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三軒茶屋へ鳩を買いに行った話

昔、マジシャン見習いをしていた。

当時は見習いなので全く表舞台には出ず、基本裏方の雑用係のみ。

華やかな舞台に立つ先輩たちを見て、何か別世界の人たちのように感じていた。

ある日、上の人から仕事を頼まれた。

『若い鳩を2、3羽買ってきてくれないか?』

‥え、鳩ってどこで売ってるものなんですか?

          ※※※

蛇の道は蛇と言うが、マジシャンの道はマジシャンで、ホントにマニアックな店がある。

欲しいものは、いわゆる東急ハンズのバラエティグッズのコーナーに売ってるような道具ではない。

ガチのお店に売っている道具。

こんなニッチな業界のニッチな商品で、生計成り立つのかな?とこっちが不安になるようなお店。

そんな店の中に、鳩が買えるお店がある。

それは三軒茶屋にあるとのこと。

この手の店、一人で行くのかなり勇気いるんですが‥
と伝えるも、残念ながら他の人は忙しく、場所だけ伝えられて一人で行くことに。

いざ、ゲージを持って三軒茶屋へ!

          ※※※

場所につくも、今にも倒れそうな雑居ビル。
しかも目当ての店は3階くらい。
もちろんエレベーターなし。

怖い怖い怖い‥(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)
私、一応ハタチそこそこの女の子なんですけど。

とはいえ、ここまで来てしまったので行くしかない。

『こんにちは〜。連絡していたものですが‥(小声)』

入ると独特の動物臭。
き、キツイ‥

『は〜い。こっちね〜。』

思いの外、若いお姉さん。
良かった(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)

沢山のゲージのある通路を通る。
何が入ってるのかな?と見ると、多分フェレット的な動物がわんさか。

これの臭いか〜。

『はい、ギンバトだよね?何羽?』

三羽ですと答えると、即ゲージに入れてくれる。
さすが慣れてるなぁ。

お会計を済ませ、早々に店を出る。
滞在中にビル倒れなくて良かった…(´;ω;`)ウッ…

さて、帰るか‥。

あれ?私、行きはバスで来たよね?
帰りは‥ゲージに鳩が入ったままバスって乗れるのかな‥。

          ※※※

バスに乗るとき、運転手さんに告げる。

『あの、ペットをゲージに入れているのですが、乗っても大丈夫ですか?』

『はい、ゲージにきちんと入っているのなら大丈夫ですよ。』

ありがとう、運転手さん。
ペットって、犬か猫だと思うよね。
まさかゲージに入っているのが鳩だとは思うまい。
(※ゲージにはカバーがかかってます)

時折、

『クックー♪』

と謎の鳴き声を上げる、謎のゲージを抱えたまま、バスに乗ること20分。

あんなにヒヤヒヤした乗車は人生で二度とないと思う。

そして、二度と公共交通機関を使って鳩を買いに行くまい、と固く誓ったのでした。



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