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「あなたが書くんだよ」
「あなたが書くんだよ」と言われた気がした。
もうずいぶん前に亡くなったんだけど伯父さんがいてね、出版社で海外本を子供向けに翻訳していたのよ。ときどき本が送られて来ていたけど子供向けの本だから全部私のところに来ていた。私に送られていたみたいで嬉しかった。
そういえば、父は届いた本の表紙を見て子ども向けだと分かるとページをめくることもなく、すぐに私に持ってきた。
児童書にもいい本はあるのに、子供向けと言うだけで読みもしなかった。せっかく著者から送られてきたものを読まないなんて、ずいぶん作者に失礼だとは思うが、まあ父はそういう人だったから伯父もそんなものだと思っていたのだろう。
それでも新刊が出るたびに本は送られてきた。今思えば私が読むことを想定して書いていたのかもしれない。本当に私のために送ってくれていたのかも。
その頃は、まさか自分が作家になるとは思ってもいなかったけど、私の文章の原点は伯父さんの本であることに間違いない。
保永(やすなが)のおじさん、私書くよ。
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