彼は目を閉じ、手を膝の上で握りしめた。 ここにいる理由を考えようとするが、頭の中は霧のようにぼんやりとしていて、答えを見つけることができなかった。 やがて、鉄の扉が軋む音とともに開かれた。 看守が静かに部屋に入ってきた。 その顔には無表情が張り付いており、まるで何かの規則に従って動いているだけの機械のようだった。 看守は男の前に

        • 短編小説「闇の影」

          佐藤は、駅の雑踏の中に立ち尽くしていた。 彼の足元には、かつての生活が崩れ落ちる音が無残にも響いているように感じられた。 借金は増え続け、金策は尽き、携帯電話も止められ、財布には小銭がわずかに残るのみ。 彼の存在は、もはや社会の機構の中で無用の長物となり果てた。 にもかかわらず、その機構は無慈悲にも回り続ける。 佐藤はぼんやりと駅の周囲を見渡し、電話ボックスに目を留める。 彼の意識は曖昧な光の中で揺らめき、現実と幻想の境界が薄れていく。 ひとつの顔がぼんやりと浮かび上がり、

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        短編小説「銃声のあとに」

          短編小説「公園の蛇口」

          廃れた街角の公園は、まるで時間の狭間に取り残された記憶の断片。 誰も訪れることのない場所、そこにはもう子供たちの笑い声さえも届かない。 錆びついた遊具は、長い間、手つかずのまま放置され、その存在自体が忘れられた過去の亡霊のように立ち尽くしている。 公園の片隅には、三角屋根の小さな公衆便所がぽつんとある。 赤く塗られた屋根は、まるで積み木で作られたような人工的な色彩で、周囲の色褪せた景色の中で浮き上がっているが、その赤さも虚しさを強調するだけだ。 夏の午後、湿った空気が公園

          短編小説「公園の蛇口」