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ナチュラルローソンの成功と成城石井の買収から考察するローソンPB新パッケージ #ローソンPBに思う

「少しでも家での暮らしを楽しもうとパッケージの明るい商品やスイーツ類の動きがいい」

これは、2020年5月4日の日経に掲載された、ローソン社長・竹増貞信氏の取材記事の一文である。

2020年5月頃から、ローソンのPB商品のパッケージ刷新について、SNSを中心に大きな話題となっている。もちろん上記の発言は今回のパッケージ刷新について言及されたものではないが、竹増社長が商品パッケージを経営戦略における重要な要因のひとつとして考えていることが伺える。

パッケージ刷新は課題解決の手段のひとつ

コンビニの経営戦略において、パッケージ刷新というのは、課題解決の一手段に過ぎない。ローソンが抱える何らかの課題があり、課題を解決するための戦略が立案され、最終的なアウトプットのひとつとして世の中に提示されたのが今回のパッケージ刷新である。

パッケージ刷新を点としてひとつの事象として考えるのではなく、過去および未来の戦略とあわせて線で考えた場合、どのように捉えることができるのだろうか。

女性の心を掴んだナチュラルローソンの成功

ローソンの経営戦略において、重要な役割を果たしているのがナチュラルローソンである。2020年3月時点で33か月連続増収という驚異的な成長を遂げている。

ナチュラルローソンの機能のひとつが、ローソンの実験店舗となることだ。

「これは青ではできないの?」ナチュラルローソンが月1回開催している社内の商品試食会で、ローソン竹増貞信社長の口癖となりつつある。「青」とは青看板の通常ローソンのことで、赤看板のナチュラルローソンからヒット商品を導入し、店舗を活性化したい思いがにじむ。
日経MJより引用)

ナチュラルローソンでの成功事例は、ローソン本体にも展開される。

社長の口癖となるほど重要な意味合いを持つナチュラルローソンだが、そのメインターゲットが女性である

商品ラインナップはもちろん、店づくりにおいても女性が居心地の良さを感じられるような空間になっている。

ローソンは2020年2月期の連結営業利益において、コンビニエンスストア市場が飽和する中で、従来予想を上回る好調ぶりを見せている。

上記の記事にもある通り、その要因のひとつにナチュラルローソンの売り上げ増も含まれている。

これらのナチュラルローソンの事例から、ローソンの経営戦略のひとつとして、女性をターゲットにすることで事業を成長させる手法が確立されていると考えられる。

成城石井の買収と高級路線

ナチュラルローソンと並んで、ローソンの経営戦略において特徴的なのが、成城石井の存在である。

ローソンは2014年、成城石井を買収している。

高級スーパーである成城石井を買収したことによる相乗効果は大きく、ナチュラルローソンは女性とともにプチ富裕層をターゲットとしている。成城石井の商品であるワインを購入できるほか、共同で海外チョコレートの仕入れなども行っている。

また、高級路線の施策の一つとして、2018年にはゴティバと協業で1,000円を超えるチョコレートの販売も行っている。

この商品は大ヒットとなり、ローソンにおいて高級路線に可能性を見出すひとつのきっかけとなった。

「値打ちを認めてくれればお客様は値段が高くても買ってくれる」(竹増社長)との自信につながり、「成城ブランドをローソンに生かそう」(ローソンの今田勝之取締役)との機運が広がった。
日経電子版より引用)

前述の営業利益の記事においても、好調の要因として成城石井に関する言及があり、ローソンの経営戦略においても高級志向の顧客をターゲットとした際の知見が活用されていることが想定される。

新パッケージの女性らしさと高級感

ここまで取り上げたナチュラルローソンと成城石井の事例から、女性と高級感という2つのキーワードが浮かび上がった。

そしてその2つのキーワードがそのまま反映されているのが、今回のPB商品の新パッケージである

今回のパッケージ刷新について、ローソンが公式に発表したのは、2020年4月28日のプレスリリースだった。

この中で、デザインの意図として次のような記述がある。

従来のパッケージにあったような大きな商品写真ではなく、優しい印象のフォントと共に中身や原材料などがわかる手描きのイラストをパターン状にあしらうことで、女性でも手に取りやすい柔らかな表現を目指しました

今回のパッケージ刷新は、女性が手に取りやすいパッケージを開発することが目的のひとつだったと明言されている。

このデザインの意図は、今回のクリエイティブパートナーであるnendoのWEBサイトにも掲載されている。

もうひとつのキーワード、高級感についてはどうか。今のところ、ローソンやnendoの公式発表として高級路線に関する記述は見つけられていない。

しかし、おそらく最初に今回のパッケージ刷新についてまとめた次の記事は、こんな見出しで始まっていた。

可愛いと並んで、「高級に見える」という印象を顧客に与えることに成功しているのだ。

例えば、情報を最低限まで削ぎ落したことも、高級感を醸成するひとつの要因になっているかもしれない。

「普段の生活にとってノイズになることなく入り込むために、商品についての情報を山盛りにせず、できるだけシンプルにしてお伝えしていきたいと考えました」(広報担当)
ねとらぼより引用)

以上のことから、今回のパッケージ刷新において、ナチュラルローソンの女性ターゲットおよび成城石井の高級志向が、デザインの意思決定に影響を与えていたのではないかと考えられる。

新パッケージから考えるローソンの未来

これまではローソンの過去の事象から、デザインへの影響を考察した。では未来はどうか。

今回のパッケージ刷新から考えられることは、女性への訴求と高級路線をローソン本体でも強めていく可能性が高いということだ。

ナチュラルローソンおよび成城石井で培ってきた知見を、続々とローソン本体に導入していくのではないだろうか。

セブンイレブン、ファミリーマートと日々熾烈な競争を繰り広げるローソンにとって、差別化が経営課題となっているのは間違いない。今回のパッケージ刷新は、おそらくその起爆剤のひとつだ。

今回のパッケージ刷新に込めた想いについて、竹増社長はこのように語っている。

「外出自粛が続きステイホームということが叫ばれている。一方で、ストレスもある。イライラも募っている。家庭内での問題も顕在化している状況もある。ローソンでは、こういった状況も解決できるお手伝いができないかを考えている。昨年から、デザイン会社nendoの佐藤オオキさんとともに、今の時代に合わせた商品パッケージやポスターを作成する取り組みを開始しており、今回のデザイン一新となった」

「こういう時でも、ローソンに来て買い物をする中で、ポスターを見ることでホッとしてほしい。また、さりげない優しいデザインの商品を見ることで、ホッとした気持ちになり、少しでもストレスを抑えた生活を提案・提供していきたい」

流通ニュースより引用)

今回のパッケージ刷新をきっかけとして、ローソンがどのように変わっていくのか。一消費者として、ローソンのこれからに期待したいと思う。

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