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変化という暴れ馬の手綱を握れ、多くの重要な仕事から今日やるべき3つを選ぶのはARTだ

今回のものは「読書ノート」ではなく「読書ファイル」だったものです。パソコンがクラッシュした時、読書ファイルを復元できませんでした。
さらに、還暦になった時に断捨離の一環として「インテル経営の秘密」も含めて大量の本を処分しました。
だから、今回の記事は本当に自分の頭の中に入っているのを引っ張り出して書いています。

"High output management"という原題からも分かるように、経営者や管理職が高いアウトプウトを出すために必要な心得と具体的なマネージメント技術が書かれています。まるでレベルの高い企業の管理職研修の教材のような趣もあり、内容は多岐にわたっていました。
内容のほとんどは忘れてしまっていますが、次の2つは自分の「考える軸」になっています。

変化という暴れ馬の手綱を握れ
多くの重要な仕事から今日やるべき3つを選ぶのはARTだ

まず、アンドリュー・S・グローブの簡単な経歴です。
1936年 ハンガリー生まれのユダヤ人
1945年 第二次世界大戦 終戦
1956年 ハンガリー動乱
1957年 ニューヨークに亡命
1963年 フェアチャイルドセミコンダクターに入社
1968年 ロバート・ノイスとゴードン・ムーアがインテル設立
1969年 インテルへ移籍
1985年 グローヴは主力のDRAM市場からの撤退を決断
    パソコン用CPU市場へと舵をきる

変化という暴れ馬の手綱を握れ

半導体、通信、インターネットなどIT技術は競争が激烈で進歩や変化も速く、「変化という暴れ馬」という表現は、そういう業界で働いている方にはストンと腹に落ちるかもしれません。常に手綱を握っていないと「変化という暴れ馬」に振り落とされるんですね。
なお、誤って解釈されないようお断りしておくと、「しがみつけ」ということではありません。変化をうまく制御しろ、ということです。
関連して「変化の中で、自分達が立つフィールドはここでいいのか、常に自問しろ」と、こんな行もありました。
グローヴは、インテルの主力事業だった半導体メモリーDRAM市場からの撤退を決断し、黎明期のパソコン用CPU市場へと舵をきっています。グローヴにとって、「自分達が立つフィールドはここでいいのか」と自問し、DRAMからCPUへの転換は大きな手綱さばきだったと思います。

グローヴの例を先に出してしまって、道路脇の小さな砂粒のような自分の例を出すのは意味が無いような気がしてきました。でも、続けます。
日本の半導体産業が壊滅状態になった時期、半導体設計関連の技術教育サービスのお客様もいなくなりました。半導体事業を抱える大手メーカー各社は半導体事業を切り離し、早期退職やレイオフを実行してニュースとなっていた時期です。
「変化という暴れ馬の手綱を握れ、自分が立つフィールドはここでいいのか」と考えましたが、結果的には暴れ馬に振り落とされました。分かっているだけではダメなんです。手綱さばきの技術が必要なんです。技術不足、つまり能力不足で振り落とされました。

振り落とされて、地面に打ち付けた体をさすって土を払い、ノロノロ立ち上がって、「どのフィールドに立つか」考えて、その方向に歩き出したようなな感じでした。そうして今、半導体とは全く無関係な女性用下着の仕事をしています。

振り落とされはしましたが、手綱さばきの経験が出来ました。変化の対応は理屈ではなく実践だ!変化を恐れず体で覚えていくこと。そして身についた力が次の変化を乗り切る「力」になる。そうであって欲しいと願っています。

多くの重要な仕事から今日やるべき3つを選ぶのはARTだ

本の中で実際にどのような文章だったのかはもう確認できず不明ですが、頭の中にはこのように残っています。ARTというのは「美術、芸術」ではなく「匠の技」とでも訳したほうが合っていると思います。
「自分にだけ1日26時間欲しい」と思いながら忙しい日々を過ごしていた時期、いつもこの「3つを選ぶのはART」と頭の中で繰り返して、その日に行うことを決めたものです。

「3つを選ぶのはART」は、ビジネスだけでなく日常生活でも実践しています。
朝目覚めたときにベッドの中で一日の段取りを考える。
何かを選んだら何かを捨てることになるような場面では、自分にとって本当に大切で優先順位が高いものを間違わないように選ぶこと。そうすれば選んだ結果がうまくいかなくても、他の人には理解してもらえなくても、後で後悔することは少なかったと、今振り返ってみれば、そう感じています。

アンドリュー・S・グローヴさんは、2016年、79歳で亡くなりました。