炬燵
もう暖かくなってきたのに炬燵の話っていうのも時季外れだなあって思うのだけど、まあこれは随分昔に見た夢に出てきた炬燵の話ですのでお許しを・・・。
どこか山奥っていう感じの所に建っている一件の小さな木造の家。
雑木林に囲まれて小さな小川も家のそばに流れている。
そういう景色の所は行った事もなくどういう場所なのか全然見当も付かない。
ただし・・・嫌な感じはしない。それどころか何だかほんわりと良い雰囲気が漂っている。
そこへ、その家のそばを流れている小さな小川に掛かっている小さな橋・・・と行っても短い木の板を数枚渡してあるだけの橋を渡ってくる男性がいる。
背が高くて少し前屈み気味に歩くその男性はどうやら私の伯父らしい。
伯父は小さな家に躊躇なく入って行き、部屋の真ん中にどっかりと置いてある少し大きめの炬燵に入る。
よく見ると炬燵には私の両親が入っていて伯父を歓迎しているようだ。
伯父は私の母の兄だ。
三人は久しぶりに会ったけど元気にしてるか?とかたわいない話をしている。
その部屋から少し離れた土間のような所に伯父の奥さんがいるが、何故か炬燵に入ってこない。
別に仲が悪いわけでもないのにどうしてかなあ?と、漠然と思いながらその様子を見ている私。
・・・?
私、この光景をどこから見ているんだろう?
少し考えて、これは夢だと気が付いた。
第一、私の父も母ももうすでに亡くなっているではないか。
と、思ったところで目が覚めた。
別に仲が悪いっていうわけではないが伯父とは随分長い間会っていない。親戚の葬式とか法事ぐらいに会う程度である。
だから今、元気なのか身体を壊しているのかなども全く知らない。
この夢は一体何だろう?
もしかして悪い知らせではないのか?
かといって、元気?と気軽に電話をするほどの仲ではないし、何事もないかもしれないし・・・と、少し気になりつつ何もしなかった。
ただ、私のこういう夢の話を全然信用しない夫にこういう夢を見たっていうことだけは教えた。
それから1ヶ月経たないうちに伯父の訃報が届いた。
ああ、やっぱりそうだったのか。
でも、伯父は先にあちらの世界に行った私の両親達と仲良くやってるんだろうなって思うと少し微笑ましくもあった。
あの時伯母が炬燵に入らなかったのはまだまだ元気でこちらでやっていくっていうことなんだろうなあ・・・と伯父のお通夜に行ったとき伯母の顔を見て思った。
伯母はそれから何年も元気でいた。
今は伯母もあちらの世界に行っているが、あの少し大きな炬燵に親戚達が集まって仲良く団らんをしているかと思うとあちらの世界に行くのも悪くないなあって思えてくる。
まあ、まだしばらくの間はこちらの世界にいるとは思うが。
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