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第2回「さいかわなうちのこ」

家に帰るバスを待ちながら、悩んでいた。

前回の記事から遡ること数時間。
FF14を始めるかどうか、ひとしきり悩み終わり、始める決意を固めた僕の前には、新たな悩みがあった。

「主人公の設定はどうしよう?」

RPGをやる際、プレイヤーは大きく二分される。
・主人公=プレイヤー
・主人公≠プレイヤー
の二派である。

そして僕は前者であった。
物心つく前から、主人公の名前は本名をつけていたし、物語の中で僕は元ソルジャーでSeedで盗賊でブリッツボールの選手だった。

FF14のキャラクターもなんとなく自分の分身を作る気持ちでいた。

なので、悩んでいたのは
「どのような自分の分身を作るか?」
ということだった。

バスに揺られながら公式サイトを検索する。どうやらFF14の舞台となるエオルゼアには、5種類の種族がいるらしい。

・現実世界の人間に近い見た目のヒューラン
・長身でヒューランよりも長命だというエレゼン
・猫のような耳と尻尾を持ったミコッテ
・ガタイの良さが他の種族の倍くらいあるルガディン
・マスコットキャラクターのような外見のララフェル

それぞれFF11の時にも似たような種族がいたような気がする。違う世界なので呼び名も異なるのだろう。

やっぱり男性ヒューランが一番しっくりくるだろうか?でもせっかくファンタジーの世界を走り回るんだから、見た目に特徴のある種族を選んだ方が楽しいのでは?じゃあヒューランの次に現実世界の人間に近そうな…ミコッテにするか!性別は…自分と同じ男性の方がやっぱり感情移入しやすいかなぁ。

度重なる脳内会議を経て、主人公は晴れてミコッテ(男性)になった。

バスを降りて家に向かう。
ダウンロードもまだだったが、僕の脳内には雄大なエオルゼアの大地を馳け廻るミコッテの姿があった。

帰宅してダウンロードを済ませ、ゲームスタートを選択する。
キャラクタークリエイト画面が広がる。中央にはデフォルトで設定されている男ヒューランが表示されていた。

いつもならここでどの種族にするか数十分は悩むところだろうが、今回の自分は抜かりない。すでに決めてある。種族名が並ぶリストに沿ってカーソルを動かしていく。

ヒューラン、エレゼン、ララフェル、ルガディン、ミコッテ、アウラ。
アウラ?

公式サイトにも載っていなかった種族の名前がそこには並んでいた。
アップデートで後から追加された種族だろうか?ミコッテにする予定ではあるが、取り敢えず姿を見てみよう。選択。

「か、かわいすぎる……」

誇張ではなく実際に呟いた。さっきまでイケメンヒューランが立っていた場所には、小柄で可憐な美少女がいた。

どうやらアウラは竜のような特徴を備えた種族らしい。角や鱗、尻尾が体の要所要所に見て取れる。男性のアウラは体躯も大きく、まさに竜のような出で立ちをしているのだが、女性のアウラは強固な竜の特徴と反して、華奢で花のような見た目をしていた。こう見ると、竜の特徴も繊細な意匠を施した装飾のように見えてくるから不思議だ。

その可憐な姿を見た途端、雄大なエオルゼアを駆けていたミコッテは何処かへ走り去ってしまった。なんなら「プレイヤー=主人公」派の自分もいなくなっていた。

気がついたら、キャラクターメイキングは完了していた。残るはキャラクター名の登録のみ。ファーストネームとファミリーネームを決めなくてはいけない。

自分がハンドルネームとして使っているみやびぃ(Miyaby)は、女性名としてもそこまで違和感はない。
しかし出来上がったキャラクターはあまりにも可憐で、もはや自分の分身としては見れない領域に達していた。

助かる事に、FF14の世界には命名規則があった。
アウラ(同じアウラの中でもさらにふた通りの種族があるのだが、今回はアウラ・レン)の種族にも、名前をつける上での指針があった。
アウラ・レン族は、苗字に武具や役職の名前から取るのが一般的らしい。
また、女性の名前は自然に関する美しいもの、優しいものから選ばれることが多いそうだ。

こういった指針は、世界観に入り込むタイプの僕にはとても嬉しい。

まずはファミリーネーム…こっちにMiyabyを入れる事にした。さっそく武具でも役職でもないが「Miyabyさんちの〜」と言ったニュアンスを含めた。他ワールドにキャラを作る際もMiyaby姓にすれば面白いかもしれない。
ファーストネームは、悩んだ末に「Hisame」に決めた。我ながら会心の出来である。
白い髪と白い肌を持つ彼女のイメージとして「氷雨」は最適だったし、響きも美しさの中に可愛らしさを秘めている。

気づけばキャラクターメイキングを始めてから1時間が経とうとしていた。
なかなか難産だったが、これで最高のエオルゼア生活を始められそうだ。

創作をする人たちの間には、「うちのこ」と言う概念がある。自分たちが生み出したキャラクターたちに対する呼び方として、非常に愛着を感じるので、僕は密かに好んでいる。

今回の主人公「Hisame」は僕ではない。
しかし、「さいかわ」な「うちのこ」として今回の冒険を最高に盛り上げてくれる事だと思う。
よろしく!Hisame!

うちのこ、可愛くないですか?

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