鳥居のはなし 左と右

いままで人前でしゃべったことを記録として残していこうと思っています。
僕は社寺建築や文化財建造物の設計をしているので、基本的にはそういった伝統建築に関することがほとんどになる予定です。

さて、記念すべき1回目は現在進行中の鳥居の建替え工事説明会でしゃべったことを残しておこうと思います。
いろいろしゃべった中でまずは「へぇ~」が多かったことを取り上げます。

材木の「元」と「末」

木には「元」と「末」があります。
生えているときの根っこの方を「元」、空に近い方を「末」と呼びます。

「元」と「末」どちらに向けたらよいか

柱は生えているときのまま、下に「元」、上に「末」を向けて作ります。
では貫や島木、笠木はどちらに向けたら良いでしょうか。

柱を抜けて貫通している部材が「貫」、上に乗っかっている木の下の段が「島木」、上の段が「笠木」です。

これらの横木を配置するときに、木の根っこの方をどちらに向けたら良いかというのが本日の命題です。

いきなりですが、答えです。
神様から見て「左」を根っこ、つまり「元」にします。

理由は日本では左上位だからです。
日が足りる=ひだり と言われ、左を優先します。
木材の場合、根っこに近い方から一番玉、二番玉と言い一番玉が最も良いものなので、「元」を上位に向けます。

普段の生活を振り返ってみたら

みなさん、お正月の注連縄の根っこはどちらに向けるでしょうか。(一部例外の神社もあります。この話はまたの機会に。)
ごはんを食べるときに、ごはんとお味噌汁を置く時にごはんはどちらでしょうか。
ゆかたを着るときにどちらが前になっていますか。
引違い戸を閉めた時どちらが前にでていますか。
といった具合に左が上位になっています。
だから、左大臣の方が右大臣よりも格上です。

でも、神様から見た左なので、人から見ると右です。
だから「右に出るものはいない」し、格下げされる人は左に遷るので「左遷」です。

感の良い人がいて、お雛様の並びは違うじゃないですかと言われました。
確かに関東では逆です。が京都では僕らから見て右にお内裏様が来ています。これは、明治32年に宮内省が天皇陛下皇后陛下の並びを西洋式に改めたことに倣ったからです。

ということで、鳥居のはなし 左と右はこれにておしまい。
みなさんも本末転倒しないよう気をつけてください。

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